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自席に戻った私に、すかさず波多野さんが尋ねてくる。


「手伝いどうだった?」


「まだやってないので何とも。とりあえず私は水戸さんとチームを組んで製本作業をすることになりました。」


「水戸さんと?」


波多野さんが眉間にシワを寄せて怪訝な表情をする。

訳がわからず首を傾げると波多野さんは声をひそめて言う。


「百瀬、水戸さんには気をつけろよ。」


「どういうことです?」


「あいつ、問題起こしまくりの要注意人物だから。」


「…はあ。」


問題起こしまくりってどんな人だろうか。

でも問題起こしてもクビにならずに働けているのだから、そんな大きな問題ではないのかもしれない。

私の煮え切らない返事に波多野さんは不満そうな顔をする。


「木村さんもいるし、大丈夫ですよ!」


私がガッツポーズをすると、波多野さんは更に不機嫌になった。


「ほんと、木村のこと好きなのな。」


「そうですねぇ。ファンです。ファン。大丈夫、波多野さんのことも好きですよー。」


「あー、はいはい。」


私の軽口に波多野さんは手でいなすと、さっさと自席へ戻っていった。


そうやって軽々しく「好き」だなんて言えるのも、波多野さんに彼女がいるからだ。

私なんて相手にしてもらえないし、ましてや振り向いてもらう気もないから、そう言える。


だけど、「好き」って気持ちは本当なんですよーだ。

波多野さんには何も響かないと思うけどね。

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