第3話 白騎士の少女と冒険者ギルド

 

 白鎧の女の子は恐怖でガタガタと震えながら燃え盛る草原を見つめていた。


「ねえ!」

「ひゃいっ! なんでしょうかッ!!」

「いやそんなにかしこまらないでよ。」

「はいっ! 分かりました! 失礼しましたッ!!」


 女の子はペコペコと頭を下げる。

 

 ダメだこりゃ。ちょっとやりすぎたなー。


「ここにいるのもあれだし。できれば貴女の国や街に行きたいんだけど平気?」

「わ、私の国にですか......?」


 白鎧の少女は燃え盛る草原の方角をチラリと見てから、ミサキに視線を戻して緊張から唾を飲み込んだ。


「あ、あの。破壊し尽くしたりとかしませんよね?」

「しないよッ!! ......たぶん」

「ひッ!!」



 女の子の案内で街を目指して空を飛んでいると、チラチラと私を見つめてくる視線に気がついた。


「えーと。どうしたの?」

「あっ! すいません!」

「はぁー......。あっ! そういえば自己紹介がまだだったね! 私はミサキ。よろしくね?」

「よ、よろしくお願いします! 私はアリア・ディ・アルバードと言います。アルバード家の三女です」

「なっが!! なんか貴族みたいな名前だね。アリアちゃんでもいい?」

「ええ。一応その。貴族なんですけど......」


 アリアちゃんは困り顔で頬を掻いた。


「おおっ! お嬢様だ! ん? でもなんでお嬢様が戦場に?」

「そ、その貴族といっても子爵家でして......。それに小さい国なので戦力に余裕がないんです」

「あー。あの黒鎧の国と戦争中だもんね」

「黒鎧って......。ロクサンヌ帝国のことをご存知じゃないんですか?」

「えっ、有名なの?」

「えぇ......。一体どちらから来られたんですか?」

「んっー。お爺ちゃんのところから?」

「答えになってないじゃないですか!」

「あはは......」


 アリアちゃんと話していると、上空から城壁に囲まれた西洋風の街並みが見えてきた。


「おっ? あの遠くに見えてきたのがアリアちゃんの街?」

「えっ? あっはい。そうですね。あっという間に着いてしまいましたね......。馬で3日もかかる距離だったのですが......」

「このまま街に降りればいいの?」

「やめてください!! 大騒ぎになりますよ!」

「えぇ......。面倒くさいなぁ」


 アリアちゃんがうるさいので街から少し離れた草原から歩いて向かうことにした。


 でも少しアリアちゃんと打ち解けた気する。異世界でボッチは寂しすぎるもんね! アリアちゃんとは仲良くしていきたいものだ。


 城壁には門兵さんがいたけど、アリアちゃんのおかげでなんの問題もなく街に入ることができた。


 街の中は石造りの西洋風の街並みが広がっており、通行人と馬車を引く荷車で賑わっていた。


 へー。中世に近い文化レベルなんだなぁ。馬車なんて初めてみた。


「私は一度お父様に報告をしてきますね。ミサキさんはこの後どうされるんですか?」

「んー。特に決まってないけど、街の中を見て回ろうかなって思ってたよ」

「そうでしたか。もし良ければ助けていただいたお礼がしたいので、我が家で一緒に夕食なんてどうですか?」

「おおーっ! ぜひぜひ! お金もなかったから助かるよ!」

「で、ではぜひ我が家にお越し下さい!! そうだ。これを渡しておきますね」

「これは?」

「アルバード家の紋章です。これを見せれば我が家にくるのに迷われることもないと思います」

「ありがとう。じゃあ街を少し見て回ったらお邪魔するね。街の人に聞けばアリアちゃん家もわかるよね?」

「ええ。万が一の時は城門にいた門兵に聞いてみてください」

「りょーかい」


 アリアちゃんと別れて街の中を見て回る。


 美味しそうな屋台や雑貨屋風のお洒落なお店など、この街には生活するのに十分な環境が整っているようだ。


 だけど......。


 お金がないから何もできないじゃん! このままじゃせっかく異世界にきたのに買い食いすらできないよ!!


「はあ......。少し早いけどアリアちゃん家にでも行こうかな」



 街の人に聞いたら、アリアちゃんの家はすぐに見つけることができた。庭つきの大きくて立派なお屋敷だ。さすが貴族様だ。


 アリアちゃんの家の門の前に、門兵さんが二人いたので話しかけることにした。


「止まれ! 怪しい奴め。貴様何者だッ!!」

「えーと。アリアちゃんに呼ばれたんだけど、アリアちゃんいますか?」

「アリアお嬢様が貴様のような者と知り合いなわけがなかろう。いい加減なことをいうな!」

「えぇ......。あっ! アリアちゃんからこれを渡されたんだった。これで信用してもらえる?」


 門兵さんにアリアちゃんにもらったアルバード家の紋章をみせた。

 

 門兵さんはジーッと紋章を見つめると、馬鹿にしたように鼻で笑った。


「はっ! そんな偽物でこの私が騙されるわけがなかろう。ほら、もうさっさとこの場から立ち去れッ!!」


 話が違うじゃないか! せっかく来たのに門前払いなんて酷すぎるよ!!



 まぁゴネても仕方ないのでアルバード家は諦めることにした。

 

 街の中を歩きながらこれからどうしようか考えていると『冒険者ギルド』と書かれた看板が目に止まった。


 おおッ!! 異世界の定番! 冒険者ギルドだ! ここならお金稼ぎができるかもしれない。


 私はドキドキしながら冒険者ギルドの中に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る