第22話 仕事の始まり
依頼初日、俺とレギさんは倉庫の前で門番のように立っていた。
今回の依頼は街中ということで、小腹が空いたとき時用の軽食に飲み水、後は傷薬を用意しておいた。
......回復魔法の練習しないとな......。
というか優先してやらなとダメだよね、宿に戻ったらやっておこう......。
レギさんは腰にいつも持っている剣、さらに革の胸当てと関節を守るようにサポーターのようなものを装備していた。
他にも普段はつけていなかった指輪や腕輪等を身に着けていた。
アレは魔道具なのかな?
レギータさんが着けていた指輪のように仄かに飾りの石の中が光っているように見える。
因みに頭は無防備......いや、違いますよ?兜とかそういうのは装備していないって意味ですよ!?
何故かレギさんから睨まれたので心の中で訂正する。
レギさんの敏感さはどうなってるの......?
「......なんか失礼な雰囲気を感じるんだよ。」
返事されたし!?
「まぁそれはいいさ、ところでにーちゃんはナイフを選んだんだな。」
「えぇ、レギさんとの訓練でも思いましたけど、やっぱり剣はあまりうまく使えないみたいなので、体術とナイフを組み合わせる感じでやっていこうかと......。」
「なるほどな、別ににーちゃんの剣が下手だったとは思わなかったが、にーちゃんの動きにはナイフがあっていると思うぜ?ただ......随分と立派な装飾だが、あのグルフに預けてたのか?」
「あー、目立ちますかね?レギさんの言うようにグルフに預けてた荷物から持ってきたんですけど。」
因みにこのナイフは魔道具だ。
試していないので効果が分からないから今回の仕事で魔道具として起動するつもりはない。
あくまでちょっと派手なナイフとして使うつもりだ。
「ちょっと目立つな。鞘だけでも適当な奴に変えといたほうがいいかもな。それとこれはまた別の話になるが、武器は一つに絞るんじゃなくていくつか使えるようにしておいたほうがいいぜ、状況によって持ち替えられるようにしておくんだ。」
「なるほど、考えておきます。因みにレギさんは剣以外に何を使うんですか?」
「俺は一番得意なのは斧だな、両手持ちの大きめの奴だ。まぁ、街中で振り回すのはちょっとな......。後は槍だな。基本的に大型の武器ばっかり扱ってたもんで昔は街中で苦労したもんよ。」
なるほど、確かに街中で大型の武器を常に持ってるわけにはいかないよね。
いくら武器の携帯が許可されていてもでかい武器はそれだけで威圧感が半端ない。
後、いくら魔力で身体強化されてると言っても重いだろうし......。
「まぁにーちゃんは大型の武器はちょっと合わないかもな、速さで翻弄するタイプのようだし小型の携帯できる武器がいいんじゃねぇかな?そうだな......例えば、遠距離武器にスリングなんかどうだ?」
スリングってあのY字になってる......パチンコってやつだっけ?
元々狩猟道具って聞いたことあるけど、子供のおもちゃってイメージしかないなぁ。
「スリングですか、どこかに売ってますかね......?」
「ちょっと特殊な武器だからな、注文して作ったほうが早いかもな。」
「なるほど......できれば一度試してみたかったんですけど......。」
「そうだな、提案したのは俺だし知り合いに聞いてみてやるよ。」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
そんなことを話しながら警備をしているわけだけど、この辺は人通りがほとんどなく、もし誰かが近づいてきたらすぐに気づけるんじゃないかな?
因みにクルストさんは地形把握と気分転換を兼ねて周辺の散策に出ている。
緊急時用に全員笛を持っていて、何かあった時はそれを鳴らして知らせる算段だ。
道沿いに街灯がぽつぽつと点在しておりそこまで暗くはないがあまり視界は良くない。
でも......ふふふ......森で初魔法を使ってから、練習を欠かさなかった俺は少し魔法が使えるようになっているのだ!
現在使用している魔法は視覚強化、聴覚強化、思考速度強化、反応強化と言ったところだ。
練習をしているとは言え、魔力を多く込めると効果は上がるが正直制御しきれないのでまだ魔力は少なめに込める感じで強化をしている。
腕力や脚力の強化も即座に出来るけどこっちは感覚強化よりもより慎重に魔力を調整しないとまたすっころぶ羽目になるんだよね。
......ご利用は計画的に。
因みに視覚強化は前やったみたいによく見えるようにする以外の効果もつけているので、夜であっても視界はクリアだ。
なので今、こちらにこそこそ近づいて来ている人物もはっきりと見えている。
「ただ今戻ったっス!」
「おかえりなさい、クルストさん。」
「あれ......?驚かなかったっスか?」
「えぇ、クルストさんがこっそり近づいてきているのは見えていましたから。」
街灯の陰になっている部分に身を潜めながら近づいてきていたが姿はばっちり見えていたし、近づいてくる音も拾えていた。
「全然こっち見ていなかったし、絶対気付かれてないと思っていたっス。」
「俺も驚いたぜ、にーちゃんが気付いていたとは思わなかった。話しながらもちゃんと警戒していたんだな。」
レギさんも気付いていてわざと黙っていたようだ。
「流石に初めての仕事でいきなり気は抜けないですよ。」
「まぁ、それはそうだな。」
「ちぇー、呑気に喋ってたからいけると思ったんスけどねー。」
クルストさんはいたずらが失敗した子供の様に残念そうだ。
そういえばクルストさんは何歳なんだろう?
この世界の人は年齢が分からないな......レギさんも驚きの20代だからな......。
「............。」
いえ、なんでもありません。
何も考えていません、大丈夫です、気になさらないでください。
......ごめんなさい。
心の中で謝ると、レギさんの視線が外れる。
ほんと、どうなってるの?
心読めてますよね?
しかしレギさんから返事は特にない......。
「まぁ、いいっス。じゃぁ次はケイがその辺回ってくるといいっスよ。」
「......そうだな、ある程度地形把握してくるといい。」
「分かりました。じゃぁ行ってきます。レギさん、クルストさんここはお願いします。」
この場は二人に任せ、シャルとマナスを連れて俺は辺りの散策に出ることにした。
日があるうちと落ちた後ではまた雰囲気が変わるからね。
まぁ、視界はばっちり良好なんだけどね。
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