あんまー!

そうしてウルとガーとティーさんを抱きしめた後、今度はティーさんに問い掛けます。


「ティーさんはなにか覚えてることあるの?」


すると彼は、


「そうやなあ。ワイは単にミコナはんに会えればよかっただけやろか。別に覚えてることとかあらしまへん」


尻尾をゆらゆらと揺らしながら答えました。でも、それから、


「あ、思い出した」


尻尾をピンと。


「何を?」


ミコナが聞くと、


「ミコナはん、赤ちゃんの頃、いっとき、何を見ても『あんまー!』って言ってたことがありましてん。


ママを見ても『あんまー!』。


パパを見ても『あんまー!』。


犬を見ても『あんまー!』。


猫を見ても『あんまー!』。


魚を見ても『あんまー!』。


てな調子で。


それどころか、『ミコナちゃん』って声をかけられても『あんまー!』でしたさけ、『あんまーちゃん』って呼ばれてたこともあったんでっせ」


尻尾をぐるぐる回しながら応えました。


「あはは♡ ぜんぜん覚えてないや」


「そらそうでっしゃろ。まだ1歳になるかどうかって時でしたさけ」


なんて話をミコナとティーさんがしてる中、ガーは安心しきったみたいな様子で眠ってしまってて。


「ガー、寝ちゃったね」


ウルが言うと、


「そうだね。寝かしといてあげよう」


まるで赤ん坊を抱くみたいに優しく包み込みながら微笑みます。


一方、オウとフカはというと、勝手に庭をウロウロ。まるでパトロールでもするみたいに。


「あいつら、何やってるんだ」


さすがにウルも呆れたように言ったけど、ミコナは、


「なにか大事なことしてるんじゃないかな。任せとこうよ」


とても10歳とは思えない鷹揚な態度。これにはウルも舌を巻いてしまいます。


でもそれは、お母さんを亡くして、立派な発明家だけどそれ以外のことはすごく頼りないハカセのために自分がしっかりしなきゃという想いからくるものなのかもしれません。


だからウルは思うのでした。


『もっと子供らしく甘えさせてあげたいな』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る