クリスマス

もうじきクリスマスがやってくる。ご馳走の季節だ。私はこう言う美味しい行事を何よりも楽しみにしている。


子供の頃はケーキ屋さんでショートケーキを予約して、ローストチキンをデパートに買いに行く母に、荷物持ちとしていっしょについて行っていたことを思い出す。今は、その役割を私が引き継いでいる。


我が家では、実家の近くにあったケーキ屋さんの苺のショートケーキをクリスマスや誕生日の時に買っていた。その時だけは、丸い大きなホールケーキだった。甘さも丁度良くて、黄色いフワフワのスポンジケーキにスライスしたいちごがギッシリと敷き詰められている。綺麗にデコレーションされた生クリーム上に乗った苺だけ酸っぱさがなくて、甘い。スーパーに売っている甘い苺ともなんか違う甘さがある。どうやったらあの味になるのだろう?あのお店の秘密の作り方があるのだろうか?長年の謎だ。きっとこれは永遠に解明されないだろう。その思い出のケーキ屋さんはもう20年くらい前に無くなってしまったから。


あの味が忘れられなくて、私は色々なケーキ屋さんで苺のショートケーキを食べてみた。でも1度としてあの味に出会ったことがない。そこの思い出のお店はショートケーキ以外も美味しかった。そこのモンブランとそっくりな味のケーキ屋さんを実家近くで見つけた。総理大臣賞だったかな?の賞状が額に飾られていて、思い出のモンブランよりチョコレートの薄い板チョコを側面に纏っていて、さらに豪華になっていた。数年そこに通ったのだけど、店主がかなりのご高齢だったので、ある日突然閉店してしまった。


またあの味がどうしても食べたくて、今度は私が苺のショートケーキを作ってみた。味を思い出しながら試行錯誤してやるのだけど、一向にあの味にはならない。何度も何度も挑戦したけど、今だにあの味は再現できない。

ネットで姉妹店はないか探してみたけど、昔は目白にあったみたいだけど、今は一件も無いそうだ。噂によると馬券?か何かで店を傾け潰してしまったとか聞いた。お店のビルの枠組みだけ残っていて、今は不動産屋が入っているそうだ。時の流れは無情だ。


思い出は美化されると言うけれど、そんなものだったのだろうか?今でもあの味を越える苺のショートケーキには出会っていない。きっとこれからも無いだろうと思う。

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