詩集

手の中の秋

手の中の秋　　今日はマリー・キュリー夫人の誕生日

　　　　　　　　　　　　　三崎伸太郎　１１０７２０２４

山は秋

せせらぎは秋の音

手水に紅葉が映える

そっとすすると秋が揺れた

頬（ほほ）に紅葉を当ててみる

小さな秋

吐息が

絹糸のように流れた

せせらぎは小さな紅葉を背に子守唄を歌う

秋は深く森は静か

秋が来て

夏は終わった

居眠りを始めた夏に

詩集を広げて秋の詩を聞かせる

“秋奴が夏を滅ぼした”

小川のよどみに映る深い空

せせらぎに森の詩

遠くで待っている人は

秋の風景を描かないセザンヌの絵を見ている

サント・ヴィクトワール山は緑ばかり

青系の色彩は

かすかな秋を知るだけ

私の手水には秋がある

深く美しい絵の具で描かれている

紅葉の森はヴィーナスの庭

光が小躍りしてか追いかけっこをする

紅葉の葉先に身震いす露は、光の中に手を伸ばし

光が砕けて森に散った

遠くで待っている人が紅葉の落ち葉に唇を当てると

ヴィーナスの乳頭がピンクに染まり

キュピットが私の頬にキスをした

ああ、秋

澄み切った空から微笑みが下りて来た