マインドハック 224

春嵐

224.

 2と、2と、4。


 224。そう発話する。


 それだけで、相手の思考をハックすることができた。


 感覚としては、脳と眼の間、ちょうど中間のあたりに入り込まれた感じ、らしい。


 あくまでハックするだけ。追い出されることもあるし、うまくいかないこともある。


「いいよな、かっこよくて」


 助手席。


「起きてたの」


 夜。


 郊外の幹線道路。


 雨。


「マインドハックってさ。名前もそうだし、必殺技な感じがあって」


「いや、そういう意味で名前つけたわけじゃないけど」


「ハッカーだぜ。それも、人の頭のなかに侵入できる」


「勘違いしてるよ」


「あ?」


「そういう、なんかかっこいい、操る、みたいなハックじゃないから」


「じゃあなんなんだよ」


「なんだろう、ええと、パクり野郎?」


「パクり?」


「金のためなら何でもやるやつ的な。それに、心のためならなんでもやるから、くっつけて、マインドハック」


「よくわかんねえな」


「まあとにかく、マインドをかっこよくハックする、みたいなほうの意味じゃないから。もっとどうでもいい、格好わるい意味」


「なあ、おまえ」


「224」


「おい、いきなり」


 彼の頭のなかに入った。


 何か、見える。


 大きな、感情。


「急にハックするなよ。心の準備ができてない」


 追い出された。


「いや、ちゃんと意味を理解してくれたかなって」


「わかったよ。わかった。ハックする前にちゃんと言え」


「言ってるじゃん。コード。数字3つ」


「その前になにか一言二言挟めって言ってんの。ハックします、とか」


「ハックします」


「だめです」


「ほらあ。だめじゃん。ハックさせてよ」


 さっきの、巨大な感情。


「見たか?」


「見たっていうか、なんか、大きな感情があったけど。なにあれ。もしかしてトイレ?」


「トイレか」


「我慢すると身体によくないよ。どこかに停めようか?」


「トイレか。そうかあ」


「お、いいところに駐車エリアあるよ。あそこに停まろう」


 車を停めて。


「行ってらっしゃい」


「雨だけど」


「傘あるよ。後ろの席」


「いやいい。準備ができた」


「ちょっと。車の近くでしないでよ」


「違えよ」


「なによ」


「ハックしてみろ。心の準備ができた」


「224」

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