第5話 戦闘開始……第一戦はクイズですか?

 侵略者たるダブラ王国の皇太子とその執事を前にして、俺は緊張していなかった。そう、二人はコタツの快感に溺れ、顔が緩みまくっていたからだ。


 俺は作戦目標を心の中で反芻する。

 それは二日間、シファー・マラクさんを保護する事だ。その為には目の前のこの二人を追い払うか、もしくはこのコタツに縛り付ければいい。幸いこのコタツは、トラップとしての機能を十分に発揮している。

 追い返すのは難しい。ならば、このコタツに縛り付ける方が合理的だろう。そう確信した俺は彼らに提案した。


「コタツに入っているだけでは退屈でしょう。ここでゲームをしませんか? 勝者はこのコタツを独占できる。敗者はここから立ち去る。如何ですか?」


 狡賢な提案だ。

 俺たちが勝てば連中を退けることができるし、負けた場合はシファー・マラクさんを連れ出し逃げればいい。


「ゲームやる!」

「太子」

「黙れアキュラ。僕はゲームに勝ってシファー・マラク姫を手に入れる!」

「太子。勝者が得る報奨はこのコタツです。それはもちろん魅力的ですが、シファー・マラク姫は対象外ですぞ」

「問題ない。姫もこのコタツから離れる気がないからだ!」


 このコタツは猫獣人にとってのトラップ。

 ならば、シファー・マラクさんもこのコタツから離れられないのか。それなら必ず勝たなくてはいけない。


「このコタツはゲーム召喚機能がある。どんなゲームが召喚されるか事前にはわからない。この機能で召喚されたゲームで勝負する。これでどうだ?」

「いいよ。ダブラ王国のゲームマスターと呼ばれているこの僕に勝てる者なんていない!」


 すごい自信だ。


「では始めようか。先ずルールだ。ゲームのルールに関してはコタツに従う。三つのゲームで戦う。先に二勝した方が勝つ」

「それでいい」


 勝ち誇ったように笑う皇太子だ。

 俺はゲームを召喚すべく指を鳴らした。


 天板が眩しく光り、各人の前に赤いボタンが現れた。そして中央に人形のような物が出てきた。それは身長20センチほどの、ピンク色の獣人と原色で派手な色使いの服を着たピエロだった。


「はいはーい。今日はクイズゲーム。スターダストパラダイスにようこそ」


 ピンク色の獣人が踊りながら説明する。


「ルールを説明します。これはクイズゲームです。今回は二名対二名の団体戦とします。参加者は目の前の大きな赤いボタンを押してください。基本早押し。早い順から回答できます。正解なら+1ポイント。不正解なら-1ポイント。先に100ポイント獲得したチームの勝利とします」

 

 今度はピエロが説明した。


「質問あるかな。では、始めるよ。先ずはジャンルを決めてね!」


 ピンク色の獣人がパンパンと手を叩くと、俺たちの目の前、司会進行役の獣人とピエロの頭上にホログラムの画像が現れる。そこには四つの選択肢が提示されていた。


 俺は迷わずにボタンを押す。すると俺のボタンが赤く点滅した。中身を読まずに即決したのが良かったな。


「和也さんが一番でした。さあ選んでください」


 うむ。

 改めて選択肢を見る。


①日本の歴史……お城編

②日本のアニメは世界一

③漢字検定一級に挑戦だ

④おばあちゃんの知恵


「②番にします」


 なかなかマニアックなジャンル設定だ。

 しかし、回答者は俺を除き異星人。つまり、アニメの話なら俺が一番なのは間違いない。


「ジャンルは②に決定! 早速第一問行くよ! 変形合体ものの元祖は何? 作品タイトルと機種名を答えよ!」


 変形合体と言えばゲッターロボだ。間違いない。

 俺は即ボタンを押したのだが、目の前のボタンは光らなかった。光っていたのは俺の正面に座るムラート皇太子のボタンだった。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る