年上

父とはあまり話した記憶がない 父はまだ生きているけれどもう1年は会っていない それはこの時代柄のせいもあるけれど それがなくても会わないことのほうが多い


いつも僕が寝た後に帰ってきて 起きる前には家から出ていく 同じ家に住んでいるはずなのに交錯しない


大学に受かったとき 電話で少し話をした その30分で 10年分くらい話を聞いた 小さいときのこと おばあちゃんのこと 自分のこと


僕は父と話すことを苦手に思わなくもないけど 多分父も僕と話すことを苦手に思わなくもない 


このまま父が消えていたって僕はあと数年は気づかないだろう おそらく生きてる 多たぶん生きてる 


ああだから僕は年上の人と話すことが苦手なんだ 父は僕にとって年上の人だろうか


ただ少し思い出す おばあちゃんが亡くなって 初めて聞いた心の声 吠えるように泣いているあの声

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