第334話 初日終了
師匠と話した後は、やっぱり救護テントに戻りました。
手持ち無沙汰だと何とも言えなくて……。
……まあ、ナース服だったんですけど……。
最近、何の違和感もなく、女性の衣装を着るという発想が出るようになっている時点で、ボクの男としてのあれこれはなくなりつつあるということを自覚する。
前向きに生きると決めた時点で、そうなるのは遅かれ早かれ来ていたことだと思うし、今更だけどね……。
途中、美羽さんたちとも会って話したんだけど、どうやら来れるのは今日と明後日みたい。
明日はお仕事だそうで。
まあ、声優さんだしね。しかも、女委曰く、売れっ子声優さんらしいので、仕方ないと言えば仕方ないよね。
ボクだって、無理に来てください! とは言えないもん。
その人にはその人の都合があるということで。
それに、最終日は来てくれるとか何とか。それは素直に嬉しいな。
……そう言えば、美羽さんたち、なぜか何かを企んだような顔をしていたような……。
ちらっと顔を合わせた学園長先生も、ニヤってしてたし……。何か企んでるのかな?
学園長先生のことだし、何か仕掛けを用意していても不思議じゃないから、今更調べたりはしないけど。
そんなこんなで、球技大会初日が終了。
今日の戦績と言えば、サッカーではボクの行動によって、二回戦目と三回戦目は不戦勝。
準決勝進出となった。
他のみんなの方は、男女共にバスケは準決勝進出で、態徒の方は、惜しくも三回戦で敗退してしまったようです。
女委は……なぜか勝っちゃった、だそうです。
試合中、男子の人だったら、なぜか前かがみになっていたのでその隙を突いて勝利したとか。女の子相手の場合は、なぜか四つん這いになったから、やっぱりその隙を突いて勝利した、とのこと。
うーん、なんでそうなったんだろう?
その話を聞いた、未果たちは一瞬で納得顔になったんだけど、ボクはどうしてそうなったのか理解できませんでした。
それから、メルたちの方は、結構善戦だったそうです。
メルとクーナの二人は今日は出場種目はなかったので、みんなの応援に行ったりしてたみたい。
リルはあの後準決勝進出まで行って、それはミリアとスイの二人も同様でした。
ニアはリルに負けてしまっただけなので、もしリルと当たっていなかったら、きっと決勝戦まで行ったと思います。
ちょっと残念。
できるなら、ワンツーフィニッシュを決めてほしかったものです。うん? フィニッシュで合ってるのかな? まあ、いいよね。
でも、くじ運が悪かったなぁ……。
来年に期待だね。
やっぱり、異世界組である妹たちは、さすがにちょっとずるかったかな?
でも、あのレベルなら、こっちの世界でも不思議なことじゃないし、ちょっと運動神経がいい子供としか思われなさそうだから、大丈夫だよね。
いざという時は……ボクが何とかしよう。
可愛い妹たちの為なら、何でもします。
さすがに、犯罪行為はしないけど。
……グレーゾーンなことはしちゃうかもしれないけど……まあ、うん。なるべく、できるだけ、やらないようにしよう。
みんなで集まってから、家に帰る。
別に友達と一緒に帰ってもいいんだよ? って言ってるんだけど、
「ねーさまがいいのじゃ!」
「イオお姉ちゃんがいいです!」
「イオ、おねえちゃん、がいい……!」
「イオねぇがいいの!」
「イオお姉さまがいいのです!」
「……イオおねーちゃんがいい」
だそうで……どうやら、ボクと一緒に帰りたいらしいです。
みんなボクにくっつくようにして歩くものだから、ちょっと歩きにくい。
……でも、ボクとしてはすごく幸せなので、全然いいんだけどね。
ただ、ボクにべったりすぎて孤立しちゃわないか心配。
今は困らないかもしれないけど、これが中学生になっても続くようだったら、ボクもちょっとは言っておいた方がいいかも。
……言えるかはわからないけど。
さて、みんなで仲良く家に帰ったら、そのままお風呂へ。
五月下旬から、結構暑くなり始める。
その上、球技大会っていう一種のスポーツ大会があったことを考えると、当然汗はかく。
女の子になってからというもの、なんだかそう言う部分が気になるようになっていて、ちょっと汗をかくだけでお風呂に入らないとそわそわしちゃうことがある。
あと、なんとなく自分が汗臭くないか心配になっちゃったりとか。
一応、男の時からそう言うのは少しは気にしていたけど、女の子になってからはそれ以上に気になるようになった。
うーん、やっぱり女の子ってそうなのかな?
それはともかくとして、お風呂。
引っ越したことにより、お風呂も前以上に広くなってたりします。
前の家もそれなりに広くて、お風呂もそこそこ大きかった。だから、ボクとメル、師匠の三人で入れたわけで。
でも、みんなでとなると、さすがにそれは無理。
だけど、今回引っ越した家は、お風呂は前以上に大きかった。
それに、みんなが小さいとあって、七人で入っても問題はないです。
と言っても、今の状態で問題ないわけであって、成長したらそうもいかないと思うけどね。
みんな、まだまだ子供だから、いずれ成長すると思うし。
ボクは……できればボク自身の身長が伸びてほしい。
欲を言えば、大人状態になった時の身長くらいはほしい。
これでもし、みんなの方が身長が高い、なんてことになったら、すごく複雑な心境になるんだろうなぁ……。
姉よりも背が高い妹……あ、でも、それはそれでいい、かも?
そんなこんなで、お風呂に入る。
「ふぅ~~~……」
湯船につかって一息。
「ニア、儂が背中を流すぞ!」
「ありがとうございます!」
「じゃ、じゃあ、メルおねえちゃん、は、わたしが……」
「ありがとうなのじゃ、リル!」
「……なら、わたしがリルの背中を」
「あ、ありが、とう、スイ……!」
「では、私がスイの背中を流すのです!」
「……さすが、クーナおねーちゃん。ありがとう」
「じゃあ、ボクがクーナねぇだね!」
「ありがとうなのです、ミリア」
「じゃが、それだとミリアの背は誰が流すのじゃ?」
「じゃ、じゃあ、私が流します。こう、丸くなれば、できると思います」
「おお! 名案じゃな!」
という風なやり取りが目の前で繰り広げられていました。
なにこれ、和む……。
すっごく癒される光景だよぉ……ボクの妹たちの可愛さは世界一だと思います……。
思わず、頬が緩む。
可愛い妹たちの流しっこって、こんなにいいものだったんだね……。
こうやって、広い浴槽に足を延ばしてリラックスしながら、メルたちの可愛らしい行動を見て癒される。
なんて、贅沢なんでしょう。
そもそも、可愛い妹がいるという時点で、かなり幸せなことだと思うのに、こんなに癒しな光景が広がっているとなると、かなりの贅沢だよね……いいね、こう言うの。
一人っ子だったから、余計にそう思えるのかな。
それにしても、みんなと出会った次の日にも思ったことだけど、小さいとはいえ、女の子には変わりないのに、本当に何も思わなくなってるなぁ……。
男の時だったら、きっと顔を真っ赤にしてなるべく見ないようにしていたんだろうけど、今のボクはただただ微笑ましい光景にしか見えない。
精神的な意味で言えば異性の小さな女の子の裸を見ていることになるんだけどね。
うん、でも、可愛いからいいよね。
可愛ければよしです。
なんて、一人和んでいると、みんなが浴槽に入ってきた。
小さいおかげで、七人全員で入れる。
いいね、大きいお風呂。
「おー、やっぱり、ねーさまのおっぱいは浮くんじゃな……」
「イオねぇ、どうやったら、イオねぇみたいにおっきくなるの?」
しばらくお風呂に入っていると、いきなりそう訊かれた。
「う、うーん……」
どう答えようか……。
一応、みんなはボクがもともと男だったことは知ってるんだよね……。
向こうでは勇者と言われていたボクを知っているくらいだったし、引き取ると決めた次の日にある程度教えてたし。
そんなわけで、ボクはみんなとは違って、100%天然な女の子じゃないんだよね……。
だから、なんでここまで大きくなったかは、自分でもわからない。
でも、なぜかみんなキラキラした目で見てるから、それらしいことを言わないと……!
「好き嫌いせずよく食べて、よく寝て、よく運動すること、かな」
「「「「「「おー」」」」」」
あ、納得するんだ、それで。
でも、間違ってない、よね? 多分。
……以前女委が、
『胸が成長するかは、遺伝にかかってるよ☆』
って言っていた気がするけど、大丈夫だよね。うん。
「でも、みんなは胸を大きくしたいの?」
「儂はどっちでもいいのじゃ」
「私は……ちょっとは大きくしたい、です」
「わ、わたしも……ちょっと……」
「ボクはメルねぇと同じ!」
「私はサキュバスなので、大きくしたいのです!」
「……わたしは、救護テントで言った」
「な、なるほど……」
メルとミリアの二人だけはどっちでもいいみたいだけど、他の娘たちは大きくしたいみたい。
クーナとスイの二人はサキュバスだから、っていう種族的な理由だけど。
そんなにいいものじゃないと思うんだけどなぁ、大きいのって。
ただ、ふと思うんだけど……種族的なあれが原因なのか、クーナとスイの二人を見ると、そこそこ胸が膨らみ始めてるんだよね。
他のみんなも二人ほどではないとはいえ、ちょっと膨らんでるように見えるし……意外と、発育がいい、のかな、みんな。
どうなんだろう?
なんて思っていたら、
くぅぅ~~~……
「……お腹空いた」
不意に、スイのお腹が鳴り、手でお腹を抑えながらそう呟いた。
「今日はそれなりに動いたからね。それじゃあ、もうちょっと浸かったら上がろっか」
そろそろいい時間だし、お腹も空くよね。
「「「「「「はーい(なのじゃ)!」」」」」」
お風呂に入って疲れを癒した後は、夜ご飯。
今日は母さんが作ってくれた。
母さんの料理は美味しい。
なんと言うか、温かさがあるというか……すごくほっとする。
おふくろの味、っていう言葉があるけど、母さんの作るご飯本当にそんな感じ。
それはボクだけじゃなく、みんなもらしいけどね。
母さんの料理をいつも美味しそうに食べている。
「ふふっ、こうやって美味しそうに食べてもらえるのは、作り手として嬉しいものよねぇ。ね、依桜?」
「うん、そうだね。……って、ミリア、口の周りについてるよ?」
ミリアの口の周りにソースが付いていたので、ティッシュで拭う。
「ありがとう、イオねぇ!」
「どういたしまして」
「……お姉ちゃんしてるわねぇ」
「だなぁ。父さん、まさか依桜がここまで妹好きになるとは思わなかったぞ」
だ、だって、みんな可愛いし……。
それに、ボクが妹であるみんなを好きになるのって、そんなに意外かな?
そうでもないと思うんだけどなぁ……。
夜ご飯も食べ終わり、少しする頃にはみんながうとうとしだした。
こっちに来て初めての学園行事で、スポーツ系だったからね。
今日種目に出なかったメルとクーナの二人も、学園内を歩き回ったり、友達の応援をしていたみたいだし、疲れるよね。
こっくりこっくり舟をこぎだしたのを見てから、ボクはみんなをいつもの場所に連れて行って、この日は就寝となりました。
ちなみに、半分寝てる状態でも、ボクに抱き着いて寝るのは変わらないみたいです。
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