第12話 ドラゴン街

 それからモブゴン達は大勢のドラゴン達を行き交いながら崖の方に向かった。

 坑道の外に巨大な学園があり、その学園より端には崖があり街がある。

 本当に凄い所だと思ってきた。


 ドラゴン街に辿り着いた時にその光景にモブゴンは圧倒された。

 大勢の人々で賑わう姿はクフェル村ではありえない姿だった。

 多種多様な売店が立ち並ぶ中、大きな建物が目立つ。

 武器屋とか防具屋とかドラゴンの装備一覧とか色々なお店が立ち並ぶ。

 もちろん宿屋が無数にあり、温泉ありとかカジノありとか色々と書いてある。

 

 無数の人だけではなく無数のドラゴン達にも圧倒される。

 ドラゴン街の道の幅はとてつもなく広い、家くらいのドラゴンが2体は歩けるくらいだ。

 歩く場所を考えないと巨大なドラゴンに押し潰される可能性もある。

 モブゴンはここがドラゴンと共存する街だと悟った。


 それは前の世界に居た時から願っていた世界だ。

 人はドラゴンを殺しドラゴンを利用し、ドラゴンを奴隷とする。

 そんな痛々しい世界より、ドラゴンと人間が手を差し伸べ合って生きる世界にいつか行きたいと思っていたのだ。


 モブゴンは身分証明書のカードを見ていた。

 お金のマークが付いている所に100000Dと書かれてあった。

 これは恐らくお金だろう、つまりあの村長はそこまで準備してくれたのだ。

 本当だったら何か仕事をして稼いだお金で宿屋でも入ろうかと思っていた。

 それから野宿も考えていた。

 しかしモブゴンはこの好意に甘える事にした。


 モブゴンはごく普通の宿屋に入る事にした。

 入り口にはドラゴン預り所と呼ばれるドラゴン牧場があった。

 竜の牧場と違うのはドラゴン牧場では育てるという事をしていないようだ。



 1人の女性が元気よくこちらを見ていた。


「あらまぁ珍しいですわね黒いドラゴンと白いドラゴンは、預けなさりますか?」

「はいお願いします」


「料金は宿屋から聞いてください」

「助かります」


「これが引換券ですこれを宿屋の主人に見せればいいです」

「うん、分かったよ」


 モブゴンはこくりと頷き、2体のドラゴンを見ていた。


「他のドラゴンと会話してこいよ、君達もリラックスしたいだろう?」


【うん、そうだね】

【そうさせてもらおうかな】


 2体のドラゴンがドラゴン牧場に連れられて行く。 

 その光景を見ながら悲しくなりつつ。意識しなかった。

 宿屋の中に入ると顔の形が整い、胸が大きくてお尻が大きいナイスバディーの女将さんがいた。

 彼女はこちらを見ると微笑んでくれた。

 周りを見てみると食堂には沢山の人々がいた。



 ほとんどが20歳以下だと思われる。



「はい、いらっしゃい、その引換券は、ふむ2体のドラゴンね、とても珍しいわね。さて部屋は何個か空いてるかけど、風呂付でざっとこの額よ」


「それにするよ」


「よろしい、ではこっちに来てね」


 モブゴンはナイスバディーの女将さんの後ろを付いていった。


「最近物騒でね、ドラゴンハンターには気を付けるのよ、どこに潜んでいるか分からないから」


「そんなにドラゴンハンターは恐ろしいのですか」


「当たり前じゃない、彼等はドラゴンを平気で殺してしまうような輩なのよ」


「なるほど」


「知り合いがドラゴンを殺されて孤独者になったのよ」

「その孤独者とはドラゴンを失った人が言われるのですよね」


「その通りよ、まぁ気を付けるにこした事はないけど、こちらが部屋になるよ契約は4日くらいでいいかしら? あなたもドラゴン学園入学試験を受けに来たのでしょう、落ちたら故郷に戻るのだろうし、受かったら学生寮で生活するだろうし、最低で4日くらいってとこ? 早まったらその分のお金は返すから安心して」


「助かります。何から何まで」

「この宿屋はいつも受験を受けに来る人で集まるから、たまには食堂に出ると情報収集にもなるね、じゃ、部屋にお風呂があるから、いつでもお湯がでるからね、ベッドは1個だけあるからね、ゆっくり休みなさいね」


 モブゴンは証明書のカードを彼女に渡す。

 すると彼女は別なカードにそれをかざす。

 すると証明書から10000Dが減っていた。

 現在の残金は90000Dであった。


 このDはドラゴンという意味だとか。

 本当にドラゴンが好きだと思いつつも。

 

「では、まいどですね」


 かくして宿屋契約が済んだ。


 モブゴンは部屋の中に荷物を置く事にした。

 とはいえリュックに入っているのは干し肉とかだし、道具袋は随時持ち歩こうと思っている。


 どうやら証明書がカギの役割をしてくれるようだ。

 証明書を四角い板に付けると。

 鍵がロックされた。


 モブゴンはお腹が減ったので食堂に向かったのだ。

 そこでは大勢の青年達が熱い話をしている。

 どうやらドラゴン学園の入学試験に行ける資格は10歳から20歳までと幅広い年齢層だったはず。そのようにあの歴史担当のダンサーの先生が教えてくれたはず。

 本当に幅広い年齢そうだと思った。


 なので今食堂では少年から青年が爆笑したり話をしたりしている。

 端っこでは頭が真っ赤に染まった1人の青年がちびちびと葡萄ジュースを飲んでいた。


 モブゴンは椅子にゆっくりと座り、給仕の人がやってきた。



「何になさいます?」


 メニュー表を渡されると、なんとなく牛のステーキを頼んでいた。

 そしてメニュー表から給仕係に視線を変えると。彼はメモ帳に記した内容を調理担当の人に告げる。


 それをモブゴンは見て目の前を見た時、赤い髪の青年が眼の前に座っていた。


 度肝を抜かれそうになりつつも目の前の赤い奴はこちらに尋ねる。



「ドラゴンは好きか?」

「当たり前じゃないか」


「なら熱血の話をしよう」



 彼の両目は炎のように燃え上がっていた。


 彼の名前はリードロフ、モブゴンも自己紹介していた。

 リードロフは火炎ドラゴンがいかに格好いいかを力説してくれた。

 


「確かに火炎ドラゴンはとても格好いいですよね、鱗が赤く光るのはとても眩しいですし、何より口から吐き出される炎は凄いものです」


「だろうだろう、お前分かるなぁ」


「いえいえ」


「なになに、混ぜてよ」


 そこにやってきたのはキッカスという少年であった。話によるとリードロフが18歳であり、キッカスが14歳であった。頭にはニット帽を被り、眼はとても細かった。 

 背丈もとても小さく、確かに14歳だと思った。



「自分のドラゴンはベトドロドラゴンでね、ドロイって名前なーんだ。ベトドロって知ーってる? とても珍しいドラゴンなんだよ」


 それからキッカスの相棒の自慢話になり、負けずとリードロフの火炎ドラゴンの自慢になる。

 

「まったく、そのような低俗な話に夢中になるなど、言語道断、ブルードラゴンが一番クールだぞ」


 突如乱入してきたがり勉タイプは白衣を着用していた。

 彼の名前はネメスという名前でこちらをじっと見ている。


「ありゃりゃ、なんかすごい話だね」


 また乱入してきたのはシンエと呼ばれる女性で、ミニスカートを着用してタンクトップを着ている。ツインテールにしているが体系はお姉さん体系。


 ネメスが16歳でシンネが17歳であった。

 

「それでねわたくしの相棒はウィングドラゴンなんだよ、凄いでしょー、いいでしょー、いいでしょーとても可愛いんだから」


 シンネが相棒であるウイングドラゴンの自慢話に咲かせる。



「まったく凄いドラゴンはねスノードラゴンよ」


 また乱入してきたのはゼネスと呼ばれる17歳の女性であった。

 頭を覆う帽子を被り、帽子に2つの穴を開けて覗き見している。その帽子は銀色のシルクハットであり大事そうにしている。


 なぜ女性かと分かったかは簡単で胸があったからという事。


「そんな事よりセイントドラゴンの方がすーっごく強いんだよ」


 次に乱入してきのが背丈が小さいのだが、サングラスを掛けており、話によると彼女の瞳は光を吸収する体質のようだ。その為にサングラスを付けている。

 名前はネイとい呼んでいた。



 それからその場にいた【炎のリードロフ】と【土のキッカス】と【水のネメス】と【風のシンネ】と【氷のゼネス】と【光のネイ】と【光の闇のモブゴン】が揃った。


 彼等は朝になるまで熱い会話を続けていた。

 食堂は四六時中開かれており、調理師さん達は交代交代で成り立っているようだ。

 女将さんはこちらを見てにこりと笑った。


 先程まで熱い会話をしていた別グループはとっくの昔に解散していた。

 だがこちらのテーブルに集まった7名達は語りつくした。


 とっくの昔に太陽は昇っている。

 ネイが大きな欠伸をするのと同時に、皆が欠伸をしていた。


 それぞれが挨拶をしていき、ドラゴン学園の試験では皆で受かりましょうと誓いを立てて。

 モブゴン達はその場を立ち去った。

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