009 PTメンバーの募集

 次に龍斗が目を付けた魔物はブラックライオンだ。


 その名の通り漆黒のライオンで、動きは鋭く、獰猛だ。これまで狩っていたベビードラゴンジュニアとは違ってこのライオンは数が少なく、棲息地には1体しかいない。その代わり強さは別次元で、倒すには束になってかかる必要がある――俗に「ボス」と呼ばれるタイプの魔物だ。


 龍斗がブラックライオンを選んだ理由は二つあり、一つは彼の得意戦術である超特化〈チャージキャノン〉による一撃必殺と相性がいいこと。そしてもう一つは、ブラックライオンが他の冒険者に人気がないからだ。


 冒険者が好む狩場の条件は三つ。

 1.ギルドから近い

 2.敵が手強くない

 3.報酬が美味い


 ブラックライオンの場合、ギルドからの距離はそこそこ近くて報酬もそれなりだが、なにより強すぎるという点で嫌われていた。


「さて、ここからが本番だな」


 ギルドに着いた龍斗は、受付嬢に頼んで一枚の用紙をもらう。それはPTメンバーを募集する時に使うものだ。


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■募集内容

【討伐対象】ブラックライオンの手前の雑魚

【討伐場所】八王子城跡 地下大空洞

【募集人数】2~4人

【要求レベル】30以上

【性別】不問

【期日】本日14時まで

【一言】ボスとの戦闘は想定していません


■募集者情報

【名 前】陣川 龍斗

【性 別】男

【レベル】50

【PT人数】1

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 龍斗は記入した募集用紙を受付嬢に渡した。


 受付嬢はPCを使って、募集条件に該当する全て冒険者に情報を送信する。冒険者はスマホの専用アプリでそれを受信し、PTに参加したいのであればギルドで直接伝えるか、アプリを使って参加希望を表明する仕組みだ。


(この条件なら誰か来ると思うけど、果たしてどうなるかな)


 龍斗は募集内容に嘘の記載をした。


 ボスとの戦闘を想定していないという点だ。本当はボスと戦う気しかなかった。だが、そんなことを書くと応募する人間がいない。それに、ボスとの戦闘は自分一人で行う予定だった。彼が仲間に求めるのは道中の雑魚掃除だけだ。なので募集内容の嘘はあながち嘘とも言い切れなかった。


 そんな彼の企ては奏功した。


「陣川龍斗って誰ー? PTの募集を見て来たんだけどー!」


 テーブル席の並んでいるスペースのど真ん中で、元OLの宮島仁美みやじまひとみが声を上げた。すらっとした体型と先端がふわふわしたライトブラウンのセミロングが特徴的で、年齢は龍斗より一回り近く高い20代半ば。腰にレイピアと呼ばれる細身の剣を装備している。


 仁美の隣には、龍斗より1つ下のエルフが立っていた。名をポポロといい、腰まで伸ばした美しい銀色の長い髪をしていて、耳はピンと尖っている。外見がどう見ても幼女なのは、彼女が人間ではなくエルフだからだ。


(剣士とエルフ……どちらも女か。見た感じ頼もしくないが、雑魚掃除くらいなら任せられそうだな。せっかく応募してくれたのだからきちんと応じないとな)


 龍斗は立ち上がり、仁美とポポロに近づいた。

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