異世界に召喚された竜使いは2体のドラゴンを相棒にし最強で学園ライフしながら問題解決

MIZAWA

第1話 ドラゴン戦争

 その世界はドラゴンを戦争の道具として使っていた。

 

「モブゴン、そのドラゴンの治療を頼む、足を縫ってくれ」

「モブゴン、そのドラゴンは妊娠しているぞ」

「モブゴン、こっちだ。次から次へと負傷したドラゴンが戻って来るぞ」

「モブゴン、モブゴン、モブゴン」


 そこにいた青年は右側の髪の毛が黒髪で、左側の髪の毛が白髪であった。

 丸い眼鏡を付けており、衣服は元々青色のジャケットだったのだろうが、今ではドラゴンの返り血に染まっている。


 青いジャケットはドラゴンの牙でも爪が当たっても引き裂かれる事のない特殊な素材を使用している。


 黒いズボンも同じ素材で出来ている。

 モブゴンと呼ばれた17歳の青年はヘルメットのように頑丈な帽子を身に着けていた。

 ヘルメットの素材は鉄を使用しており、ドラゴンの牙と爪では破壊出来ないように作られている。


 モブゴンは竜使いと呼ばれる一族に生まれた。

 竜使いはあまりおらず、竜の育て方などの知識が伝承されていく。

 

 モブゴンは17歳にして一流の竜使いとなった。

 なぜ竜使いなのにドラゴンと呼ぶのか、元々この世界には巨大な竜がいた。

 しかし竜は退化を辿り、ドラゴンとなったとされる。ドラゴンは竜の2分の1くらいの大きさになったのだから。



 その時竜を使役していたのがモブゴン達の一族だった。

 しかし竜ではなくドラゴンになると竜使いの権威は下がっていった。


 

 竜使いは所々におり、各地の国でドラゴンを育てあげている。

 そのドラゴン達は各地で戦争の道具として使われる。



 この竜の牧場にいたドラゴン達もほぼ1体も戻る事はない。

 ほとんどが戦場で殺されているからだ。



「モブゴン、早くしてくれ、こいつ卵を」

「モブゴン、こっちの血がとまらねー」

「はよしろ」

「モブゴン、子供のドラゴンが脱走したで」


「あああ、もう、分かったよ」


 文句を言いながらモブゴンは次から次へとやってくるドラゴンの仕事に手を付け始めた。

 怪我をしたドラゴンは訓練所でドラゴン同士の戦いになったからだろう、ドラゴンは手加減を知らないのだから、恐ろしい。


 しかし血は止まったドラゴンは安らかにモブゴンに甘えてくる。

 その頭を軽く撫でつける。

 

「こいつらも還ってこなくなるんだよな、あいつらも、そして小屋にいる怪我したドラゴンも治療したら戦場か」



 先程出産したドラゴンの卵は孵化室にて卵から育てられる。

 ドラゴンは沢山出産する。その分、ドラゴンは沢山死んでいく。

 竜の時代は1年に3体くらいしかこの世界に誕生せず、とても気高かったそうだ。

 だが今ではドラゴン達は次から次へと卵を生み出す。


 

 そうしないとこの国と沢山の国が滅ぶから。 

 戦争とはそう言うものだと祖父から教えてもらった。



 モブゴンは次から次へと死んでいくドラゴン達を助けたかった。

 どうやったら助ける事が出来るのかそれを考えていた。

 


 焚き火の傍でドラゴンの頭を撫でながら、暗闇に包まれた空を眺めていた。

 モブゴンの他の竜使い達は酒場に行って酒を飲んでいる。

 彼は酒を飲むよりドラゴン達と一緒にいたかった。



 沢山のドラゴン達が集まりだし、モブゴンに次から次へと甘えだす。

 他の竜使いにない力をモブゴンは持っていた。 

 それがドラゴンと気持ちを通わせる事が出来るという事。 

 それは言葉ではなかった。

 まるで気持ちが伝達されるようにドラゴンの気持そのものにモブゴン至ってしまう。



 それは突如起きた。

 空が輝きだした。

 暗闇の空に1本の筋が出来る。

 その筋は光輝く白色と黄色を混ぜたようであった。


 

 眼の前の焚き火がじゅぽっと音を立てて消えた。 

 そこに立っていたのは、とてつもなく小さいドラゴンであった。

 そのドラゴンは2足歩行しており杖をつついていた。


 顔そのものはドラゴンだが、何かが違って見えた。


「まさか」


「その通りじゃ、わしは竜の神じゃ」


「嘘だろ」


「嘘ではない、お主に頼みがある」


「それはなんですか」


「この竜の牧場にいるドラゴン達を救ってくれ、ここにいるドラゴン達は竜の遺伝子を持っている。いつか竜が生まれるかもしれんのじゃ」


「それは真ですか」


「そうじゃ、じゃが、敵はすぐ側まで来ている。さぁ、決断の時じゃ」


 モブゴンは生唾を飲み込むと、眼の前にいた竜の神は光の結晶となってキラキラと消滅していった。


 先程まで消えていた焚火が再び燃え盛った。

 周りにいるドラゴン達はこちらをじっと見ている。


 頭をぽりぽりと掻きながら、モブゴンが立ち上がるのと同時に、爆発が轟いた。


 空を飛翔する沢山のドラゴン達、彼等はこの国の生命線である竜の牧場を破壊するつもりだろう。


 いつからだろう、ひたすらドラゴン達の世話を続けて、自分の国の名前を忘れ、沢山の敵の国の名前を忘れる。


 ただ言えるのは人間の戦いにドラゴンを巻き込んでいるという事。

 巻き込まれたドラゴン達は文句を言わず人間の為に戦ってくれるのだ。



 頭の回転が回った。

 モブゴンは決意すると。


「皆逃げるぞ」


 その叫び声を上げた。


 竜小屋という竜小屋に拘束されているドラゴン達を解放していく。

 ドラゴン達は不思議そうにこちらを見ている。


「逃げるぞ」


 そう叫ぶと、どうやら意思が伝わったようだ。

 ドラゴン達は咆哮を上げる事をしない、そうすれば国の奴等にバレる事を理解している。 

 ドラゴンとはとても賢い生き物なのだ。


 100体くらいのドラゴンを引き連れ、モブゴンは入り口の扉を開いた。

 偶然そこにやってきた見張りの兵士、彼は爆発された小屋を調べに来たのだろう。

 モブゴンと目が合うと。

 彼は即座に理解して、弓を背中から抜きざま、矢を放った。

 矢はモブゴンの右肩に突き刺さった。


 あまりの激痛に悶えると。



「さぁ、ゆくんだ。皆は自由だぞ」


 

 待ちきれなくなったドラゴン達は咆哮を上げた。

 なぜ咆哮をあげたのかは理解出来るモブゴンが怪我をしたので心配したのだろう。

 次々とやってくる兵士達。

 その頃にはドラゴン達は森に到着してドラゴンの谷に帰るだろう。


 1体のドラゴンがふらふらしているモブゴンを背中に乗せると、走り出した。


「いいのか、ドラゴンは選んだ相手でないと背中に乗せないという話だが」


「ぐるぁあああああ」


 そのドラゴンは黒と白をしていた。

 まるで自分そのものだった。


 ドラゴン達は兵士達と絆を結ばせ、兵士達がその背中に乗って戦う。

 絆を結ぶ事が出来ないなら、ドラゴンを殺す技術を学ぶ。


 モブゴンはドラゴンを殺す知識もあるし、癒す知識もある。さらにドラゴンに乗る知識もあるが、ちゃんと絆を結んでドラゴンに乗った事はない。

 

 今回のドラゴンは絆を結んでいないのに、乗る事が出来た。


 だからモブゴンはとても謎であったのだ。


 

 ドラゴンがいないと悟り、彼等は馬に跨って、こちらを追跡しだした。

 後ろから矢が飛来してくるが、ドラゴンの翼が守ってくれる。


 右肩がおかしかった。

 つまりあの兵士は毒を使っていたのだ。

 毒が体中に回るのを感じながら、意識が混濁してくのを感じながら。

 きっとモブゴンは死ぬのだろうと思っていた。


 

 黒と白の色をしたドラゴンは泣きそうな鳴き声を上げていた。

 そのドラゴンはモブゴンが死にかけていると悟ったようだ。



 ようやくドラゴンの谷に到達した。

 そこに辿りつくにはドラゴンの許可が必要であった。


 人間達はドラゴンの谷に近づくと数万体のドラゴンにより殺される。

 なので人々はドラゴンの谷に近づく事が出来ない。

 


 だから神聖な場所とされるドラゴンの谷に到達する事が出来たモブゴンは選ばれたのだ。


 

 そこにいたのはドラゴンと竜であった。


 竜はドラゴンの2倍の大きさはしている。



「滅びていなかったのだ」



 モブゴンはそれを凝視していた。

 竜はぺろりとい頬っぺたを舐めてくれる。


 

 そして1体また1体と咆哮を上げる。

 体がびりびりと震える中、体の感覚がなくなっていく。

 これが死だという事を理解した。


【あなたはここにいては助からない、別な世界で助かって、いつか戻ってきて一緒に世界を変えようぞ、我はフレンズマッシュ】


 体が光に包まれていく。

 先程まで乗っていたドラゴンがぺろりとほっぺたを舐める。 

 


「くすぐったいなぁ」


 モブゴンは幸せであった。

 その時光が爆発した。


 そこにいた光は消滅していくと、そこにモブゴンの姿は無くなっていた。

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