11
自席に戻った私に、すかさず波多野さんが尋ねてくる。
「手伝いどうだった?」
「まだやってないので何とも。とりあえず私は水戸さんとチームを組んで製本作業をすることになりました。」
「水戸さんと?」
波多野さんが眉間にシワを寄せて怪訝な表情をする。
訳がわからず首を傾げると波多野さんは声をひそめて言う。
「百瀬、水戸さんには気をつけろよ。」
「どういうことです?」
「あいつ、問題起こしまくりの要注意人物だから。」
「…はあ。」
問題起こしまくりってどんな人だろうか。
でも問題起こしてもクビにならずに働けているのだから、そんな大きな問題ではないのかもしれない。
私の煮え切らない返事に波多野さんは不満そうな顔をする。
「木村さんもいるし、大丈夫ですよ!」
私がガッツポーズをすると、波多野さんは更に不機嫌になった。
「ほんと、木村のこと好きなのな。」
「そうですねぇ。ファンです。ファン。大丈夫、波多野さんのことも好きですよー。」
「あー、はいはい。」
私の軽口に波多野さんは手でいなすと、さっさと自席へ戻っていった。
そうやって軽々しく「好き」だなんて言えるのも、波多野さんに彼女がいるからだ。
私なんて相手にしてもらえないし、ましてや振り向いてもらう気もないから、そう言える。
だけど、「好き」って気持ちは本当なんですよーだ。
波多野さんには何も響かないと思うけどね。
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