招かれざる客
エリザと共に図書館を出た直後、俺たちに対する明確な敵意を感じた。
ふう。
それにしても今日は妙に『招かざる客』に遭遇する日だ。
もしかしてこいつら、俺が図書館から出るまでの間、わざわざ寒空の下で待機してくれていたのか。
そう考えると少し可愛くも思えてきたな。
「ヒュー! ヒュー! モテる男は辛いね~! アベル君!」
そこにいたのは何時の日か寮で俺たちに絡んできた内部生たちだった。
「で、俺に何か用か?」
「お前、ウザいんだよ! 外部生の癖に調子に乗りやがって!」
「そもそも劣等眼がどうしてウチの学園に入学できたんだ? 何か汚い手を使ったんだろ!」
やれやれ。
俺が正当な実力によって学園に入学をしたことは、試験会場にいた人間ならば、誰もが知っているはずなのだがな。
それともアレか。
ここにいる内部生たちは、自分の眼で確認したこと以外は信じないタイプなのか。
その心意気には、共感できる部分もあるが、今は鬱陶しいことこの上ない。
「要件を言え。生憎と俺はお前たちと違って暇ではないのでな」
「ケッ……! やはり気に入らねえ」
「今日はお前が本当にこの学校に相応しいか、もう一度入学試験やってやるよ!」
言い放ち、趣味の悪い形状の魔道具(レガリア)を構える学生たち。
さてさて。
どうしたものか。
力でねじ伏せることは簡単であるが、必要以上に事を荒立てるのは賢い選択肢とは言えないだろう。
「ふう。こんな粗悪な玩具で俺を相手にする気だったのか?」
「なっ──!?」
俺は『背後から』一人の学生の魔道具をひょいと取り上げて、そう呟いて見せた。
「オ、オレの魔道具が!?」
「こいつ! 何時の間に!?」
この男たちは一体何を驚いているのだろうか。
今から戦闘が始まるかもしれないと言うのに目の前で『誰から攻撃するか?』と相談されると隙の1つも突きたくなるものである。
魔道具を奪われた男たちは、慌てて俺から距離を取る。
「なあ。この魔道具、調子が悪いんじゃないか? メンテナンスはしているか?」
「な、何故そのことを!?」
「見ればわかるだろ。素材の劣化によって、魔術構文に歪が生じている。曲がりなりにも魔術師を目指すなら、商売道具は大切に扱っておけよ」
魔道具を放って男に返す。
まあ、そもそも若いうちから魔道具に依存した戦い方に覚えてしまっているお前たちが、優秀な魔術師になれる可能性は低いとは思うがな。
「行くぞ。エリザ」
「えっ。あっ。うんっ!」
武器を奪われ、男たちが動揺している今が穏便に場を治める最大のチャンスである。
俺は素早くエリザの肩を抱くと、速やかに内部生たちの元から離れていく。
「クソッ──! アベルのやつ、調子に乗りやがって!」
「お前、明日の授業で覚えておけよ! 絶対に大恥をかかせてやるからな!」
はて。明日? 何か特別なイベントがあっただろうか?
内部生たちの言葉に疑問を抱きながらも俺は、エリザを女子寮に送り届けるのだった。
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