こっそり守る苦労人 〜黒き死神の心〜
ルド
血に塗れた冬の悲劇。
第0話 悪夢。
「れいくん、どこいくの?」
間違っているとは思わなかった。
なぜなら確かな実績を積んで、間違ってなかったと証明してきたからだ。
「今日は……その、いっしょにいてほしい……の」
「悪いが、今日も用事がある」
守りたい者の為に俺は何度も戦ってきた。
何処かの物語に居そうなヒーローとは違う、守りたい者の為だけにチカラを使い続けた。
一切の手段を問わず、残酷な選択であっても迷わず選んだ。周りからどれだけ否定されても、結果さえ良かったら問題ないとそれらの声を聞き流した。
「く、クリスマスイブだからできたら今日はみんなと一緒に……」
「俺抜きで楽しんでくれ」
「で、でも……」
してきたことに対し後悔はなく、決して変わることはない。
だから今回もまたいつもと同じであった。怯えながら告げる妹の願いを断るのは申し訳ないが、彼女から背を向けて家を出ることにした。
聞き分けがないと怒鳴ったりなんてしない、俺なりの優しさのつもりだった。
「……なさい……ごめんなさい……」
なのに何故、守っていた筈の彼女の瞳から涙が溢れている?
それを見た俺は何故迷って揺らいでいる?
間違っていない筈のなのに……どうして?
「馬鹿なことしたダチを覚まさせる為ならオレは殴るぜ? たとえそれが……おまえでもだっ! 零っ!」
どうして。
「零、君は正しい、けど残酷だ! そんなことを続けたって誰も喜ばない! 誰も幸せになんてならないし、どちらも不幸なままだ! それは平和とは決して違う! ただの自己満足だ! 正しいだけじゃ辛いだけだ! なんで君はそれが分からない!?」
どうして。
「れいくん……こわいよぉ。お願いだから……」
どうしてだ。
どうして、皆んな悲しそうにして俺を──。
「おいてかないで……おにぃちゃん……」
俺はこんなに悲しいんだ。
*
「っ──!! ガハ……!」
『ム、意識ガ戻ッタカ』
束の間の休息では絶対ないとだけ言える。
悪夢を見ていた俺は全身から冷や汗と血を流しながら、眼前にいる敵を見つめる。
「うっ」
俯いて倒れていたので顔を上げるが、それ以上の行動は怪我のせいで出来なかった。
「生き……てるのか? 俺は?」
『互イニナ、シブトイ限リダ』
「は、そうだな」
冗談か本気かも分からない。この状況では困る反応のされ方だ。
敵である相手とこうして話すとは、俺もヤキが回ったのかもしれない。
寒々とした雪も降る真冬の夜、世間ではクリスマスイブで騒がしい夜。
「はぁ……最悪な日だ」
俺は1人、目の前の怪物と対峙した末、真っ白な雪を真っ赤に染め上げていた。
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