第218話 竿姉妹同盟その2


 コッコロとペペを昏睡状態に陥れた古代の強力な呪い。

 エルフの里で力を増したアリシアでもまだ解消できないその呪いを解いてもらうため、僕たちはエルフの里長グローリエル様とダークエルフの里長クロエさんに儀式の準備をお願いしていた。


 儀式はエルフとダークエルフそれぞれの里長が協力することでしか発動できず、その詳細は門外不出。


 僕らに協力できることはほとんどないため準備は任せきりになっていたのだけど……そんな折に狼人ソフィアさんから届いたのは「準備が上手くいっていない」という一報だった。


 一体どういうこと!? 


 僕とアリシアは慌てて里の奥――巨木の裏手にある泉へと急いだ。





「だーかーら! ここはあーしらダークエルフのやり方のが絶対に良いって! なんでわかんねーんだよ頑固ババア!」

「ふざけるな! 我らエルフの方式が良いに決まっているだろうがいい加減聞き分けろクソガキ!」


 巨木の裏手。

 療養する森林龍のすぐ近くにあるその神聖な泉に到着してすぐ、なにやら激しい言い争いが聞こえてきた。


 見れば泉の前では絶世の女性2人が殺し合い寸前の目で睨み合っている。


 豊満なスタイルにシンプルな衣装を纏うグローリエル様。

 褐色のすらりとした肢体を惜しげも無くさらし、ピアスと呼ばれる装飾品を身に付けているクロエさん。


 2人は僕たちがやってきたことにも気づかないくらい熱くなっているようで、口論はみるみるうちに過激化していく。


「肥溜め貴様、本当にそろそろ勘弁ならんぞ……? 相手が短命種とはいえ、余が同盟を結ぶと言ったのだ! 貴様らが起こしていた男攫い事件をあの短命種どもに解決してもらった以上、見返りの儀式は絶対に成功させねばエルフの名折れ! 貴様らのふざけた術式理論で邪魔されてたまるか!」


「はー!? こっちだってエリオっちたちの仲間助けるための儀式って聞いて全力なんですけど!? だからあんたらの非効率なお堅い術式とか入れたくないんですけど!?」


「よーしよくわかった……儀式の邪魔にならんようとっとと死に晒せ堆肥の詰まったボケが! 貴様の邪魔な脳みそほじくり出してその身体だけ儀式運用に使ってやる!」


「上等だよ! いまここでどっちの魔術理論が上か身体に思い知らせてやるし!」


「ちょ、ちょっと待ったああああああ!」


 一触即発。

 本当に殺し合いに発展しそうだった2人に僕は慌てて割り込む。


「なにやってるんですか2人とも!? 儀式の準備が進んでないって聞きましたけど!?」

「「だってこいつが!」」


 互いに指を差し合う2人。

 

 一体なにをそんなに? と2人を宥めながら話を聞いてみれば――どうやら儀式魔術を発動するための祭壇構築について色々と揉めているらしい。


 儀式はエルフとダークエルフの里長が協力して行うものである以上、基本的な魔術理論は共通したものになっている。


 けれどそれぞれの種族に好みのアレンジがあり、どちらの様式を採用するかで2人は衝突しているらしかった。


 言い争いを聞いた感じ、2人とも全力で儀式に臨んでくれているみたいだけど……それゆえの衝突らしくどうにも仲裁しづらい。


 そんなわけで軽くお手伝いしていた狼人ソフィアさんは困り果てて僕らに報告。グローリエル様を護衛している守護隊長エルミアさんも「通常の魔力運用ならまだしも里長たちの儀式については門外漢でして」とお手上げのようだった。


 こ、こんな調子で昔はどうやって儀式を執り行ってたんだろう……あるいは今代が特別に仲が悪いのか。


(なんにせよ仲良くしてもらわないと儀式ができそうにない……。幸い宮廷医師の話ではコッコロやペペの身体もまだ大丈夫だって話だけど、だからってだらだらやってるわけにもいかないし……)


 けどついこの前まで半ば戦争みたくなっていた両種族の長に仲良くしてもらうなんてどうすれば……と頭を悩ませていたところ、里長クロエさんが頭を掻きむしって叫んだ。


「あーもう! このままじゃ埒があかないし! そんならあーしが譲歩してあげっからとにかく儀式を早く……ぐっ、けどあーし自身の意志でこのババアに譲るなんて屈辱で手元が狂いそう……! んなことになったら本末転倒だしエリオっちたちにも申し訳が――あ、そっか」


 と、なにやら激しく葛藤していたクロエさんが「閃いた!」とばかりに僕を見る。


「ねえエリオっち。お願いがあんだけどさ……あーしに、アレやってよ」

「え? アレ?」

「うん。あの〈主従契約〉ってやつ」

「え!?」

 

 いきなり飛び出したクロエさんの「お願い」に僕は目を剥く。

 クロエさんは褐色の肌を赤く染めて、


「ほら〈主従契約〉ってさぁ、相手になんでも命令できるっしょ? だから〈主従契約〉であーしを操って、無理矢理でいいからババアに協力させてくんね? そしたら儀式も速攻成功っしょ」

「なにを抜かしておるのだこの肥溜めは!」

 

 クロエさんの突拍子もない提案に、グローリエル様が顔を赤くして叫ぶ。


「〈主従契約〉とかいう、教会が魔族に乗っ取られたという異常事態でもなければ即座に処刑されてしかるべき穢らわしいスキルの詳細を忘れたのか!?」


 もっと言ってあげてください!


 けど里長クロエさんは「詳細って、セ、セッ〇スしなきゃってヤツっしょ? んなもん重々承知だし」とあけすけに言いつつ、


「だってそうでもしないとババアとちゃんと協力できそうにないし。それになにより……あーし、エリオっちのことかなり本気で良いなって思うんだよね」

「え」

「……お目が高い」


 驚く僕と、なぜか誇らしげなアリシア。

 クロエさんは軽い口調で、けどその瞳を少し濡らしながら真面目に続ける。


「あーしの言うこと信じてドライっち助けてくれたっしょ? あそこでズキューンってきちゃったんだよね。ま、ホントはあーしって里長だし? いくらダークエルフが開放的でもヒューマンとそういう関係になるのはさすがにヤバヤバだけど……まあエリオっちならみんな納得っしょ」


「ふ、ふざけるな堆肥が! そんな抜け駆―――もといこれだからダークエルフは! 貞操観念というものがないのか!?」

「は? なにキレてんの? つーかさっきからうっさいし。あんたみたいなゴリゴリのハイエルフじゃエリオっちと〈主従契約〉なんて結べないだろうから、多少儀式がブサイクになっても速攻でやるためにあーしが契約するってだけじゃん。ま、それ以前に――」


 里長クロエさんはグローリエル様へバカにするような笑みを浮かべ、


「あんたみたいなババアじゃエリオっちも勃たたないだろうし、主従契約なんて結ぼうと思っても結べないだろうけど」

「ふざけるな肥溜めがあああああああああああああ!!」


 グローリエル様が大爆発した!?


 けどクロエさんはそんなこと知らないとばかりに僕の手を取って、


「ま、あんなの無視してさっさとヤっちゃお。おっぱじめればあの石頭も黙って静かになるだろうしさ」

「ちょっ、え、ホントにいいんですか!?」

「いいのいいの。あーしも経験はないけど実はそういうの結構興味あったし。え、ええと、そんじゃこういうのは躊躇ったら終わりだし……まずはエリオっちのアソコに挨拶しちゃおっか」

「……手伝う」

「ちょっとー!?」


 里長クロエさんとアリシアが2人がかりで僕のズボンを下ろそうとしてくる。 

 ちょっと2人とも落ち着いてせめて〈ヤリ部屋〉に移動させてグローリエル様の前で男根露出は不敬罪になる! と僕がさすがに慌てていれば、

 

「ぐっ、な……っ、ふざけるな、ふざけるな……! あの肥溜めなにを好き勝手なことを……!その理屈で言えば余が契約してもいいでは……いやなにを言っているのだ余は!? ハイエルフである余が二十年も生きておらん短命種の小僧に身体を許すなど天地がひっくり返ってもあり得んだろう!?  ……だがあの張型の快感が……わずか数日で消えおったあの張型の快感が忘れられん……! だというのにこやつら……祭壇構築に集中して忘れようとしている余の眼前で盛るなど……ぐっ、ふざけおってぇ……!」


 先ほど爆発したグローリエル様が、まるで「砂漠の真ん中で何日も飲まず食わずの状態で目の前に一度飲んだら人生が終わる魔水を差し出されたかのような」正気を失った瞳でぶつぶつと呟く。かと思えば、


「~~~~! どけ肥溜め!」

「っ!? は!? ちょっ、いきなりなんだし!?」

「先ほどの侮辱聞き捨てならん! エルフの長である余がダークエルフの小娘と比べて女としての魅力に欠けるなどあり得んだろうが! 大体、この規格外の短命種を中心に同盟を結ぶにあたってダークエルフがエルフより強く結びつくなど見過ごせるか!〈主従契約〉とやらは余が結んで、儀式は貴様のやり方にあわせてやる! だからそこをどけカスが!」

「はあああああ!? なに言ってんだこのババア!? エルフは黙ってムッツリしてろし! てかあーしガチでエリオっち気に入ってんだから初めての邪魔すんなし!」


 ちょっ、なにこれ!?

 特にグローリエル様はどうされたんですか!?

 ダークエルフのクロエさんならまだしもハイエルフの里長がこんなことするなんて対抗心でおかしくなってません!?


 い、いや、対抗心だったとしてもおかしい。おかしすぎる。

 まさか魔族ドライの一件とは別になにか邪悪なモノの影響でも受けてるんじゃあ……!?


 と、僕があまりにも異常すぎるグローリエル様の言動に愕然としてたところ――僕のズボンに手をかけていたアリシアがその隙を突くようにして、


「……えへへ。グローリエル様……思った以上に沼落ちしてる……計画通り……それじゃあ仕上げに……」

「え、ちょっ、アリシアアアアアアアアアアアア!?」


 アリシアが僕のズボンを剥ぎ取った。

 途端――ボロン


 ハイエルフの前で決して露出してはいけないものがコンニチワした。


「「っ!?!?!?」」


 瞬間、激しく言い争っていた2人が僕のコンニチワにぎょっとして硬直する。


 うわあああああああああああ!? 終わったあああああああああ!?


(い、いやけどこれは逆に良いのかな!? 言い争いが止まってるし、荒療治を超えた荒療治だけどこれで2人が冷静になってくれれば――)


 僕は混乱しきった頭でそんなことを考えていたのだけど……結果から言おう。

 完全に逆効果だった。


「……え、ちょっ、うわ……なにこれ……匂いとかエグい形とか……ゲキヤバなんですけど……っ!?」

「う、な、が……!? これが、本物……!? 身体が、勝手に……!?(キュンキュンキュンキュンキュン❤❤❤❤)」


 2人は僕のアソコを凝視したかと思うと、どんどん息が荒くなっていく。

 そしてしばしの沈黙のあと、堰を切ったかのように、


「……! こうなったら早い者勝ちだし! ぜってーあーしが先にエリオっちに契約してもらうし!」

「……っ! こやついきなり……おい、いいか短命種! 貴様は、その、そうだペットだ! 余のペットにしてやるから調子に乗るなよ!」

「ちょっ、本気の本気ですか2人とも……!? う、うわああああああああっ!? 〈ヤリ部屋生成〉!」


 白と黒。まったく違う魅力を備えた2人の美女から争うように押し倒された僕は絶叫して隔離スキルを発動。近くにいた守護隊長エルミアさんたちも巻き込み、せめて里長2人のご乱心が外部に伝わらないよう努めるのだった。


 そして――、


「ヤバ……マジ好き……❤❤ エリオっちマジ最高……❤❤ もう無理……絶対エリオっち以外無理……実質側室でいいから絶対エリオっちと結婚しゅる……しゅきぴしゅぎる……❤❤」

 

「余が……この余があんな……短命種相手に一方的に……❤❤ 無様に腰を振って……❤❤ 一生短命種の性処理ペット苗床宣言までさせられて……こんな屈辱……もう戻れんではないか……あ……❤❤」


「あ、あわわ……」


 ヤリ部屋のベッドの上、2人揃って仲良くお尻を突き出すようにうつ伏せとなった美女が譫言を呟きながら痙攣していた。


 ぞ、族長アハメスさんの件があったから、あのときよりもっと優しく丁寧にしたつもりだったのにどうして……!? 


 と僕は眼前の惨状におののいていたのだけど――仲良しの連鎖はそれでは終わらなかった。


「す、素晴らしすぎる……! あまりにも……っ」

「っ!? エルミアさん!?」

 

 仲良し契約を終えた僕の後ろで、見るからに興奮しきったエルフの守護隊長エルミアさんが息を荒げていた。


 そ、そういえば色々と慌ててエルミアさんもヤリ部屋に引きずり込んじゃったんだった!


 僕が自分のミスに愕然としてれば、エルミアさんは半脱ぎ状態の装備でさらに続ける。

 

「想像を遙かに超えるとんでもない鬼畜攻め、見ているだけで身体が火照ってどうしようもない……! やはり交易都市ロリーコで君に感じた直感は間違いではなかった! やはり君こそ私の初めてを捧げるにふさわしい傑物! やはり君しかいない! いますぐ私を蹂躙してくれ!」

「え、ええ……」


 目にハートさえ浮かべながら頭まで下げてくるエルミアさんの申し出に僕は躊躇う。


 けど――いまの僕はよりにもよってハイエルフのグローリエル様と仲良ししてしまった身。これ以上躊躇するものなんてないわけで。加えてエルミアさんにはエルフの里に案内してもらったりとなんやかんやお世話になった人。だから僕は先ほどの仲良しでバカになってしまっている頭のまま、


「え、ええと……本当にいいんですね?」

「もちろんだ! というかむしろこちらからお願いしたい! ちょっと抵抗するので、それを強引にねじ伏せるかたちで徹底的に抱き潰してほしい! 『やめて』『もう無理』は無視してな!」


 エルミア守護隊長は迷い無く断言し、プレイの一環として剣を握る。

 だから僕は彼女に恩を返すように覚悟を決め、


「わ、わかりました。ええとそれじゃあ……いつもアリシアにしてるくらい激しくいきますね……?」

「え?」


 淫魔の力を全力で解放した。



 ――10時間後。


「あひ……おごっ……❤❤ 頭バカに……頭バカにされちゃっら……おひっ❤❤ もう無理って言ったのに……100回以上……しゃいこうしゅぎる……❤❤ あ、あ……❤❤ よ、余韻でまたイグウウウウウウウウウウッ❤❤」

「エ、エルミアさん!? 大丈夫ですか!? エルミアさああああああああん!?」


 ――僕はその日、仲良しの際には本当のストップワードを決めておかないと危ないという当たり前のことを、国家最強級戦士の身体をもって知るのだった。


      ●


 と……ちょっとアレなことは色々とありつつ、〈主従契約〉を結んだことでエルフに伝わる秘術の準備は急速に進み――魔族ドライを鎮圧してからおよそ2週間。


「よし、それでは――」

「解呪の儀式をはじめるし」


 僕たちはようやく、コッコロとペペにかかった呪いを解くための儀式に漕ぎ着けた。


 エリオ ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル400(前回から30up)

 所持スキル

 絶倫Lv200

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv40

 男根形質変化Lv40

 男根分離Lv50(前回から10up)

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv40(前回から10up)

 適正男根自動変化(Lvなし)

 現地妻(Lvなし)

 ヤリ部屋生成Lv20(前回から5up)

 精神支配完全無効(Lvなし)

 自動変身(Lvなし)

 眷属生成(Lvなし)

 射精砲Lv15

 男根振動Lv10

 男根遠隔操作Lv5(前回から4up)

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 ―――――――――――――――――――――――――――――

 この期に及んでグローリエル様がなかなか堕ちないので長くなってしまいました。さすがは高貴かつ身持ちの堅いハイエルフですね

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