2・マネキンだよね
「弦音ってあっち系だったのか?」
休み時間になると、朝矢に事情を聞こうと席から立った瞬間にクラスの友人たちに捕まってしまった。
「違うよ。俺は健全だ」
「でも、転校生ばかり見ていただろう?」
「確かにあの転校生はきれいな顔しているけどさ。男だぜ。男」
どうやら、はたから見たら弦音が転校生に熱い視線を向けているように見えていたらしい。
いやいや、そんなつもりはまったくない。
気になるだろう。
どうみてもマネキンにしか見えない。
そう言いたいのだが、“金太郎”の説明を受けた弦音がそれを告げられるはずがない。
自分にだけはマネキンに見えるけれど、他の連中からはれっきとした人間に見えるのだ。
転校生の周りには、クラスメイトが集まっている。
その中に樹里の姿もある。樹里とその友達の麻美が話しかけて、それに緊張しながら答えていることは声でわかるのだが、なにせまったく表情の動かないマネキンにしか見えない弦音には明白なものを知るすべを持たない。なによりも手足はロボットのようにぎこちなく動くものだから、弦音には気持ち悪くて仕方がなかった。
どうなっているのか。
“金太郎”に聞いてみたが「俺は知らねえ。あいつに聞け」としか言ってくれない。
やはり聞くしかないのだが、友人たちから逃れられないまま、次の授業の開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。
もう仕方がない。
昼休みにでも聞いてみるか。
とりあえず、弦音はあきらめることにした。
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