第30話我々が求めていた天竺
◆
「あ、暑い………」
「うっさい口にするな。暑いって言葉を聞くだけで不快指数が上がるのよ………」
「ごめん」
「は、早くコンビニでも行って涼みに行くわよ」
「異論などござらん」
そして今現在、世間の学生たちは夏休みを謳歌するこの季節にまるで砂浜に打ち上げられて数十分経った魚の様な二人の女性が指定された集合場所近くのコンビニまで歩いていた。
その姿には女子高生らしさなど微塵も感じられず、道中にぶん投げて来たであろう事が伺える。
これがリア充、例えば石田小百合等であれば己が苦しみなど一切表に出さず女性らしさ、女子高生らしさ、そして自分が可愛くてモテるという武装を身に纏い、道中にぶん投げる等という行為は絶対にしないであろう事が容易に想像できる。
お洒落は我慢とは誰が言った言葉かは知らないが正に自分を着飾るには我慢の上にあるという事を嫌がおうにも理解させられる。
「良い? 汗が不快だったとしてもハンカチやタオルで拭いたらダメだからね?」
「へいへい。 分かっております」
「それとコンビニについたら一応化粧直しはするからね?」
「うへぇー………面倒くさいでござるよ。これが社会人としての常識というのならば在宅ワークでも出来る職場を探すしか………」
「あぁもう、そんなどうでも良い事なんか今は考えなくても良いからっ! 今はとにかくボロを出さない事だけに意識を向けなさいよっ!! あんただってバレたら私の苦労も全てが水の泡なんだからねっ!!」
「師匠にはお世話になっております」
「誰が師匠だ、誰がっ! あぁもう一気に体感温度があんたのせいで跳ね上がった気がするっ!!」
「でも師匠、コンビニは目の前ですぜ?」
「はわぁー、生き返るわー」
「お師匠様っ! 私見つけましたっ!」
「何をよ」
「我々が求めていた天竺はここだったのですっ!! 私はもうここから一歩たりとも出とうございませんっ!」
「馬鹿言ってないでメイク直ししに行くわよ………」
そして、そんなこんなで花の女子高生二人であーだこーだと言い合いながら目的地のコンビニへと到着して時間まで待機、そして二人は戦場へと向かう。
するとそこには高城と女性陣が既に到着しており、植林されている木の木陰で、高城を中心に女性陣が囲み談笑している姿が目に入ってくる。
大丈夫。
大丈夫。
私は女優。
私は年上のお姉さん。
私は出来るOLお姉さん。
「ごめんなさい、みんなより少し遅れてしまったみたいですね」
「お、やっと来たか。 それじゃあみんなに紹介するわ。 これが俺の妻であるミナ」
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