第49話友情は一生の宝物

そんな時、ミナが美少女コンテストに参加するという内容がクラスの女子の会話が耳に入ってくると同時に俺のスマホからRhineの通知音が鳴る。


そこにはミナから『本日午後十四時、体育館に来て下さい』とだけ書かれていた。


現時刻は十三時半。


指定の時刻まであと三十分である。


行きたい気持ちはあるものの、それと同時に迷惑をかけた俺が今更ミナの元へ行って良いのかという気持ちが無いわけではない。


「どうした?行かないのか?」

「正直な所悩んでいぶへほはぁっ!?」

「馬鹿野郎馬鹿野郎とは思っていたが、ウルトラ大馬鹿野郎まで成り下がったとは見損なったぞっ!!」


その気持ちを、俺の後ろからRhineのメッセージを盗み見ていた木田に正直に話すといきなり、思いっきりビンタされた上に罵倒されてしまう。


「はぁ?意味分からんし、いきなりビンタされる筋合いもねぇよ」

「この子が、山田美奈子がお前の好きな女の子なんだろ?その女の子が今お前の為に勇気を出して美少女コンテストに参加をするだけでなくお前にも会場へ誘うという、その彼女の気持ちを全て理解しろとは言わない。でも童貞である俺達だからこそれがどれ程の勇気が必要な行為であるのかぐらいは理解できるんじゃないのか?」

「……………童貞のアドバイスも偶には役に立つのなっ!!」


そして俺は目的の場所へと走り出すのであった。




高城が出て行ったのと入れ替わりで眞子が教室に入ってくる。


「ねえ?」


普段接点が無いくせにこんな時に限って話しかけてくるとは、空気の読めない女である。


「行かせて良かったの?木田。あんた美奈子の事好きだったんじゃないの?」

「そういう眞子、お前も高城の事が好きだったんだろ?」


見てれば分かる、というのはお互い様だったようだ。


「………友情は一生の宝物、恋愛は一瞬の煌めきって考えだからさ………私にとっては男より友情の方が大事なのさ」

「なるほど、いい女だな。俺も同感だ」

「今頃気が付いたの?そういうあんたも良い男じゃない」

「気付くのがおせーよ。てか処女が分かった風で何を言ってんのか」

「あんたも童貞でしょうが」

「うっせ。余ったたこ焼き食うか?」

「食う」

「しょっぱいな」

「ええ、しょっぱいね」


そんな二人で食べたたこ焼きは、何故だか塩辛く、そしてそこはかとなく青春の味がした。





何処かしらから「くすくす」という笑い声が聞こえてくる。


師匠である眞子のお姉さんからお墨付きをもらった化粧を施してある顔は見えない様にしているのだが、それでも、例え化粧を施した所でこの笑い声が消えないのではないかという不安が付きまとう。


そもそも私自身顔に自信がないのだからしょうがない。

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