dead end - 女であることの、究極.

『ありがとうございました。滞りなく、すべてが終了しました』


「そうか」


 目の前。男。倒れて、動かない。


 蹴飛ばした。


「起きろ。終わったぞ」


『その警察官。たいしたもんですよ。ひとりだけで汚職に立ち向かうなんて』


「ばかだな。こんな弱いのが男だとは」


「男に生まれたくて、生まれたわけじゃ、ない」


 男。よろよろと、立ち上がる。


「車に残れと言ったはずだ。おまえが車を出て庁内に入ったから、無駄な血が流れた」


『いえ、必ずしもそうだとは』


「男は黙っていろ」


 無言の空間。


 朝陽が、ゆっくり昇ってきている。


 全ての男が死に。全ての女を殺すまで。この呪いは消えない。女に生まれたという、呪いは。


「女に生まれた自分が、そんなに憎いか?」


 言った男の口を、靴で蹴った。顎の外れる音。


 頭をおさえつけ、地面に叩きつけて強引に顎をもとに戻す。かり、こり、という関節の戻るいやな音。


「何か喋ってみろ。おまえを殺すのは、やめだ。死にたくなるぐらいに壊してやる」


 女が。


 女に生まれたから。


「あなたは」


 男の声。顎が外れたぐらいでは、まだ心は折れないらしい。


「あなたは。綺麗だ」


 男の顔を地面にぶつけ、横に大きく擦る。


 持ち上げた。男の顔の半分が、どろどろになる。土の上なので、血は出ていなかった。


「私の聞きたい言葉だけを、発話しろ。土は食べたくないだろう?」


「会って、一日、経ってませんけど。あなたが、好きに、なりました」


 腹の少し上のところに、拳を突き込んだ。


 男が背中を折り、吐く。


「しまった。土でもなんでも食うつもりが、逆に吐いてしまった。面目ない」


 男。声にまだ、張りがある。


「殺す」


 そう、口に出した。


「どうぞ。そうやって、殺してきたんでしょう?」


 男。こちらを見る、純粋な眼。


「あなたは女だ。だから、男を愛する自分が、許せない」


「黙れ」


「どうしようもなくなって、感情の行き場を失って、殺してしまう」


「黙れっ」


「殺してみろ。女だからという理由で殺すおまえは、他の誰よりも女だ。それを自分で証明してしまっている。おまえは女だ。すべて認めて、自分自身を愛せ。好きだと言え」




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