地獄勤務から地上勤務に転勤させられた鬼女
Rabi
第1話
「……帰りたい」
ここは岡山県岡山市 駅の近くのアパートである
家賃が安く生活はできるが綺麗とは言い難い部屋に1人壁に向かってぼやく
今の正直な感想を言うとそれしかない
なぜ帰りたいか そんなものは決まっている
私が地獄で生まれ地獄で育ち出世コースに乗ったいわばエリート鬼女とでも言うべき存在だからである
その辺を上手く説明するためには時間を遡る必要がある
私は今窮地にたっている
今まで幼い時からわざわざ勉学に励み上に媚びを売り何とか手に入れた地位…罪人の罪を決める単純な作業 まあ人の職業として例えるなら裁判官と言うより書類を処理する会社員……のようなものを失いかけているからだ
ただの会社とは桁が違う1度役が決まれば簡単に辞めることなど出来ず例えば肉体労働なら老体になろうと体に鞭を打って働かなければならない……そういう場所だ
地獄の仕事の8割強は肉体労働である
私はそんな肉体労働が嫌だったからデスクワークをめざしたのだ
罪人の罪を決める単純な作業だが素晴らしい の一言に尽きる
もちろん大変な仕事や厄介事はある
しかし基本的に快適な空間で罪人の罪の重さを指数化したポイントを見て罪を決めるだけだ何も難しい事は無い…
そしてその就職戦争に私は見事に勝利した!!!これ程素晴らしい事は無いと人生に価値を確信した
が、人生とは甘くないものだった
出世コースに乗った私は1人の友人と共に誠実にそして厳粛に罪を裁いていた
10円ハゲ親父(閻魔)が全てを変えた 変えてしまった
それはいつも通り業務を行い昼の休憩に入った時だ私はいつもの黒いスーツを見に纏いコーヒーを飲みながら友人と談笑していた。その平和な時間に奴が降臨する
「君ちょっといいかな」
「はい!」
元気よく返事をする 上司には気を聞かせて評価をキープせねばならない。
何故か彼の顔は険しい
「君は罪を全ての罪人を忖度なく裁いている その点はとても素晴らしい
しかし君が提案してくる罪人に対する新しい罰だが……常軌を逸している控えめに言って頭がおかしいとしか思えない
常識が完全に無いとは言わないが足りてない部分が多い よって君には研修に行ってきて貰おうと思う」
……このハゲは何を言っているんだろう?
しかし上司である閻魔が言うのだきっと不備や問題があったのだろう
「具体的にどこがいけませんでしたか?あと研修とは?」
疑問点があればやはり聞いて直さなければならない
閻魔は本当に分からないのかと聞くような顔で提案書を取り出す
「例えばこれだ」
閻魔が小さく咳払いをし私が書いた提案書を読む
「人の世の中にはえすえむなるものがあると言います。なんでも上下関係を相手に示す儀式のようなものらしくこの儀式を行えば罪人も自分の立場を理解し罪に誠実になる可能性が高いのでは無いでしょうか。
しかしいきなりあのような格好をし罪人の前に現れれば罪人はおそらく正気を失うでしょう なので きっこうしばり なるものでしばり男の鬼共の前にほおりだし……
ここまででいいか ここまでで何が問題かわかるかい?」
閻魔は私の目をしっかり見ながら問うてくる
「何も無いと思います 所で研修とは?」
私にとって出世以外に大した興味はない
よって無駄な時間は省かなければならない研修等と言っても今更習う様な事は無いと思っている
だとしたらこれは盛大な時間の無駄だ
何としても避けなければならない
「さっき言った通り君には常識がない部分があるおそらく自覚は無いんだろうが…
仮にこのSMプレイを許容した場合地獄が終わる。
もうね悲惨なくらいに…亀甲縛りされた男がそこら辺に転がっているとか吐き気がする
そしてこんな提案書を毎日の様に提出されるとこっちが辛いてかもう無理耐えれん…精神壊れるぴえん」
怒りと悲しみと色々な感情が混じりあっているのか
閻魔様がキャラ崩壊を起こし始めた
しかし彼は気になどしないキャラ崩壊を起こしてでも言いたいという圧力を出しながら話を続ける
「君の仕事ぶりは確かにすごい 感服するものがある だから僕もこのまま一緒にやっていこうと思ってたんだ
でもね!!!!」
顔が噴水にでもなったのかと言うぐらいの勢いで涙を流し…いや吹き出しながら
「僕の精神が壊れそうだからさ…君の担当分の仕事も僕が責任持ってやっとくからさ!出世は少し遅れるかもしれないけどしばらく研修に行って常識を身につけて来て……?」
当たり前だが拒否権なんて存在しない
閻魔が青と言えば赤信号だって青だし朝だと言えば夜でも朝なのだ
かくして私は地上の日本
鬼と関わりが深い?とされる地に飛ばされたのである
期間は未定
出世コースとは永遠におさらばかもしれない
そんな不安を抱きながら新生活はスタートする
余談だが閻魔がここまで追い詰められているのは一応理由がある地獄の中で1番大きな権力を持つのは閻魔でなければならない閻魔は江戸時代末期の倒幕までの1部始終を見た人物である部下に意見を求めては自分の権力が揺らぎかねないそう思い彼は あくまで自分が意見を求めたのでは無く 部下が提案書を献上しそれを吟味し あくまで「仕方ないなぁ…良いよ」みたいな感じで自分の威厳を保ちながら自分好みの意見を採用する制度を取った
まあありえないぐらいの頻度で意味の分からない提案書を出す者がいる…等と最初から考えていなかったのである
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