人類に悪影響をもたらす機械軍は掃除道具として使われます
▲
それから三分後──。
「お待たせした!」
再びピンク色のドアから出てきた部長が、昨日黒瀬が破壊したロボ軍団の一部を率いてきた。
●下部のブラシを回転させて人体の皮膚を引っぺがす……【シンジくん十三号】
●ブラックホールと直通している超吸引力の掃除機……【タクミくん五号】
●人類に報復されるプログラムが仕込まれた人型兵器……【カズマくん二号】
●数秒で鉄をも溶かす火炎力を誇る……【ヒトシくん三十号】
●片側五本、計十本の腕を搭載された多人数殴打マシン……【ソウジくん一号】
掃除するには打って付けの五体が揃った。
でもなんか違和感が……。
「部長……」
「なんだ?」
「シンジくんとソウジくん、なんだか小さくありませんか?」
昨日目の前に現れたときは、もう一回りあったような気がする。
「ああ、材料が足りなくて少し縮小した」
「なるほどぉ……。他に足りなくて性能一部欠けている子とかはいますか?」
「タクミくんがまだブラックホールと直通してない」
それってただの掃除機じゃ……?
「あとカズマくんとソウジくんは、報復プログラムを入れてないから命令通りにしか起動してくれないぞ」
「寧ろ好都合です」
この人が作るほとんどのモノは、悪い部分取り除けば絶対売れると思う。
「あと、白石白瀬──」
「はい?」
「また〝コレ〟を頼む」
部長が腕を模す機械装置を手渡してきた。
あ……コレって──。
「【光波熱線発射装置マークツー】だ」
やっぱりね……。
「またデータが必要になってきたから、コレを使って人にぶっ放してきてくれ。道徳のなってない奴らを〝更正施設〟へ送り届けるんだッ!」
「それについて一つ質問が……」
「なんだ?」
「以前送った中年男性は……どうなってるんですか……?」
「…………」
目を逸らされた。
「部長! 答えてください! 前科持ちになっちゃいます!」
「安心しろ。この通り、以前転送された奴は無事に生きてるよ」
そう言って部長は黒いトランシーバーを白衣のポケットから取り出し、見せてきた。
耳を澄ませると、ノイズに入り乱れて男声が聞こえてきた。
『助けて……。助け……て……』
そこで途切れた。
「…………」
「な?」
「これ大丈夫なんですか? 明らかに始末されたような悲痛でしたよ……?」
「大丈夫だ安心しろ。道徳のなってない奴が最後仕返しを受ける映画のみを視聴させられてるから精神が崩壊しただけだ」
こんなに不安な『大丈夫だ安心しろ』を聞いたのは初めてだ。
「それ社会復帰できるんですか……?」
「大丈夫だ安心しろ。記憶を全部消去するから、精神だけが疲れた0歳児が野に放たれるだけさ!」
「その施設にいずれカウンセラー転送させておきますね……」
なんでこの人捕まってないんだろ……。
「それじゃあ宜しく頼むぞぉ。ふぁ~……眠っ」
欠伸(あくび)をして部長はドアの中に帰って行った。
閉まった瞬間に消えると、再度生徒会メンバーが驚愕する。
さてと、お目当てのモノは手に入ったし、予定していた時間よりも少し遅れてしまったから、早く済ませるか。
「会長、お待たせしました」
五体のロボを引き連れ、会長の元に向かう。
「え……っと……それは?」
「はい。悪の科学者から拝借してきました〝今は害の無い〟ロボットたちです」
「それを用意して……どうしようと……?」
かなり困惑している様子だ。
「この子たちに校舎内の清掃をしていただきます。有効活用できる代物を選りすぐってきましたので、人員不足も解消できるかと」
「そ、そういうことですか……」
「因みに会長は、最初どこを掃除する予定でしたか?」
「そ、そうですねぇ……。広い廊下からとか……?」
「でしたらそこは手を付けなくて大丈夫です」
「へ……?」
「まぁ、説明するより実践です。自分に任せてください」
これでようやくボランティア活動が始められそうだ。
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