第三十五話 港に上陸する時

「ですがどうやって上陸するのです?流石にいきなり姿を表した未確認の旅客機を着陸させろというのは無理な話でしょう」

「ええ、ですので比較的人目に付かない場所に接近し、少々足場が悪かったとしてもそこで降りて頂きます。

無茶振りかも知れませんがその点はご了承頂けますか?」


小鳩夫妻の妻が代表者に上陸時の疑問を呈すると代表者はこの様に説明し、不安を少しでも軽減しようとする。

それに対し小鳩夫妻の夫は


「了承等既にしています。

それよりもそろそろ上陸の時間では?」


と了承した事と時間が迫っている事を告げる。

その言葉通り一同の目的地である神戸港は既に目と鼻の先に迫っていた。

そのまま人目に付き辛い施設の裏側に回り込もうとする。

だがその時舞桜夫妻の夫が


「!?これは……一体どうなっている?」


と困惑した声を上げる。

その視線の先には窓があり、どうやら神戸港の風景を見て声を上げた様だがその妻は


「あなた、一体どうしたの?」


と問いかけている辺り、夫婦で何かに気付いたという訳ではない様だ。

そんな妻に対し夫は


「窓から見える風景を良く見てみろ、この風景、神戸港にあったか?」


と神戸港の風景を見るように告げる。

低空飛行である為、上空からのいい眺めが見られる訳ではない、だがその言葉に従って他の搭乗者達が窓の外に目をやるとそこには事前に通達されていた光景とは明らかに異なる光景が存在していた。

港の基本的な構造は変化していないが、その表面から考えられるであろう材質や周辺の船が明らかにサミット参加前の日本とは異なっていたのだ。

それも見た目からそう判断出来る程に。


「ただ雰囲気が変わっているだけならいいのですが、先日の一件を考慮すると嫌な予感しかしませんね……」

「ですが予感に振り回されていても仕方ありません、此方は当初の予定通り接近、上陸しましょう」


舞桜夫妻の妻が内心の不安を吐露するが、マルティー人の代表者はその点を考慮しつつも上陸しなければ始まらないと言った口調でこう告げる。


「ええ、では参りましょう!!」


そう告げると一同は当初の予定通り人目に付き辛い場所、且つ施設内の管轄から外れていると思われる部分に接近する。

そしてそれが終わると直ちに機体から外に出て調査を周囲を見渡す。

すると先程の疑念が確認に変わったのか、小鳩夫妻の夫は


「やはり……この雰囲気は何かが違う、上手くは言えないが…」


と先ほど感じた違和感がより強まったと思われる発言をする。

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