第四十九話 ゲートの前に立つ時

翌日の朝、休息を終えた一同は移動車両を走らせ、再び東京を目指して移動していく。

だがその顔は朝を迎えたとは思えない程疲労が浮かんでおり、昨晩は殆ど眠れなかった事が伺える。


「皆さん眠そうですね……まあ、私もそうなのですが」


マルティー人の代表者がそう告げると舞桜夫妻の夫は


「代表者さんもそうなのですね……ええ、結局昨晩の事が気になりすぎて、考えれば考える程頭の中が混乱してきています」


と回答し、それに続ける形で他の面々も


「私達も同じです……これからの事が全く考えられない中で未知なる敵と戦っていかなければならない、その状況にどう対応すれば良いのか……」


等と口々に言葉を続ける。

それに対してマルティー人の代表者は


「その未知という部分を少しでも解明する為に我々は東京という場所に向かっているのでしょう?

でしたら今そんな事を考えていても仕方ありません」


と告げ、一同に対し今は東京に向かう事だけを考える様に促す。

それを聞いた一同は黙って頷き、それ以上言葉を続ける事は無かった、だがそれは納得したと言うよりは諦めに近い表情であり、不安が拭い去れたとはとても言えない。


そうしている間にも移動車両は埼玉県を抜け、首都である東京へと突入しようとする。

だがそこで移動車両が路肩に移動し緊急停止する。


「どうしたんですか!?何か起こったのですか?」


突然の停止に困惑する舞桜夫妻に反応したかのようにマルティー人の代表者が外に降りると目の前には件のゲートが設置されていた。


「又ここにもゲートが……いえ、首都である以上ゲートの設置は当然でしょうね……」

「ですが皆さんから提供していただいた衛星データではこの道路にゲートは確認できません。

恐らくはその後に設置された物でしょう、いえ、今はそれは問題ではありません。

問題なのは……」

「首都の至る出入り口にこれが設置されているかも知れないと言う事ですね」


ゲートが設置されている事を確認し、一同は今後について思案し始める。

この状況からゲートを潜らずに東京に突入する事は極めて困難であると想像せざるを得なかった。

それが想像出来たのだろう、少ししてマルティー人の代表者が出した


「仕方ありません、一か八か光学迷彩を使用してこのゲート内を潜り、反応されて追手が来た場合は振り切る。

これ以外に手立てはありません」


と言う苦肉の策に対し誰も他の提案を述べる事が出来なかった事がそれを裏付けている。

それ程までに彼等は追い詰められていたのだ。

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