第3話 アナーキーインザ学校
「お、俺が村田紗奈と……バンドを?」
「そうよ、何か問題でも?」
村田姉は事も無げに言う。そこで俺ははっと気付いた。ここで余り取り乱すと、俺が村田妹のことを好きなのがバレるかもしれない。ここは冷静に、冷静に。
「ま、まあいいですよ。ええ。問題ないです。全然。まったく。」
「よし、じゃあ決まりね。あ、一応紹介しとかないとね。こっちが沢渡まどか。ドラムが叩けて、廃部寸前だったこの軽音楽部の部長。でも私と同じ2年よ」
「よろしくねー」
軽い感じで挨拶された。さっきからのやり取りをこの人はにやにやしながら見ていたから性格は軽そうだ。苦手なタイプだな……。でも顔は凄い整ってるし、少し長めの髪を綺麗に流していてとても日本的な美人だ。何でドラムなんてやってるんだろうと不思議になってしまう。
「あ、よ、よ、よろしくお願いします」
やべ、変なとこで俺のコミュ障が出そうになった。折角村田妹とバンドやれるチャンスだぞ。しっかりした印象を与えておかねば。
「んで。こっちが安生カスミ。キーボーディストね。私はパンクが好きだけどパンクにキーボードなんているの?なんていう奴は論外。解散しちゃったけど、ハイロウズの白井さんの爪の垢でも煎じ詰めて煮えたぎる湯を無理やり飲ませたいわね」
「よろしくお願いしまーす」
こっちはおっとり系だな。何か天然臭がする。でも髪はセミロングでカチューシャを付けているのがポイントか。どっちにしても可愛らしい。しかも多分……一番巨乳だな。……はっ、俺は何を。いやいや思春期男子としては至極まっとうなことを考えただけだ。うん。よし、今度はキョどらないように……
「お、おねがっいしまあう」
……って一番キョどっちゃったーーーーー!ま、まあいい。これからだ、これから。
「んで私が村田加奈。ベースを弾くわ。好きな音楽はさっきも言ったけどパンク。あんた、このご時世、高校生がハイスタ弾けるってだけで私の中では貴重な存在だからね。仲良くしよっ!」
「は、はい、お願いします」
よし、こっちはキョどらなかったぞ。しかし、挨拶だけで俺のコミュ障が出そうになるとは、美少女たち……恐ろしいぜ……ん?
そういや何でこんな美少女が二人もいたのに廃部寸前だったんだろう。顔目当てでも男子が群がりそうなのに。
「あ、あの、軽音楽部って、何でこんなに部員少ないんですか?」
……沈黙。
あれ?俺空気読めてなかった?……でもしばらくすると沢渡さんが答えてくれた。
「数年前はかなりの人数がいたらしいわ。アニメの影響だと思うけど、女子も男子も結構いたみたい。だけど、時間が経つにつれ、段々人が少なくなっていったみたいね。とある先輩が分析してたけど、皆プレーヤーじゃなくてリスナーになっちゃったみたい。今の音楽業界を見ても、フェスには人は集まるけどライブハウスは閑散としてるっていうしね。まあ、そんなこんなで、私一人細々とドラム叩いてたって訳」
ん?一人?
「あれ、安生さんは……」
「ああ、カスミは昨日加奈と一緒に入部したばっかり。加奈ってば自己紹介の時に、『音楽できる奴は集まれ!』とか言ってさ。まあ可愛いから男子が群がってたけど、加奈とちょっと話をするだけで、皆引いてったわ。そんな中でカスミが『キーボード弾けるよー。でも一番好きな音楽はSEXPISTOLSだけどねー』なんて言ったもんだから、速攻スカウトして私のところに来たって訳。まあカスミとは元々友達だったんだけどね。でも音楽の話をしたことなんてなかったから意外っちゃ意外だったけど」
キーボード弾けるのにピストルズ好きとは……カスミさんやはり天然臭がする。
「で、お、俺は……」
俺がなぜスカウトされたかは村田姉が説明してくれた。
「あんたは、私がこの学校に転校してきたときに、先生に聞いたの。『音楽できるひといませんか?』って。そしたら『ああ、一年に父親がミュージシャンの子がいるよ』って教えてくれたからさ。いやーでもこんな逸材だとはねえ……」
「お、お褒めに預かり、光栄です……」
「よし!決めた!あんた、毎日昼休みは部室でご飯食べること!バンドの話もしたいし、あんたのギターももっと聞きたいしね。勿論放課後は毎日集合よ。紗奈にもそういっとかなきゃ」
え、ちょ、ええええ?ま、まさか、毎日村田紗奈と昼飯が食べられて、放課後も一緒に過ごせんの?何その天国モード。あ、いや、待てよ。よく考えたら俺村田妹と喋ったことねーぞ。何を話せば……まあ音楽の話か。でも、あいつの好きな音楽何て知らないし……、って聞けばいいのか。……聞けるかー?この俺が。
ま、まあ色々不安だが特に異論はないな。よし、この機会にコミュ障も直して、青春を謳歌するんだ!
急展開だが、このチャンスを逃す手はない!どうせこのままいけば暗黒の高校生活だったんだ。チャンスの神様はいつでも微笑んでくれるわけじゃない。このチャンスはものにするぜ!
あれ?でも肝心の村田妹の承諾は得てないんじゃ……
「あの、村田先輩、妹さんはOKなんですか?ボーカルの話」
「ああ、妹は私が言えばNOとは言わないわ。それは保証する」
よっしゃー!
こうして、俺のぼっち生活から一転、花園生活が始ま……るのかな?ええい、頑張れコミュ障の俺!
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