XP∅F
キクイチ
イオリ、勇者召喚に失敗される
古典的なファンタジー世界とはまったく毛色の違う、剣と魔法の世界ゲーティア。
封印されていた魔王に復活の兆しが見えたため、一人の勇者を召喚することになった。
……
地球の様な地球ではない惑星。
日本の様な日本でない国。
初夏のある日、登校中の一組の学生カップルがいた。
男子の名はイオリ、女子の名はマコト。
二人は幼馴染で恋人同士だ。
突然、イオリの足元に魔法陣が広がる。
足から魔法陣に飲み込まれ出すイオリ。
マコトはイオリに抱きついてイオリを引き留めようとする。
しかし、次の瞬間、魔法陣が大きく揺らぎ、イオリはマコトと共に魔法陣に飲み込まれた。
……
世界ゲーティア。
勇者召喚が行われていた神託府は、大騒ぎになっていた。
一人の男子を召喚したはずが、一組の男女が召喚されていたからだ。
召喚した勇者の名はイオリ……のはずだった。
しかし、イオリの名が浮かび上がっていた聖杯の
神官達は、困惑していた。
「私は大神官マリウス。双方の名を伺いたい」
「イオリです。こちらはマコトです」
「おお、そなたが勇者イオリ殿か、無理な召喚を強いてしまい誠に申し訳ない。
この世界はいま、復活しつつある魔王の脅威にさらされている。
勇者の資質を備える貴殿に協力を仰ぎたいのだ。
この世界を魔王から救えるのは勇者である貴殿しかいないのだ」
「俺が勇者ですか?
普通の学生ですよ?
何かの間違えでは?」
「選ばれし異界のものには勇者の加護が眠っているのだ。
そこに突き刺さっている聖剣は勇者にしか引き抜けない。
さあ、引き抜いて見せてくれ。
さすれば勇者の加護が芽生えるであろう」
イオリは聖剣を引き抜こうとするが一向に抜ける様子がない。
「抜けないですけど……。
やっぱり間違えでは?」
「これはどう言うことだ?
召喚の儀で選ばれるのは勇者のみだ。
ならば、マコトとやら、試しに抜いてみてはくれぬか?」
「え? 私? わかりました……」
マコトが政権に触れると眩い輝きと主に、聖剣が抜け、
政権を包み込む光が集約し、聖剣の鞘となった。
「おお、これは。勇者はそなたであったか。
召喚に成功した様で一安心だ。
しかし、聖杯にはイオリ殿の名があったはず……。
これはどう言うことだ?
大賢者を召集してくれ、詳細調査を行おう」
マコトがイオリに話しかける。
「ねえ、イオリ、何か変じゃない?」
「変て? 異世界に召喚されて勇者になるのは当たり前の様に変だよね?」
「違うの。イオリさ、お尻がパンパンに大きくなってない?
女の子のお尻みたい」
「え?」
イオリが確認するように自分の体に触れる。
「うそ!?」
あるはずの男性のアレがなくなっていた。
お尻が妙にふくらみ、女性的な感じになっていた。
マコトが言う。
「てか、私、逆に男の子のアレがついてるみたいなの。
違和感がすごい。
お尻も小さくなってる感じ……」
マリウスが言う。
「なるほど、そんな状況になっていたとは……。
勇者は男子のみに芽生える資質。
召喚する際、二人の体でなにかが混ざり合ってしまったのかもしれない」
マコトが言う。
「イオリ、申し訳ないんだけどさ、下半身の下着と衣類だけでも交換してくれない?」
マリウスが言う。
「着替えならこちらの部屋を使ってくれたまえ」
二人は小さな部屋に案内された。
マコトが言う。
「とりあえず、下半身だけ裸になって確認しよ?
恥ずかしいけど、仕方ないよね」
「……うん、わかった」
二人は下半身だけ裸になった。
股間に男子のアレをつけたマコトが、しゃがんでイオリの股間の状態を確認する。
「完全に女子だね。私は男子だけど」
「まじか……」
「お尻とか股間の形も入れ替わってる感じだね。
とりあえず、服もらうね」
マコトはイオリのトランクスを履いて、ズボンを履いてしまった。
「ふぅ、おちついた。ヒップもちょうどいいね。
イオリ、なに突っ立ってるの? 早く着ちゃいなよ」
「……うん……でも」
「恥ずかしがってる場合じゃないでしょ?
他に着るものないのだから」
「わかった……」
イオリは、ショーツに足を通し引き上げる。
股間にピッタリフィットする感覚が新鮮だった。
妙に大きく艶かしくなった自分のお尻に困惑した。
「ストッキングとスカートも履いてみて。
ストッキングは伝線しない様に丸めてから履いてね。
そういえばイオリの足の毛、薄くなってるね?」
靴下を脱ぎ、黒いストッキングを丸めてに足を通す。
初めての感覚だ。
慎重に腰まで引き上げる。
そのあと、スカートに足を通し着用した。
イオリは姿見で自分の姿を確認し、恥ずかしさでいっぱいになった。
「似合ってるじゃん。可愛い。
楽になったでしょ?」
「開放感がありすぎて心許ない」
「そのうち慣れるよ」
「慣れたくないよ」
すると、一人の女性神官が部屋に入ってきた。
「お二人とも、お着替えは、もうよろしいですか?」
マコトが答える。
「はい、大丈夫です」
「ではこちらへ」
マコトは、恥ずかしがる、イオリの手を引いて女性神官についてゆく。
二人が案内された部屋の床には光り輝く魔法陣が広がっていた。
女性神官が言う。
「勇者マコトさま、魔法陣の中央で立ってください」
マコトは魔法陣の中央へ移動する。
程なく、何かの紋章がマコトの頭の上1mくらいに顕現する。
男性神官が言う。
「間違いなく勇者ですね。では次はイオリさんが立ってください」
イオリはマコトと入れ替る様に、魔法陣の中央へ移動する。
イオリは、スカート姿でいるのが恥ずかしくてたまらなかった。
程なく、何かの紋章がイオリの頭の上1mくらいに顕現する。
男性神官が言う。
「おお、これは、『契約の乙女』。
まさか同時に召喚されるとは驚きました」
立ち会っていたマリウスが言う。
「『契約の乙女』だと?
これは思わぬ誤算だ。
勇者殿のパートナー探しの手間が省けた。
乙女イオリ、是非とも貴殿にも協力してもらいたい」
「乙女……ですか?」
「勇者殿の傷や体力回復には欠かせない重要なパートナーのことだ。
貴殿が契約の契りを交わした相手には飛躍的な治癒魔法の効果が期待できる。
それとお二人ともご安心を、召喚の契約は、魔王討伐となっております。
討伐の契約が果たされれば、召喚時に捧げた莫大な財宝と共に、元の世界へと帰還できます」
マコトが言う。
「帰れるのですか?」
「もちろんですよ、勇者殿」
イオリが言う。
「性別はもどるのですか?」
「それは無理だ。受け入れなさい」
マコトが言う。
「乙女イオリ、大丈夫だよ、勇者の私が守ってあげる」
「マコトはそれでいいの?
性別変わっちゃうんだよ?」
「だって、どうにもならないんでしょ?
受け入れるしかないじゃん。
後ろ向きでいてどうにななるの?」
「……そうだけど」
「いいよ、私が頑張るから。
乙女イオリは後ろで支援してね。
ところで、マリウスさん、お手洗いはどちらですか?」
「女性神官に案内させます。
とりあえず、女性用をご利用ください」
女性神官が案内を始める。
マコトは、イオリの手を引いて女性神官についてゆく。
「俺も?」
「うん。早めに慣れちゃお?」
「なんで、そんなに前向きなの?」
「なんでかな?
男の子になっちゃったからかな?
乙女イオリは後ろ向きだよね?
ウジウジして女々しい感じ、もっと積極的だった気がするけど?」
案内されたトイレは、意外にも水洗だった。
微妙に異なるが、洋式トイレに似たデザインだった。
マコトはイオリの手を引き、二人で同じ個室に入った。
「一緒に?」
「そうだよ、わからないし。
小さいころは一緒に入ったよね?
ちょっと思い出す。
私からするね?
立ってすれば良いのかな?」
「狙い外さない様に注意してね。
座る場合は、押さえながら」
「なんか面白そう。初立ちションだよ?
イオリはもう立ちションできなくなっちゃったんだね?」
「そう言うこと言わないでよ……」
マコトは嬉しそうに、股間のジッパーを下げて、イチモツを取り出す。
「おお、こんな感じなんだ……新鮮」
便器の前に立つと、ゆっくり用を足し始めた。
「すごいね、こんな感じなんだ。
コントロールできるのか。
終わった。あとは、振ればいいのかな?」
イチモツを振ってから、パンツにしまった。
「ふー、おわった。楽でいいね男子は。
ほら、乙女イオリの番だよ?
レクチャーしてあげるね」
イオリは、マコトの指示通り、スカートを束ねてたくし上げ、
便器に腰を下ろす。
ストッキングとショーツをおろし、用を足し始めた。
イオリは、マコトの様子を見せつけられたばかりなので、
とても情けない気分になった。
紙で局部を拭き取り、ショーツとストッキングあげ、立ち上がって、スカートを直した。
「これで乙女イオリも女子トイレデビュー完了だね。
でもさ、旅の時とかは野ションしないとだよね?
どうやるのか女性神官の人に相談した方がいいね」
トイレを流して、マコトとイオリは個室から出た。
女性神官が待っていたので野外での用の足し方をレクチャーしてもらった。
イオリはレクチャーを聞いて、気が遠くなった。
マコトが人ごとの様に言う。
「うあー、女子大変だね……。
公衆トイレなんてないし、
旅に出たら大変な思いして野ションするしかないんだね。
生理が来たらさらに最悪だね。
男子になれてよかったかも」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます