第124話 比較

ユウゴとケイスケ、あゆみの4人で話した後、2階に行き、シャワーを浴びてから寝室に入ると、美香は気持ちよさそうに寝息を立てていた。


『ま、いっか』


そう思いながら美香の隣に潜り込み、抱き寄せながら眠りについていた。



翌朝。


アラーム音で目が覚めると、美香の姿はどこにもなく、1階に降りてもいなかった。


すると美香からメールが来て【一時帰宅しました。 遅刻しないよう気を付けます】とのこと。


返信をした後、1階に降り、ケイスケと朝の準備をしていると、美香は出社するなり「昨日は本当に申し訳ありませんでした」と、深々と頭を下げてきた。


「二日酔いじゃない?」と聞くと、「軽く頭痛いです。 と言うか、私、失礼なことしてませんでした?」と聞き返してくる。


「え? 普通だったけど… 覚えてない?」


「本当に申し訳ありません! 私、アルコールにホント弱くて… 申し訳ありませんでした!」


軽い虚しさを感じながら「いいよ。 なにもしてないから」とだけ。


少し落ち込みながらも1日を過ごし、定時後にはOPの話し合いをするばかり。


原作の大ファンなケイスケが先導を切り、カット割りや使用するコマを指定し、美香やユウゴ、俺の意見を取り入れて作り続けていた。


『美香が先導を切るんじゃなかったっけ?』と思ったけど、美香はそれほど気にもしていないようで、真剣にケイスケの話を聞いていた。



連休前と言うこともあるせいか、週末になると、ユウゴはリュックを背負って出社し、美香もボストンバックを抱えて出社してきた。


ケイスケはスーツではなく、私服で大きな荷物を抱えて出社し、始業時間前にスーツに着替えていたんだけど、大高は不審がるような目で見るばかり。


始業時間を迎え、作業をしていると、大高が痺れを切らせたように「どこかに行くんですか?」と聞いてきたけど、「業務時間中の私語は慎め」とだけ。



定時後、作業を終えてすぐ、後片付けをしていたんだけど、大高は更衣室に入ったまま出てこようとしなかった。


そのせいで、美香が着替えられないし、3人とも荷物を取れない状態。


2階で私服に着替え、荷物をもって1階に降りたんだけど、大高は更衣室から出てきていなかった。


ユウゴが「早くしろよ」と言っても、大高は「どこに行くか教えなさいよ!」としか言わない。


『なんで上から目線なんだよ…』と思っていると、ユウゴが美香に「弁当買ってきてくんね? 4人分」と言い、美香はユウゴから金を受け取った後、事務所を後にしていた。


それを見た後、ケイスケが「自己中な女って嫌だねぇ…」と、ため息をつきながら言い始め、ユウゴが「ホントだよなぁ。 他人の迷惑を省みない女ってマジ最悪」と言い切ってた。


「美香ちゃんみたいな子だと、つい奢りたくなっちゃうんだけどね」


ケイスケの言葉を聞き、思わず口を開いた。


「結構大変だぞ? この前も二人で飯行ったら『割り勘じゃなきゃダメだ』って、なかなか奢らせてくれねぇしさ。 奢られて当然って感じよりは断然いいけどな」


するとユウゴが思いついたように俺に聞いてくる。


「美香って結構マメだよな? 高級プリン買ってきてくれたし、バレンタインもくれたしさぁ」


「メールとか電話はあんまり来ないけどな。 たまぁに来るんだけど、短時間で済ませようとするし、気遣ってるなぁってわかるよ。 夜中の鬼電とか鬼メールは絶対にして来ないし、事務所に押しかけてくるとかあり得ないよ」


「でも、美香が押しかけてきたら2階にあげるんだろ?」


「当然。 寝室直行だろ」


その後も、美香と大高を比較し、『お前の行動は異常だ』とアピールしながら話し続けていると、美香が事務所に戻り、ユウゴは袋から弁当を出し始めていたんだけど、美香は頼んでいないお茶まで、人数分買ってきていた。


ユウゴはそれを見て「お前ホント気が利くよなぁ…」と感心したように声を上げ、美香はキョトーンとした顔をしていた。

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