第121話 夫の発射を助けるのは妻の役目
「な、なんだこのスキル……!?」
絶体絶命のなかで発現したスキルに、僕は状況も忘れて愕然としていた。
〈射精砲Lv1〉
あまりにも頭の悪いスキルに卒倒しそうになる。
けど、
「この状況で発現してくれたってことは、きっと役に立つ能力のはず!」
たとえば強力な遠距離攻撃とか!
いままで数々の困難を打破してくれた〈淫魔〉の生き恥能力を信頼し、僕は鉄筒に変化した男根を空に向けて構えた。
(なにか大きな力が男根に込められてる気がする! これを解放すれば――)
直感に従い、鉄筒男根の持ち手に出現していたスイッチ?を押しこんだ。
その瞬間、
ドピュッ!
「うわっ!?」
鉄筒の先端から白い液体の塊が打ち出された。
白濁液の弾丸が凄まじい速度で撃ち出される。
「キシャアアアアアアアアアア!?」
白濁の弾丸は勢いのまま、射線に立ち塞がったサイレントデスワームを吹き飛ばした。
かなりの威力だ。けど、
「あ、あれ!? なんか思ったより全然普通だぞ!?」
デスワームを弾き飛ばす遠距離攻撃はそこそこ強力だ。
けどそれだけ。
射程は普通に男根剣を伸ばしたほうが長いし、弾が小さいせいか威力もデスワームを仕留めきれない程度のものだったのだ。
「な、なんだこれ!? こんなの本当にただの射精じゃないか!?」
「……気持ち良さそう……」
アリシアがなにかとんでもないことを口走ってるけど……いや本当にこれだけか!?
僕は慌てて鑑定水晶を取り出し、ステータスプレートをのぞき見る。すると、
『射精砲:遠距離攻撃スキル。スキル使用者本人が1シコするごとに威力、速度、射程が増大。弾数、および最大威力は絶倫スキルのLv依存。1シコごとのチャージ量は射精砲スキルLv依存』
「……!? 1シコってなに!?」
意味不明な文言に再び口から悲鳴が漏れる。
けど僕は本能的なナニかに従い、鉄筒を握る。
そして「いやまさか……」と思いながら、まるで自慰でもするかのように鉄筒をシコシコと2回こすりあげた。すると、
ドクン……ドクン……!
「え」
僕の下腹部が熱くなると同時、鉄筒に強大なエネルギーが溜まる感覚。
嫌な予感がしつつ僕はその状態でもう一度鉄筒のスイッチを押した。
すると、
ドピュウウゥッ!
「うわあああっ!?」
「キシャアアアアアアアッ!?」
先ほどよりもずっと強い反動。そして威力に僕は目を剥いた。
先ほど仕留め損なったデスワームを一撃で仕留めるほどの白濁砲が打ち出されたのだ。
つまりこのスキルは……
「シコシコして溜めれば溜めるほど威力も射程も伸びる遠距離攻撃砲……!?」
死にたい。
けどこれは、この場において形勢逆転の一手になりうる新スキルだ!
「絶倫スキルはいま、限界突破してLv20。最大威力がどこまでかはわからないけど……もしいま僕が溜められる限界までシコエネルギーを溜められれば……!」
届くかも知れない。
こちらの攻撃が空の果て、遙か高みに!
そうとわかれば……シコシコシコ!
僕は一縷の希望を胸に、バカみたいに鉄筒男根へのチャージを開始する。
が、しかし。
ヒュ―――ボッ!!!
「ぐ――っ!? うわああああああああああっ!?」
僕らが新スキルの検証をしているうちに魔力を溜めきった聖騎士姉妹が、再び魔弾を発射。凄まじい威力に僕は再び〈マンコンの盾〉で凌ぐのだけど――プシュウ。
「くっ!? 魔弾を防ぐのに集中すると、男根が萎えて溜めてたエネルギーが抜けちゃう!?」
ある程度動き回りながらシコエネルギーを溜めることはできる。
けど魔弾を防ぐような全身全霊の動きとシコチャージの併用は不可能らしかった。
けど、ならどうする!?
限界まで溜めないと上空の聖騎士姉妹に届くかわからないのに、これじゃエネルギーをろくに溜められない! と歯がみしていたとき。
――ザッ
「アリシア?」
突如、アリシアが僕の前に立ち塞がった。
「……エリオ。エリオはスキルの溜めに集中して」
そして彼女は天を見据えて剣を抜きながら、こう言うのだ。
「……エリオが最大までスキルを溜めるまで……今度は私がエリオを守る」
「え!?」
無茶だ、と思わず止めようとした。
けど、
「大丈夫……私だってエリオを少しの間守れるくらいには……強くなってるから」
ヒュ―――ボッ!!!
上空で凶悪な魔弾の光が瞬き、アリシアが全身から魔力を噴出させたその瞬間、
「〈身体能力強化【極大】〉〈剣戟強化【大】〉〈自動回復付与〉〈神聖堅守〉」
アリシアが〈神聖騎士〉の戦闘スキルを全力で発動。
「彼我の力量差を見極めるのは武家の基礎教養……これならどうにかいけるはず……〈魔神斬り〉……!」
全身全霊の力を込め、魔弾に不壊武器を――聖剣を振るった。
瞬間――ドゴオオオオオオオオオオオオン!
「……っ!!」
凄まじい衝撃。
続けて目に飛び込んでくるのは、魔弾を真正面から切りつけたままの姿で立ち尽くすアリシアだった。
自動回復スキルで癒やされていく傷だらけの身体で、アリシアが振り返る。
「エリオ……大丈夫、防御は任せて。旦那様の射精を助けるのは……妻の役目だから……」
「アリシア……!」
僕はバカだ。
アリシアを守らなければと思うあまり、彼女の強さを見誤っていた。
好きな女の子がここまでしてくれているのだ。
それに応えるには――恥も外聞も捨てて全力を尽くすほかにない。
「うああああああっ!」
シコシコシコシコシコシコシコシコ!
アリシアに防御を任せ、僕は全力で最低なチャージを開始した。
ヒュ―――ボッ!!!
「……魔神斬り……! 魔神斬り……!! 魔神斬り……!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオン!
アリシアが命がけでスキルを振るう。全力で魔弾を防ぐ。
その背後で僕は男根鉄筒を構え、ひたすらシコり続けた。
絵面は最悪。自分は一体なにをしてるんだという思いが頭を何度もよぎる。
だけど、
(耐えろ……! 確実に敵を倒すために!)
シコシコシコシコシコ!
(溜め込め、ギリギリまで! いくら恥ずかしくても惨めでも! 生き恥能力だろうがなんだろうが、フルに使って敵を倒すんだ!)
僕にここまでしてくれるアリシアを、確実に守るために!
シコシコシコシコシコシコシコシコ!!
ドクンドクンドクンドクンドクン!
こすりあげるたびに、僕の下腹部と男根鉄筒に莫大なエネルギーが溜まっていく。
それはまるで、噴火直前の活火山。決壊寸前の大堤防。
そしてその力が暴発寸前まで高まったとき。
空に、何度目かわからない凶悪な光が煌めいた。
聖騎士姉妹が魔弾の溜めを終えたことを示す魔力の光だ。
その光めがけ、僕は男根鉄筒を構える。
そして上空から再び魔弾が発射された直後。
「……イって、エリオ……」
その身一つで何発もの魔弾を受けきったアリシアが膝を突くと同時、
「イっけええええええええええええええええええええ!!!」
ドッボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
足下の地面が大きく陥没するような反動とともに、視界を埋め尽くす白濁の砲撃が空を駆け上がった。
*
「しつこい相手だねアクメリア!」
「嫌になっちゃうねイクメリア!」
遙か上空で、双子の姉妹は苛立つように声を張り上げていた。
謎の魔剣で魔弾を何度も凌いでいた少年が動かなくなったと思ったら、今度は少女のほうが魔弾を防ぎはじめたのだ。しつこいにもほどがある。
明らかに異常。
どう考えても普通の〈ギフト〉じゃない。
だが――細かいことは最早どうでもよかった。
明らかに魔力が枯渇し死に体となっている少女を見下ろし、姉妹はギラリと瞳を光らせる。
「さすがにもう限界みたいだねアクメリア」
「それはそうだよイクメリア」
「「私たちは十三聖剣最強姉妹!」」
「そう何発も!」
「魔弾が防げるわけがない!」
「この最強の一撃で!」
「この全力の一撃で!」
「「とっとと死んじゃえ神の敵!!」」
ヒュ―――ボッ!!!!!!
高速軌道による遠心力と、限界まで魔力を込めた最大の魔弾。
トドメの一撃を放ってヴァージニア姉妹が勝利を確信した――そのときだった。
ドッボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
姉妹の視界が真っ白に染まった。
「「っ!?」」
突如地表から、熱湯のような魔力を帯びた白濁液が超高速で噴き上がってきたのだ。
あまりにも唐突な光景に、姉妹の頭の中も真っ白になる。
((な、なに!? 敵の水魔法!? いやでも、私たちには魔弾がある!))
たとえアレがなんらかの攻撃だったとして、魔弾がすべてを弾き飛ばしてくれるはず、と姉妹は冷静さを取り戻すのだが――そんな余裕は一瞬で消し飛んだ。
ドプォ! ズシャアアアッ!
「「っ!?」」
白濁液にぶつかった瞬間、魔弾は白濁液に飲み込まれるようにして崩壊。
しかも魔弾とぶつかってなお白濁液の勢いは揺るがず、姉妹めがけて押し寄せてきたのだ。恐ろしいほどの速度で。
「「な、なんなのこれえええええええええええええええええ!?」」
姉妹が悲鳴をあげ、聖騎士の結界防御スキルを発動させながら高速で宙を駆ける。
だが、
「「――っ!?」」
魔弾をも上回る速度で射出された白濁液の濁流から逃れるには、ほんの数瞬遅かった。
次の瞬間。
姉妹の身体はネバネバした水魔法砲撃に飲み込まれ、結界は紙切れのように崩壊。
「「いやああああああああああああああっ!? ごぼごぼがぼごぼ――っ!?」」
攻撃的な魔力のこもった白濁液の濁流に全身を叩きのめされ――双子姉妹はわけがわからないまま、ゴミクズのように吹き飛ばされた。
―――――――――――――――――――――――――――――
造った船に! 男はドンと胸をはれ! という名言があるので、僕も胸をはって今回の121話を投稿します。
※世界観的に描写しきれませんでしたが、〈射精砲〉スキルのシコチャージはショットガンのリロードを繰り返してるイメージです。決して股間でシコシコしてるわけではありません。
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