カフェ

カフェで読書するのが、私の一番の楽しみだった。夕方、一時間ほど抹茶ラテを飲みながら、本の世界に想いを馳せる。


そこのカフェには、時々見かける老婦人がいる。白髪交じりの髪をupにして、赤いスーツや黒いスーツをパリッと着こなし、メイクもしっかりしていて、とても品のあるご婦人だ。彼女はいつも一人でいて、たまたまいるとなりの人に話しかけている。女社長か?大学教授とか?私はそんな事を考えていた。


ある日、私の隣の席にそのご婦人が座り、こちらを伺っている。読んでいた本が最後まで読み終わった私は、チョコレートケーキを食べていた。「美味しそうね。」とご婦人。急に話しかけられて、少し驚いたが、袖振り合うも他生の縁かなと思い、少し話してみた。話し過ぎは良くない。彼女にはミステリアスでいて欲しい。「今日は孫がうちに来るの。今、待ち合わせをしているのよ。ディズニーランドに友達と行くから、お小遣いが欲しいんだって。泊っていくのよ。」なんて話していた。どこの誰かも分からないが、ゆったりと流れる時間。私は「それは楽しみですね。良かったですね~。」等と少しばかり話をして、「楽しんでくださいね。」と言って、店を後にした。


あれからコロナ禍でカフェから足が遠のいている。彼女はまだ来ているだろうか。

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