赤ちゃん神に願いを！ 俺はお前で（プレイした）、お前の願いを叶える者（お前自身）だ！【ver.3に移行の為、長期休止中】

０１１．ゲーム脳の変態は、間抜け面（づら）を晒（さら）す！

『遂（つい）に【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠（ししょう）！　聞こえますか、師匠（ししょう）？』

俺はMMOWG（多人数参加型戦争ゲーム）【矛盾（バストーロ）】で師事（しじ）した師匠（ししょう）で在（あ）るプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例の如（ごと）く闘いに酔（よ）っているのだろう。全く反応が無い。

世界を震撼（しんかん）させた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界に於（お）いてプレイをするイカれた変態。何（なに）が如何（どう）為（な）って、仮想現実世界に於（お）いて、其（そ）のプレイヤーネームで登録（とうろく）が許可（きょか）されたのか、首を傾（かしげ）げる事しきりだ。

『カルマ、やっぱり鳥は良いな！　空を自由に翔（と）べる！』

イカれた変態は例の如（ごと）く、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠（ししょう）には何（なに）を言っても届かない。自分のルールを忠実（ちゅうじつ）に実行する災厄（さいやく）と化（か）す。【殺（や）られたら殺（や）り返す】、至（いた）ってシンプルな其（そ）のルールに全てを懸（か）ける狂人（きょうじん）。

全てと言って良いプレイヤーから忌（い）み嫌（きら）われる存在（そんざい）、【凶神（オーバーアウト）】と呼ばれる禍々（まがまが）しい魂（たましい）の燐光（りんこう）が師匠（ししょう）だった。

『師匠（ししょう）、またモンスタープレイですか？　楽しんでますね【アルグリア戦記】！』

『まあな、血のエフェクト処理（しょり）以外は最高に、興奮（こうふん）するぜカルマ！』

『其処（そこ）は仕様（しよう）なので仕方ないですよ。諦（あきら）めて下さい師匠（ししょう）。其（そ）れから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました！』

『ほう、鬼畜（きちく）仕様（しよう）のマゾゲー（マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム）シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ？』

否々（いやいや）、アンタにだけは言われたくないよ！　イカれた変態が、俺を変態性（へんたいせい）嗜好者（しこうしゃ）のように言うのは納得がいかない！　断固反対（だんこはんたい）する！

『其（そ）れで、鬼畜（きちく）シナリオの報酬（ほうしゅう）は何（なん）だったんだ？』

『完全（かんぜん）制覇（せいは）クリアの特典は、一千億英雄ポイント券（けん）・身体能力値の限界突破券（げんかいとっぱけん）・スキル枠（わく）撤廃券（てっぱいけん）・ユニークスキル創造券（そうぞうけん）・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券（せんたくけん）が各一枚づつですね！』

中々、破格（はかく）な特典内容だった。能力値（筋力（STR）・耐久力（VIT）・知力（INT）・敏捷（AGI）・器用（DEX）・魅力（CHA））を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値の侭（まま）なので、所謂（いわゆる）俺Tueeeは出来ない。

スキル枠（わく）撤廃（てっぱい）って、無限（むげん）にスキルをセットして良いらしい。勿論（もちろん）、スキルもカスタマイズ可能だ。

【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様（しよう）なので、最初からの俺Tueeeは勿論（もちろん）出来ない。

ユニークスキル創造って、もうチートだよね？

最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券（せんたくけん）に至（いた）っては、インダストリア社の運営チームが悪乗（わるの）りしてネーミングしたとしか思えないものだった。

『ほう、【ゲーム世界に転生】か？　浪漫（ロマン）じゃないか、本（・）当（・）に（・）転（・）生（・）し（・）た（・）り（・）し（・）て（・）な（・）！　はっははははは～！』

豪快（ごうかい）に笑う師匠（ししょう）に、『ははは、・・・・・・』と苦笑（にがわら）いで応答（おうとう）する俺だった。

『何（なん）にしても、楽しんで来いカルマ！　一回（いっかい）切（き）りの人生だ、悔（く）いの無いようにな！』

全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。

俺は亡くなった幼馴染（おさななじ）みの分も、人生を楽しむと決めていた。

『じゃあ、師匠（ししょう）！　ゲ（・）ー（・）ム（・）世（・）界（・）に（・）転（・）生（・）し（・）て（・）き（・）ま（・）す（・）！　また連絡しますから、楽しみにしていて下さい！』

『おう！　またなカルマ！』

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俺は珍（めずら）しく戯（おど）けた調子のカルマとの通信（つうしん）を切った。そして、自分が為（な）した闘いの顛末（てんまつ）を見届ける。

地平線（ちへいせん）一杯（いっぱい）に、人類（じんるい）だった骸（むくろ）が転がっている。

其（そ）の惨憺（さんたん）たる光景（こうけい）に、感情の無い目を向ける。

生きとし生けるもの全てが炭化（たんか）していた。

其処（そこ）は灼熱地獄（しゃくねつじごく）の如（ごと）く、焔（ほのお）の熱が充満（じゅうまん）していた。

俺は大空を滑空（かっくう）しながら、気持ち良く熱風と舞う。

凄いなカルマの奴（やつ）。誰一人としてクリアした者がいない、鬼畜（きちく）無理（むり）ゲーシナリオをクリアするとは。恐れ入ったぜ、俺には無理だ。退屈（たいくつ）で死んじまう。何（なに）が楽しくて【カルマ値（行動に因るゲーム設定上の善悪の数値）】を調整しながら遊ばなければならないんだ。

「ふん、そんなものはクソ喰（く）らえだ！」　

俺は我道（わがみち）をいく。自分のルールに則（のっと）って、【アルグリア戦記】を楽しむ。そんな大陸（たいりく）統一（とういつ）制覇（せいは）の為（ため）に、楽しみを封印（ふういん）してまで作業ゲー（楽しみの無い行為を繰り返すゲーム）のような事なんか出来るかってんだ！

プレイヤーネーム【クマメタル】は、そう毒突（どくづ）くと真（ま）っ赤（か）に燃える翼を翻（ひるがえ）し大空を羽（は）ばたく。プレイアバター【ラフレシア】として、十の災厄（アンタッチャブル）の一角（いっかく）、【不死鳥（ふしちょう）】として災厄（さいやく）をバラ捲（ま）く。

アルグリア大陸の生きとし生きるもの全ての頂点（ちょうてん）で在（あ）る十個体（じゅっこたい）の内の一体をプレイするクマメタルに取って、闘いとは殲滅（せんめつ）を意味する。要（よう）するに皆殺（みなごろ）しが、彼の流儀（りゅうぎ）だった。

【十の災厄（アンタッチャブル）】には、縄張り（テリトリー）から外には移動不可の制限が付く。故（ゆえ）にアルグリア大陸の住民達は、十の災厄（アンタッチャブル）の勢力圏（せいりょくけん）を侵（おか）さない。所属国家ごと滅ぼされた数多（あまた）の教訓（きょうくん）が、魂（たましい）と脳髄（のうずい）に【畏怖（いふ）】として刻（きざ）み込まれていたからだ。

【不死鳥ラフレシア】の縄張り（テリトリー）は、【アゾット炎獄（えんごく）】。炎が燃え盛（さか）る地獄（じごく）のような火の監獄（かんごく）。誰も訪（おとず）れない炎獄（えんごく）を守護（しゅご）する鳥は、焔（ほむら）を絶（た）やす事無（ことな）く、炎獄（えんごく）以外の空を翔ぶ事は叶（かな）わなかった。

自分が燃やし尽くした灰燼（かいじん）から立ち昇る命の残照（ざんしょう）を、美味（おい）しそうに吸い込み大空を翔（と）び廻（まわ）る。

アルグリア大陸の四十七国家を掌中（しょうちゅう）に納（おさ）める事を目指（めざ）さず、全ての勢力を倒す殲滅（せんめつ）プレイヤーである【クマメタル】にとって、【アルグリア戦記】とは現（・）実（・）の（・）仕（・）事（・）の息抜（いきぬ）きに他（ほか）ならない。

攻撃されなければ、攻撃をしないルールを持つ【クマメタル】は、俺を攻撃しろ、毒饅頭（どくまんじゅう）を喰（く）らえと、移（・）動（・）不（・）可（・）能（・）な（・）筈（・）の（・）縄（・）張（・）り（・）外（・）で、今日も陽気（ようき）に【アルグリア大陸】を飛翔（ひしょう）していた。

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『ぽ～ん♪　マスター、ようこそ仮想空間へ！　本日のご用命（ようめい）を、お伺（うかが）いします！』

現実と仮想現実の世界とのエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつもの如（ごと）く行き先を尋（たず）ねる。

『やあ、ナリア！　【アルグリア戦記】で頼む！』

蒼（あお）い瞳（ひとみ）の蒼（あお）い毛玉（けだま）の如（ごと）き狸（たぬき）が、了解（りょうかい）とばかりに、空中（くうちゅう）で可愛（かわい）らしく頷（うな）ずく。

『いってらしゃいませ、マスター！』

『ああ、行って来る！』　

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『【カルマ】さま！　ようこそ、【アルグリア戦記】へ！　現在、継続（けいぞく）プレイ中のアバターはご座（ざ）いませんが、新規（しんき）アバターでプレイを始められますか？』

純白（じゅんぱく）の空間に浮かぶ執事服に身を包んだ黒猫の姿の、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】が、常（つね）に変わらない慇懃（いんぎん）な動作でカルマを迎えた。

『ああ、ジョドー。今回は【ゲーム世界に転生】の【カルマ】でプレイするよ！』

『なるほど！　【創造神の試練】クリア特典ですかカルマさま？　ほう、特別シナリオですね、・・・・・・【ゲーム世界に転生】？　なんと厨二病（ちゅうにびょう）溢（あふ）れるネーミングでしょう！　此（こ）のジョドー、呆（あき）れを通り越して笑ってしまいそうです！』

そう言いながらも、全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは内心（ないしん）で苦笑（くしょう）をしてゲームスタートの準備を始める。

特別シナリオ【ゲーム世界に転生】を選択券で指定し、プレイアバター【カルマ】を選択する。

あれ、封印（ふういん）状態（じょうたい）じゃないぞ？　如何（どう）なってるんだ？

キャラアバターのステータス情報を見ながら、カルマは訝（いぶか）しむ。

スキルと能力値欄（のうりょくちらん）で、ポイント固定の封印（ふういん）表示（ひょうじ）が無い！

はて、特別シナリオってイージーモードなの？

まあ、無いなら無いで問題は無い。

次に能力値を限界突破券で上限値を解除（かいじょ）にして、英雄ポイントで上限一杯まで限界値を上げていく。

う、うん？　あれ、未々（まだまだ）上がり続けるぞ？

一千億英雄ポイント券を使用してポイントを獲得（かくとく）してと！

おっ！　百億英雄ポイントで【∞（無限表示）】に為（な）ったぞ！

筋力（STR）・耐久力（VIT）・知力（INT）・敏捷（AGI）・器用（DEX）・魅力（CHA）の各能力値をマックスの【∞（無限表示）】まで上げる。

状態値である生命力（HP）・魔力（MP）・精神力（MSP）・持久力（EP）は、育成次第で人種種族関係なく無限に成長が可能だった。

状態値まで【１】ポイント固定だったら、【創造神の試練】はクリア出来なかっただろう。

次にスキルだ。此（こ）れは悩むな。スキル枠（わく）撤廃券（てっぱいけん）で制限を解除（かいじょ）。現在所持している全てのスキルを付与するのは、容易（たやす）い。

だが、スキルは生き物なのでスキル同士で相性が悪いと、逆に力を発揮（はっき）出来（でき）ない。

目指すは両親の早世（そいせい）を阻止する。【創造神の試練】でアルグリア統一（とういつ）制覇（せいは）を為（な）し遂（と）げた仲間達の無念（むねん）を全て改変（かいへん）する。

其（そ）の為（ため）に全ての特典とポイントを使用して、プレイヤーネーム【カルマ】なら絶対にしない無双（むそう）プレイを為（す）ると決めていた。自重（じちょう）はしない。

十二万三十四回。合計でプレイアバター【カルマ】の両親が亡くなった回数だった。両親が脳裏情報（マインドインフォメーション）で事切（ことき）れる度（たび）に、胸の奥がチクリと痛んだ。自分の為（ため）に文字通り命を投げ出した両親。

辛苦（しんく）を共にし、文字通り命を懸（か）けて大陸（たいりく）統一（とういつ）制覇（せいは）を為（な）し遂（と）げた仲間達。誰もが身体に、心に傷を負（お）っていた。共に戦い共に笑い共に死んだ仲間達。何万回と見た戦友（とも）の死。無念（むねん）の想（おも）い。全て俺が変えてやる。運命（シナリオ）を覆（くつがえ）し塗（ぬ）り直（なお）し改変（かいへん）する。

カルマはそう心に決めていた。

スキルの選定（せんてい）は、最終スキル構成を想定（そうてい）して逆算（ぎゃくさん）（目的地から逆に辿（たど）る算段（さんだん））で作り上げていく。両親を仲間を助ける為（ため）、カルマは未来地（最終目標）を設定し、現在地（生まれた時）から小目標を設定し、ルートを設定していく。其（そ）れを為（な）すスキル構成を的確（てきかく）に付与（ふよ）していくのだった。

お、アイテムの持ち込みも制限がないぞ？

スゲー、流石（さすが）は特別シナリオ！　やっぱり超（スーパー）イージーモードだ！

常（つね）のカルマなら喜ぶ処（どころ）か、渋（しぶ）い顔に為（な）る状況だが、何（なに）せ今回は万（まん）が一（いち）にも失敗は許されない。何故（なぜ）なら特別シナリオ券は一枚しかない。失敗すれば再度【創造神の試練】をクリアしても貰（もら）えるか不明（ふめい）だった。

過去のシナリオでもシナリオマラソン（特典目当てで何回も同じシナリオをプレイする事）での特典（とくてん）獲得（かくとく）防止（ぼうし）の為（ため）に、初回しか獲得（かくとく）出来（でき）ない限定特典も存在（そんざい）したからだ。

ふ～ん、子孫（しそん）での継承（けいしょう）プレイは、不可（ふか）なのか？

全てのカスタマイズを終えたカルマは、ジョドーに【ゲームスタート】を申告（しんこく）する。

『準備は万全（ばんぜん）のようですね。カルマさま、・・・・・・』

執事の言葉には、憂（うれ）いがあった。顔には全く表さない感情（かんじょう）が、ノンプレイヤーキャラクターを装（よそお）うジョドーの心（こころ）の裡（うち）に在（あ）った。

『如何（どう）したの、ジョドー？　何（なに）か心配事でも在（あ）るの？』

普段とは様子の違うジョドーにカルマは、小首（こくび）を傾（かし）げる。

『いえ、全く問題はありません！　【カルマ】さま、準備が整いました！　お（・）元（・）気（・）で（・）！』

『行って来、えっ？（何（なに）、お元気でって？）』

珍妙（ちんみょう）な顔をした侭（まま）のカルマが、エフェクト処理（しょり）され分解（ぶんかい）されながら消えて往（い）った。

To be（続きは） continued（また次回で）！　・・・・・・