ssストーリー(完結後の日常編)

第52話お家デート




 苛立ち。


 私の心の中にある感情はこの一点だけである。


 今現在我が家族は父母妹の全員がそわそわと浮き足立っており、そして全員余所行きのようなファッションをしている。


 当然母と妹も休日の昼間、出かける予定もなく今日は一日中自宅にいるというのにばっちりと化粧と言う名の戦闘服を着こんでいるのがはっきりと言って違和感でしかなく、そこはかとなく気持ちが悪い。


「てか、出ていきなさいよ」

「なんでよ? 出て行こうが行かまいが私の勝手でしょ? お姉ちゃんが決める事じゃないじゃん」

「あら? 私は今日何故か家でゆっくりとしたい気分なのよね」

「と、父さんも、家で過ごしたい気分だな。うんうん」


 こいつら、口を開けば口を揃えたかのような事を宣いやがって。


 何処で今日我が家に私の彼氏である高城水樹が来ることを知りえたのか。


「そもそも昨日は、明日イーオーンへ行くとか言ってたんじゃないの?」

「は? 行くか行かないかはその日の気分によって変わるでしょ? バカなの? お姉ちゃん。 昨日はイーオーンに行きたい気分、今日は行かなくても良いかなって気分なだけっしょ」


 妹は後で殴る。


 絶対にだ。


「そうねぇ、急ぐ用事でもないし明日でも良いかなって思って今日は別に良いかなってお母さんは思ったのよ」

「と、父さんもだぞっ」


 こうもバレバレの嘘を堂々と吐かれると想像以上に腹が立つものなのだなという事が今日この日、私は知ることが出来た。


 後お父さんにはもう少し自分の意見と言うものは無いのかと問いたい。


「それに、今日どうせ水城様が我が家に来るんでしょう? そんなのイーオーンよりも水城様に決まってんじゃん。 そもそも私はお姉ちゃんからどんな手を使ってでも奪略してやるって決めてっし」


 な、何故分かったっ!? 今日この日は、昨日家族がイーオーンに行くと決めたその時より、家族が家を空ける数少ないチャンスを物にするために張り裂けそうな程鼓動を討つ心臓の音を聞きながらスマホで高城に『明日、私の家で遊ばない?』という短い文章を送る為だけに持てる全ての勇気を使い果たして叶ったお家デート、それを家族にバレてしまっては全てが台無しになってしまう為に今この時まで慎重に隠してきた筈である。


「あんたね、何故バレたって顔しているけれど分かりやすいのよ。 昨日の夜は普段しない部屋の片づけをしだすし、今日は普段より気合の入った洋服を着て、普段梃でも起きようとしないのに今日は朝っぱらから起きて化粧を完璧に塗りたくってそわそわとしてたら誰でも、それこそお父さんでも分かるわよ」

「お、おとうさんでもってどういう事だい? お母さん」

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