第112話 アリシア・ブルーアイズ VS キャリー・ペニペニ

「ちょ、ちょっと待って! ちょっと待ってください!」


 女帝旅団に突撃してきて急に「お嫁さんにしてください」と言い出したキャリーさん。

 それを聞いて剣の柄に手をかけはじめたアリシアをなだめながら、僕はキャリーさんに向き直る。


「お嫁さんって、いきなりどういうことですか!?」

「あー、ええと、それはちょっと恥ずかしいので、落ち着いて話ができる場所に移動してもらえないことには」


 ぽっと頬を赤らめるキャリーさん。

 仕方ないので僕はクレアさんたちに「作戦会議はひとまず一段落ということで!」と断りを入れたあと、キャリーさんを女帝旅団拠点のプレイルームに誘う。

 

 ダンジョン都市に来た日、女帝ステイシーさんに夕食を振る舞われた分厚い鉄扉の部屋だ。ここなら室内の声は外に響かないので、なにやら恥じらっているキャリーさんも安心して話せると思っての選択だった。


「それで、なんでいきなりお嫁さんにしてほしいなんて話に……?」

「それはですね、これがなんともやむにやまれぬ事情があるのです」


 キャリーさんは気恥ずかしげに僕から目を逸らしつつ、けれど堂々と話し始めた。


「はじまりはあの日。エリオールさんから大量の男根を運べと頼まれたときのことです。わけがわからないままセクハラまがいの仕事を依頼された私はしかし、プロの運び屋として見事に大量の男根を崩壊するダンジョンに投げ込みまくりました。そして無事にダンジョン崩壊はおさまったわけですが……その際、託された男根が一本余りまして」

「え」

「私は貞淑のハーフエルフ、キャリー・ペニペニ! ……しかしどうもエリオール産の男根は数多の女性を魅了する最高級淫具だというではありませんか。つい魔が差して、アソコに挿してしまったわけです」

「え」


 顔を真っ赤にしながらキャリーさんがとんでもないことを口にする。


「するとどうですか、経験のない私でも天に昇るような気持ちよさ! すっかりハマってしまってもう戻れなくなってしまったのですが、そこで問題が発生します。そう、私は借金のせいで豪商ルージュさんから強制労働を課される薄幸のハーフエルフ、キャリー・ペニペニ。アレを買うお金なんてありません。ですがそこで私は奇跡の一手を思いついたのです! エリオールさんと結婚すれば身請け金を払ってもらって借金はチャラ、そのうえ本物のアレを毎日味わえると!」


 そしてキャリーさんは再び指をもじもじと絡ませながら、


「というわけで、色んな意味で責任をとって私をお嫁さんにしてください」

「いやあの、無理ですよ? 僕はアリシア……アリィ一筋なので。別のお願いにしてください」

「えー!?」


 ばっさり切り捨てた僕の言葉にキャリーさんが飛び上がる。


「なんでも言うこと聞いてくれるって言ったじゃないですかー!?」

「限度ってあるじゃないですか」


 借金を肩代わりしてほしいとかなら喜んで引き受けたけど、結婚は無理だ。

 

「……エリオ……エリオールのお嫁さんは私です。キャリーさんは愛人か側室で我慢してください」

「うーん、まあそれでもいいんですが、愛人ってアレの優先順位が下ですよね? 重婚するならやっぱり私は一番を目指したいですね! せっかく「なんでもいうこと聞いてくれる」念書もあるわけですし!」

「……………………………………………………」


 あ、ヤバイ。

 なんかアリシアの雰囲気がヤバイ。

 脳天気なキャリーさんは気づいてないみたいだけど、これ以上はなんか嫌な予感がする、と僕が割って入ろうとしたときだった。


「……なら、お嫁さんの座を賭けて勝負しましょう」


 アリシアがいきなりそんなことを言い出した。

 え? 勝負?


「……お嫁さんにとって一番大事なのは……旦那さんを満足させる夜の体力。どっちがよりエリオールを満足させられるか、回数勝負です。……キャリーさんが勝ったらお嫁さんの座を素直に譲ります。……けどキャリーさんが負けたら……愛人で満足してもらうと同時に……を結んでもらいます」


「ほほう。まあ確かに、いまの私は魅力的な殿方の一番の座をかっさらおうとする不届き者。ウマに蹴られて死んでも文句は言えない立場です。なんでも言うこと聞くの念書があるとはいえ、そのくらいのリスクある勝負に応えねば無作法というものですね。受けて立ちましょう!」


 堂々と答えたキャリーさんが続けて不敵に微笑む。


「けどいいんですか? 私はエリオールさんの分離男根で一晩に10回もいたしてしまった性豪のハーフエルフ。まだまだ身体が未成熟な子供のあなたに勝ち目はないでしょう! それでも勝負しますか?」


「……もちろん(ニッコリ)」


「ちょっ、二人ともなにを!? てゆーかキャリーさん!? あなたルージュさんから軽い気持ちで変な契約しちゃいけないって何回も注意されてますよね!? そんなだから借金してルージュさんのとこで働くハメに……待ってアリシア脱がないで!? 勝手にそんな勝負はじめちゃ……キャリーさんも! そんな顔真っ赤にして、恥ずかしいなら無理に対抗しなくても……アーーーーっ!?」


 その後。

 僕は珍しく嫉妬全開で襲いかかってきたアリシアに全身を滅茶苦茶にされ……なんだかもうわけがわからなくなり意識朦朧。

 そして気がついたときには――


「……私の勝ち」

「な……なんれ……なんれ二人ともそんなに体力が……❤!?」


 勝ち誇るアリシア。半ば気絶するように陶然と声を漏らすキャリーさん。

 その下腹部にはいつの間にか〈主従契約〉の証である紋様が刻まれていて……僕は意識朦朧としながら「ぼ、僕はなんてことを!?」と慌てる。


 けどそんな罪悪感やらなんやらを解かすように、アリシアが僕を膝枕しながら小さく囁く。


「……エリオ、私のことを心配して、〈牙王連邦〉に行くまでにどうしてもあと10日はかかるの……心配してたよね……」


「え……」


「……エリオが心配してくれるのは嬉しいけど……それでエリオが変に気を張って、負担を感じちゃうのは……嫌だったから……。キャリーさんもエリオと仲良ししたいみたいだったし……いい機会かなって……。ごめんね……けどこれで〈牙王連邦〉までの日数を短縮できるし、この先の旅もスムーズになると思うから……」


 まさかアリシア……1番の座を守るためだけじゃなくて、僕を気遣ってキャリーさんに仲良し勝負を……? 


「……ごめんね。けどエリオが私のことを心配してくれてるみたいに、私もエリオを助けたかったから。それこそ、どんな手を使っても……」

「アリシア……」


 汚れ役になってでも僕を助けたかったというアリシアの言葉に胸が熱くなる。

 教会がどれだけの戦力を有していようと絶対に守りたいという気持ちが改めて膨れ上がっていくようだった。


 ……けどまあ、それはそれとして。


「ご、ごめんなさいキャリーさん。ひとまず理不尽な命令とかは絶対しないので、とりあえずいまだけ協力してください。〈主従契約〉も、いずれ必ず解く方法を見つけるので……」

「は……はひぃ……❤」


 少なからず自業自得の面があるとはいえアレなことになってしまったキャリーさんに、僕は土下座する勢いで頭を下げた。


 そうして。

 いきなり現れて〈主従契約〉を結ぶハメになったキャリーさんの協力も得た僕たちは……コッコロ襲撃からわずか3日後。各種ワープスキルも併用した異次元の速度で、遠い彼方の亜人国家――〈牙王連邦〉へと足を踏み入れることになるのだった。


 腐敗した教会を打ち倒す大きな味方を得るために。



 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル300

 所持スキル

 絶倫Lv20(前回から5up)

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv15(前回から3up)

 男根形質変化Lv15(前回から3up)

 男根分離Lv10

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv10)

 適正男根自動変化(Lvなし)

 現地妻(Lvなし)

 ヤリ部屋生成Lv11

 精神支配完全無効(Lvなし)

 自動変身(Lvなし)

 眷属生成(Lvなし。威力は本人のレベル依存)

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 ―――――――――――――――――――――――――――――

 いままで出会った人、これから出会う国。

 アリシアの命を狙う教会を打ち倒すため、章題通り様々な人々と繋がっていくようです。絆。


※2021/10/14 一部表現を修正しました

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