第21話 サッカー観戦

土曜の朝

仕事は休み、俺は出掛ける準備をしていたら、ミウが訪ねてきた。


「あれ?リョウくんどこかに出掛けるの?」

「ああ、ミウちょっと遊びに行って来るよ。」

ミウの瞳から光が消えた。

「ねえ、誰と何処に行くの?」

「ん?いや1人だけど、サッカー見に行ってくる。」

「ホントに1人なの?私も着いて行っていい?」

「いいけど、大丈夫なのか?ミウの人気を考えるとパニックになるような・・・」

「着いて行くの!何処の試合?すぐに席を用意するから。」

「埼スタ、浦和の試合を見る~」

「わかった、埼スタだね。」

ミウは電話をはじめた。

「リョウくん、席とれたよ~でも、試合夜からなのに今から行くの?」

「先に浦和のショップに寄ってから行くつもり。」

「そうなの?」

「ユニフォーム買って、タオルマフラー買って♪」

「リョウくん楽しそうだね♪」

「だってさ、田舎からじゃ来れなかったから、一度行って見たかったんだ♪」

「でも、浦和のファンだったっけ?」

「ああ、フットサル始めてから、Jリーグにも興味がでてね。そこからはまっちゃって。」

「そうなんだ。じゃあ、今日はサッカー観戦だね♪」

「おう!ミウも楽しめたらいいなぁ~♪」


そして、ミウと一緒に浦和駅につく

「ミウ、浦和についたよ!」

「はいはい、電車に乗ってたらつくよ。もう、はしゃぎすぎだよ。」

ミウはリョウをたしなめがらもはしゃいでるリョウを見るのは嬉しかった。

「だって~」

「それよりショップに行くんでしょ、早く行こ♪」

「おー、といってもすぐそこなんだけどね」

ショップに、入り22番のユニフォームとタオルマフラーを買った。

ミウも同じ番号を、買った

「ミウも同じ番号でよかったの?」

「うん、一緒の番号で観戦しよ♪」

「いいけどね、さて、じゃあお昼を食べたらスタジアムに向かいますか。」

「いいけど、スタジアムに入るのまだ早くない?」

「席が自由席だから早く行かないといい場所なくなっちゃう。」

「リョウくん、席はVIP席をとってるから急がなくても大丈夫だよ?」

「そうなの?でも、俺自由席のゴール裏でみたい・・・」

「なんで?」

「サポーターの中に入って楽しむの。」

「うん、じゃあ私も自由席をとって一緒に入る♪」

ミウはそのままショップで席を購入した

「ごめんね、ちゃんと言っておけばよかった。」

「ううん、いいよ。私も確認しなかったし、でもVIP席が無駄になっちゃうね。」

「ミウさんや。」

「なに?」

「VIP席もどんなのか、見てみたいです」

「ははは、いいよ。じゃあ開始までVIP席にいて試合はゴール裏で見ましょう」

「ワガママでごめんね~」

「いいよ。今日は二人で楽しみましょ♪」

「おー♪」


浦和美園駅

「埼スタはいずこ?」

「リョウくん、あれじゃない?」

ミウが指差す方を見ると・・・

「メチャ遠い!こんなものなのかな?」

「わたしも埼スタは行ったことないよ。」

「まあ、二人でのんびり行きましょ♪」

俺は手を差し出した。

「えっ!うん♪ゆっくり行こ。」

ミウは嬉しそうに手を繋いだ。


スタジアムに着くと学生が吹奏楽部が演奏していた。

「へぇ~これミウの曲じゃない?」

「ホントだ、受け入れてもらえて嬉しいかな。」

「歌ってみたら?」

「それこそ、問題になるよぉ~」

「バレるかな?」

「ばれなきゃ私が泣くよ。」

俺達は笑いながらその場を離れた。


それから、屋台をまわり、ショップやイベントを覗き楽しんだ。

「そろそろ入場かな?」

俺は時計を見て、入場開始時間が来ていた。

「リョウくん、こっちから入れるよ。」

ミウはVIP入口を指差していた。

「二人で入ろ♪」

俺はミウに連れられ中に入る。

「すげぇ、なんか・・・居心地悪い。」

「なんでよ!」

「俺、平民なんです。こんな立派な所には生息出来ない生き物なんです。」

「もう、リョウくんも慣れないとね。今度私のコンサートでもVIP席で見る?」

「やーめーてー!俺のライフはもうゼロだよ。」

「そう言えるうちは大丈夫だよ。」

二人で会話を楽しんでいると・・・


「ミウさん、こっちですよー。」

少し離れた所から男の声が聞こえた。

「ミウ、誰か呼んでるけど知り合い?」

「?はて、誰だろ?何処かで見たような気もするんだけど?」

「ミウさん。」

男はミウの所まで来た。

「ひどいじゃないですか、無視しないでくださいよ。」

「やっぱり、ミウの知り合いみたいだぞ?」

「うーん、あっ!クラスメイトの松江くんだったっけ?」

「そうですよ、貴女の愛する松江タカシですよ。」

「へぇー、ミウ好きな人いたの?」

「私の好きなのはリョウくんだけです!松江くんなんでそんな嘘つくの!」

ミウは本気で怒ってた。

「まあまあ、僕に会いにここまで来てくれたのですよね。」

「なんでそうなるの!私はリョウくんとデートで来たの!邪魔しないでくれますか。」

「うーん、怒ってる君も可愛いよ♡さあ、僕の席においでよ。両親にも紹介してあげるよ。」

タカシはミウに手を伸ばそうとした

・・・が、俺がその手を止めた。

「おい、ミウに手を出すなよ。どう見ても友達でもないみたいだしな!」

「リョウくん、ありがと。」

ミウは俺にしがみついてきた。

「なんだ、君は!ミウさんとどんな関係なんだ!」

タカシは俺に怒りながら、話しかけてきた。

「俺はミウの・・・」

「婚約者です!」

「こ、こんやくしゃ!そんな事があるわけない、君は僕のお嫁さんになる予定の人なんだ!」

あまりにおかしな発言に俺達は驚き、不安になる。

「なぁ、ミウ?コイツの頭大丈夫なのか?」

「私も話したこと無いから知らなかったけど、やばい人だよね?」

「ミウ、学校で大丈夫か?」

「気をつけておくね。」

俺達がコソコソ話していると、

「僕のミウさんに近づくな!」

いきなり暴れだした!

「あぶな!」

俺はミウを庇い、タカシと距離をとる。

そこに警備員が駆けつけてくる。


タカシを押さえつつ、警備員の1人が俺に聞いてくる。

「何があったのでしょうか?」

「いや、コイツが話しかけてきたと思ったら、いきなり暴れだしたので何がなんだか?」

「はあ?何か因縁とかは?」

「俺は今日と言うか今さっき初めて会った。俺の連れのクラスメイトらしいけど、話したことはないらしい。」

ミウは警備員に頭をさげ、

「なんか話したことも無い人にお嫁さんになる人とか言われて凄く気持ち悪かったです。出来たらあの人を違う所に連れていってもらえませんか?」

「いや、あの人はスポンサー様のお子様で・・・」

警備員は言いにくそうにしていたが、大体事情はわかった。


そこに親が現れた。

「なんで警備員がうちの子を捕まえているんだ!離したまえ!」

「いえ、お子様が他のお客様にたいして暴れておいででしたので・・・」

「うちの子が理由もなく暴れる訳がないだろう!相手が悪いに決まってる。其方を捕まえろ!」

「しかし・・・」

「なんだ、スポンサーに文句があるのか!君の対応次第で来季のスポンサーから降ろさしてもらうぞ!」

警備員は板挟みにあい此方に来る。

「すいません、別室に来てもらえますか?」

「ふぅーん、俺もサラリーマンだ、わからなくもないけど、納得が出来ないのもわかるよな。」

「わかりますが・・・スミマセン」

「わかった、俺達は自由席に移らしてもらうよ、それでいいだろ!」

「ありがとうございます・・・」

「まて、ミウは置いていくように!」

すでに解放されていたタカシは此方に変な要求をしてきた。

「てめぇ、喧嘩売りにきたのか!なんで自分の連れを渡さなきゃならん!」

そこにタカシの親が口を挟む。

「まあまあ、タカシここはパパに任せなさい。きみ~見る限り庶民だろ、ここに十万ある、これで良いもの食べて帰りなさい」

「ほう、俺に身内を金で売れと?ふざけるな!」

「ふん、庶民が!社会的に抹殺されたくなければ、金を受け取り帰りなさい。」

「てめぇ、人を舐めるのも大概にしろや!」

俺が切れて掴みかかる前にミウが腕にかきついてきた。

「リョウくんダメ、また短気になってるよ。」

ミウにたしなめられ少し冷静になる。

「ふぅ、ミウありがと。取り返しのつかないことするとこだったよ。」

俺は一呼吸置きどう対処するか考えていた。


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