第四百四十四話 通信が繋がる時

そのまま兵士が通信機を手に取ると、

アデルの目の前にある大型のモニターに映像が映し出される。

その人物は間違いなく高御であった。


「高御さん、いきなり通信とは何かあったのですか?」


高御から通信が入ってきた事に対して問いかけるアデルに、

その高御は


「いや、セリアンとスロープの世界で動きがあったから、

その事を伝えておくと共に、そちらでも何か動きがなかったか聞いておきたいんだ」


と問いかけてくる。


「あのお二人の世界で動き?

一体何があったんですか」


アデルは問いかけの内容について聞くものの、

その内心は穏やかでは無かった。

高御が通信を入れて来たという事は何か大きな動きがあったのではないかという

不安がその内心では渦巻いていたのだ。


「その動きとは具体的にどういった物なのですか?」


アデルの不安が傍から見ていて伝わったのか、

側近の兵士が変わりに問いかけてくる。

手足の指が落ち着きなく動いている事もそれを裏付けている。


「ああ、今から説明するよ」


そう告げると高御は先程まで行っていた作戦の全容を告げる。

その話を聞いたアップルは


「私達の世界にも、彼等の世界にも新たな獣人が出現したんですね……」


と唇に少し力を入れる。

その口調も穏やかではなかったのは先程まで兵士達と会話していたトーンと

明らかに違っていた事からも分かる。


「それに危うく今をときめくアイドルのライブをぶち壊そうだなんて……

偶然だとしても不愉快極まりない話ですね」


一方ラズベリーは明らかに怒りを隠せない様子だ。

その表情は眉間にシワを寄せており、

両手を震わせていた。

だがその直後にライトが


「ラズベリー、その月節勇矢って言うのはそもそも誰なの?」


といつものあっけらかんとした口調で聞いてくる。

それを聞いたラズベリーは


「え!?あっ……」


とぽかんと口を開け、呆気に取られる。


「あ、ライト……月節勇矢って言うのは、

地球で大人気のアイドル少年よ」


そんな様子を見たアップルはラズベリーに変わって説明する。

それを聞いたライトは


「そうなんだ、アイドル少年って言うけどどの位なの?」


とアップルに問いかける。

すると今度はラズベリーが


「そうだね、ライトと同じ位だよ」


と先ほどとは明らかに違う楽しそうな声と表情を見せる。

その様子からラズベリーがそ勇矢のファンなのは明らかであった。


「凄く熱意を感じる言葉ですね。

そんなに良いアイドルなのでしょうか?」


ライト達が勇矢の話で盛り上がる中、

それを見ていたアデルは不可思議と言った様子である。


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