第四十七話 畑で戸惑う時

「何なんでしょうここ?野菜畑の様ですが……」


小鳩夫妻の妻がそう口にすると優嫌夫妻の妻も


「ええ、この辺りはあのゲートが配置されているエリアとは大きく違いますね。

同じ国の中にある物とは思えません」


と告げると一同は周囲に目をやる。


「ええ、こうした風景を見ていると確かにそう思えてきますね。

ですが今此処で見とれている場合では……」


小鳩夫妻の夫がそう告げると一同は先に向かおうとするがその時舞桜夫妻の夫が


「待って下さい!!あそこに植わっている野菜……あんな作物は見た事が有りませんよ」


と発言した事で一同は移動車両を一旦止める。

そしてその野菜を移動車のカメラ映像で拡大してみると確かにそこには一同が今まで見た事も無い野菜、否そもそも野菜と呼ぶ物なのかどうかも分からない何かが存在していた。


「あれは一体何なんでしょうか?マルティー人が持ち込んだ作物を植えた?」

「いえ、あの様な作物は我々の母星でも見た事が有りません。

既に絶滅した種を反逆者が持ち込み地球で植えた等回りくどいにも程がある話です……」


舞桜夫妻の妻が一つの疑問を投げかけるが、その疑問はマルティー人の代表者によって即座に否定される。


「周囲に人もいませんし、あれが何か聞くのは難しそうですね」

「ええ、あれが何なのか分かれば現在の日本の状況を知るのに役立ちそうな気がしますが……」

「流石に勝手に採っていくのはまずいですし、此処は断念する他無いですね……」


手掛かりになりそうな物を見つけたものの、それを入手する術が無いと言う事に落胆を隠せない一同、だがその直後強い風が吹き、小鳩夫妻の妻が被っていた帽子が飛ばされてしまう。

飛ばされた帽子はそのまま畑に落ちそうになる。


「あっ、このままじゃ畑に……」

「落ちたら回収は難しいな……此処で時間を食う訳にも行かないし」


帽子は諦めて先に進もうとするが飛ばされた帽子が畑に落ちるかと思ったその瞬間、帽子が突然強い力で揺り戻され、小鳩夫妻の妻の手元に戻ってくる。


「え……今のは……」


当然その反応は帽子が戻ってきたという喜びよりも今起こった未知なる現象とその原因に唖然としてたというものであった。


「飛んでいった帽子が跳ね返される様に戻ってきた?」

「ええ、そう見えますね……まるでバリアでも張られているようです」

「見た目は畑でもやはりこの辺りも技術が使われているのかも知れませんね、だとしたら此処でじっとしているのは危険過ぎます、直ちに移動しましょう」


身の危険を感じた一同は直様その場から移動する。

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