第107話 騎士団との再会
確かに騎士団に話を聞いてもらうには国の許可が必要だと言っていたけれど、ナレアさんが王様直筆の許可書を持ってきた時は驚いた。
どうやらヘネイさんを通して龍王国の王様にあって来たらしい。
ナレアさんって思っていたよりも大物なんじゃ......。
クレイドラゴンさんにも普通に接していたしな......。
「どうしたのじゃケイ?妾の事をじっと見つめて。見惚れたのかの?」
「そうですね。ナレアさんはとても綺麗なので見惚れていました。」
「ほほ、その気持ちはよく分かるのじゃ。じゃが睦言をいうなら夜、二人きりの時だけにするのじゃ。妾は奥ゆかしいからのう、このような場所で言われても反応に困るのじゃ。」
そういって辺りを見渡すナレアさん。
やり返そうと軽口を返してみたもののあっさりと受け流される。
やはり口で勝つのは無理......でも否定しても何かしら突いてくるはず......八方塞がりだ。
とりあえずナレアさんに倣って辺りを見渡そう。
今俺たちはワイアードさんが帰還してくる予定のルート沿いに移動している最中だ。
と言ってもいつものように街道から離れた位置を疾走しているのだけど......騎士団が近づけばシャルが教えてくれるから特に問題はない。
「どのくらいで騎士団と合流出来ますかね?」
「そうじゃな......一昨日王城に連絡が行った時点では騎士団がいるのは七程村や街を超えた先のようじゃな。ファラの言うように一月程はかかるじゃろう。やっかいな荷物もあるしのう。とは言えこちらの速さからすれば二、三日もあれば合流出来るじゃろうな。」
「二、三日ですか、結構かかりますね。」
「すまんのう。フロートボードは魔力の消費が結構あるからあまり連続して使えなくてのう。」
「シャルに乗ってもらえばもう少し早く進めますかね?」
「......いや、それはやめておこう。無理をして急ぐ必要もなかろう。」
ナレアさんがシャルの事を見ながら答える。
シャルは変わらず前を向いて走っている......シャルなら問題なくナレアさんを乗せても走れると思うけどな?
まぁナレアさんがそう言うなら否はないけど......。
「それに、無理に急ぐと野宿になるのじゃ。」
「それもそうですね。今日は三つ先の村に宿泊予定でしたよね?」
「うむ、日が暮れる前には着くじゃろうな。」
何故か少しシャルの走る速度が上がった気がする。
そんなに急ぐ必要はないんだけどな......。
「シャル、あまり速度を上げるとナレアさんがついて来られなくなるから少し抑えめにお願いね。」
『......申し訳ありません。速度を落とします。』
シャルが速度を緩めてナレアさんに並ぶ。
「そういえば、魔道具はちゃんと出来ておったかの?チェックしてみたんじゃろ?」
「あはは、それが十五個中二個しかちゃんと出来ていませんでした......。」
昨日の夜、意気揚々と買ってきた魔道具で成否判定をしてみたのだが惨憺たる有様だった。
もう少しちゃんと出来ていると思ったんだけどなぁ......。
「ふむ......ケイはちゃんと魔術式を描く指導を受けたわけではないのかの?」
「そうですね......軽い手ほどきを受けた程度だと思います。」
「どのくらいの期間かけたのじゃ?」
「教えてもらった期間ですか?半日も教わってないかと......後は適当に模写をがんばれと魔術式をいくつか貰ったくらいでしょうか?」
「それは教わったとは言い難いのう......よくそれでちゃんと動くものが二つも描けたものじゃ。」
「とにかく描いて練習するしかないと言われていますけど。」
「まぁ最終的にはそうなのじゃが......それでも色々と技術があったりするのじゃぞ?まぁ自分で開発することを後回しにして模写するだけならって事かもしれぬがのう......因みにどんな魔術式を描いているのじゃ?」
「僕が依頼して作ってもらったオリジナルの魔術式なんですけど......こういうのって見せてもいいものなんですかね?」
「......オリジナルの魔術式か......それを見るのは不味いかもしれんのう。」
「やっぱりそうですよね......流石に色々お世話になった方なので不義理なことはしたくないですね......。」
「その方がいいじゃろうな。もし行き詰る事があったなら、その時は相談に乗るのじゃ。」
「ありがとうございます。その時は宜しくお願いします。」
チェックの魔道具を暫く使ってみて、上達が見られない様だったらナレアさんに相談してみよう。
安定して作れるようにならないとレギさんに渡せないからな......とりあえず二個はあるからそれで使ってみたい魔道具を選んでもらうかな......?
ナレアさんの予想通り、王都を出て三日目の昼前に街道を移動する騎士団と合流することが出来た。
騎士団を刺激しないようにかなり手前でシャル達から降りて徒歩で近づく。
「これって真正面から近づいて怒られたりしないんですか?」
「行軍中ってわけじゃないから問題なかろう。荷物を運んでいて速度も遅いようじゃしな。」
そう言ってナレアさんは騎士の一団に近づいていく。
「本当に大丈夫なんですか?」
「あまりお勧めは出来ねぇが......戦闘後で殺気立っていないとも限らないしな......。」
「言ってないで私たちも行くよ。もうナレアちゃんが話始めちゃってるよ。」
リィリさんの言葉に騎士団の方を見るとナレアさんが騎士団に頭を下げられているのが見える。
ナレアさんって何者なんですかね......?
いや、王様直筆の許可書があればあんな感じになるのか?
そんなことを考えていたらナレアさんが戻ってきた。
「夕方には一つ手前の村に到着できるみたいじゃが、どうする?道中話を聞くのもありじゃし、村に先に向かっておいてもいいようじゃが。」
「道中で話を聞いておいた方がいいと思います。村の中で魔物を調べることも出来ないでしょうし。」
「それもそうじゃな。ではハヌエラに話を聞くとするのじゃ。」
俺の意見にナレアさんが同意する。
隊列の中央付近に移動していくナレアさんについて行くとハヌエラさんが馬から降りた状態でこちらを待っていた。
「お久しぶりです、ナレア様。ご壮健そうで何よりです。」
「うむ、ハヌエラ。そちらも変わり無いようじゃな。」
「それに......レギ殿、リィリ殿、ケイ殿。御三方がナレア様と一緒におられるとは驚きました。」
「お久しぶりですワイアード様。縁あってナレア殿と共にこの件に関わらせてもらっております。」
ナレアさん達の挨拶の後にレギさんが代表して挨拶をしてくれる。
こういう時にいつもレギさんに任せるのは悪いとは思うけど中々難しいんだよね......。
「頼りになる方々が力を貸して下さることに感謝いたします。早速ですが何からお話すればいいでしょうか?」
「そうじゃな......第五騎士団からの報告は六件程上がっておったが、ハヌエラが遭遇したのは何件じゃ?」
「三件です。今回の件も既に上げていますがそちらもご覧になりましたか?」
「うむ、妾だけ確認しておるが......随分と慌てていたようじゃの?」
「ははっ、申し訳ありません。生け捕りにしたことを取り急ぎ送ったので詳細が届くのにはもう少し時間が必要でしたね。では先日遭遇した群れの件を説明させて頂くということでよろしいでしょうか?」
「そうじゃな、よろしく頼む。」
「畏まりました。とは言え、今まで遭遇した群れと特に違いはありません。二種類の異なる魔物が群れを成しておりました。ただ数が五匹と少なめだったのでそれぞれの種類を一匹ずつ捕獲することに成功しました。」
「数が少なかったとはいえ良く捕獲することが出来たのう。」
「街に近かったこともあり冒険者の方の助力がありました。それに檻の調達がしやすかったというのも良かったですね。」
確かにスラッジリザードに襲われた村でワイアードさんの部隊に会った時は檻なんか持っていなかった。
輜重隊みたいなものも引き連れてはいなかったが、スラッジリザードの死骸は荷車に乗せられていたのを見たはずだ。
今は死骸を運んでいないようだけど、別で運ばれていったのかな?
何か研究する機関に運ぶとか言っていた気がする。
もしかしたら今回捕獲した魔物もそこに運ぶのかもしれないな。
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