プール・サイドの人魚

⑴セイシュン

わたしたち、実はもう青春なんてできないのかもしれないよ、なんて言いたくなってしまうような夕焼けが、本当に綺麗で苛々するほど燃えていたんだよ。友達、学院祭、体育祭とか、そんなものは全部全部青春風で、じゃあさ、青春ってなんなんだよ、なんて思ってしまうんだ。着にくくてすぐ裏返しになる夏服のリボンとか、他校の女子よりも長くて光にちょっと透ける夏スカートとか、すぐ破れる短い靴下だとか、そんなものはみんなみんな燃えてしまえって願ってしまうの、だって、こんなの一瞬でしょ。青春風にわたしたち、囚われちゃうよ。楽しいねって笑うのも、どこかであれ私、今、青春しちゃってんじゃんって笑えるのはなんでなんだろうね。青春だとか友達だとか、さらりと使えてしまうけれど、それって本当は何なんだろうね。わたしだいきらいなの。どうせわたしたちのこの全部、百年後にはなかったのと一緒なんだってわかっちゃったから。意味なんていらないとか嘘だよ。意味が欲しいよ。だってわたしたちの生きてる今の証がなくなっちゃうんだからさ。わたしたち、なんのために今を生きてるの、意味なんてないんだよ、そう、そうだよ。なんだよ、結局自分本位でいるんじゃないか。アームカットの白い痕を残っちゃったね、なんて触れられるの、あなたのそれは自己愛故で私を利用してるだけなのよ。って思っちゃって、そんなのじゃあわたし、全然救われないんですけど、とか言うとさ、じゃあお前のためじゃないって陰で言われたりするんだから、よくわからないや。じゃあこのまま青春風のどこか寂しい夏の終わりみたいな、そうだね、今日の午後6時15分みたいな日々を紡いでいくのかな。


2020.09.10

Thu

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