第2章 淫魔発展

第43話 謎スキル

 アリシアに丸一日中貪られた翌日。

 魔族の少女レジーナはしばらくギルド預かりになり、周辺地域の復興に力を貸すことになった。


「な、なぜですか主様!? 妾が主様以外の人間にかしずくなど……!」


 話を聞いたレジーナは涙目で僕にすがりついてくる。

 けどこれはゴードさんと相談して正式に決めたことだ。


 理由はいくつかある。

 ひとつはアーマーアントの一斉暴走時、僕の「説得」に時間がかかってしまったせいで、運悪く巣穴の近くにあった人里がそれなりに被害を受けたこと。

 アーマーアントの死骸によって潤った財政で十分補填できるレベルの損失だけど、それでも被害が出たことには変わりない。

 それにダンジョン爆発があったアルゴ村は、アーマーアントの増殖が遠因となって壊滅しているのだ。


 これらの件にケジメをつけずにレジーナをうろちょろさせるのは筋が通らない。

 

 幸い、レジーナは食事さえ用意すればすぐにスキルでアーマーアントを産みだし使役できるという。作業員の食料となるモンスターの捕獲や木材の切り出し&運搬、周辺警戒などできることは多く、重宝されるだろうとのことだった(もちろんレジーナが魔族だとバレないよう、アーマーアントの暗躍を知らされるのは一部の冒険者だけになる予定だけど)。


 理由のふたつめは……まあ有り体に言えばアリシアとレジーナをあまり一緒にいさせたくない、といったところだ。

 レジーナは常に僕にすがりついてくる。

 するとどうなるかといえば、アリシアが興奮しちゃうのである。


 現に昨日は嫉妬で興奮したアリシアが一日中「仲良し」を求めてきた。 

 さらに、閉め出されたレジーナが「むぐむぐもがー!(これが放置プレイ! 主様が妾以外の女を愛でる音を聞かされるだけとは……主様は妾の身体だけでなく心まで陵辱してくださる……!❤)」と騒ぐのを聞いてアリシアはさらに興奮しているようだった。


 混ぜるな危険もいいところだ。


 あとついでに言えばレジーナはちょっと僕に対する態度がおかしすぎるので、適度に距離をとってクールダウンしていただきたいという思惑もあった。

 少しでいいから出会ったころの女王様な自分を思い出してほしい……。

 僕以外の人にはちゃんと(?)尊大な態度なんだけどなぁ。


「う~~、理由はわかりましたが、それでも妾が主様以外の人間のために働くなど……

 ……はぁ、はぁ、主様の命令だと思うとゾクゾクしてきた……主様は相変わらず妾の尊厳を踏みにじるのが得意な最高の主様……❤」


 本当になんでこんな僕に虐められるのが大好きな子になっちゃったんだ……。


「念のためにもう一回言っておくけど、その手の話は他の人にしちゃダメだからね?」


 現時点で既に《大空の向日葵》の人たちの僕を見る目が凄いからね?

 あとレイニーさんが「私にもチャンスがあるのでは?」みたいな目で見てきてるからね?

 そろそろ〈淫魔〉がバレるバレない関係なく色々マズイからね?


「ギルドのほうでもしっかり食事は用意してくれるっていうし、レジーナが僕たちと一緒に過ごすためにも頑張ってほしい」


「むぅ、主様がそこまでおっしゃるなら……この「宿」とやらの食事の少なさにも辟易していたところであるし……」


 そうしてレジーナは監督役である女性パーティ《大空の向日葵》の人たちに連れられ、街の近くの森林を拠点として復興活動をお手伝いすることになるのだった。


 とはいえ〈主従契約〉が結ばれている以上、様子見やらなんやらで頻繁に会う機会はある。騒がしい日々が続いていくだろうことは間違いなかった。


 そんなこんなでようやく色々と落ち着いたあと、僕はいよいよ本題に取りかかることにした。


 レジーナとの「戦い」を経由して意味がわかんないほど成長した僕のステータスについてだ。


 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル200

 

 所持スキル

 絶倫Lv10

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv10

 男根形質変化Lv10

 男根分離Lv8 

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv8

 適正男根自動変化(Lvなし)

 現地妻(Lvなし)

 ????

 ????

 ????



 ……うん、レベルに関して言えばもう中堅聖騎士と同格だ。

〈ギフト〉には明確な格差があるので同等の強さかと言われればわからないけど、異常な成長速度であることは間違いない。


 恐らく以前僕が予想した、「初めての相手」「強い〈ギフト〉持ち」「高レベル」と仲良くすればするほど経験値が上がるという予測が的中していたのだろう。

 でないとレジーナとの「一戦」でここまでレベルがあがったりしない。


 とまあ、相変わらず伸び方のおかしいレベルのほうはいいとして。

 問題は新しく出現したスキルのほうだった。

 なんなんだこれ……。


「……確か……〈????〉っていうのは……細かい条件が満たされてないからまだ使えないっていう……未発スキルだよね……?」


「うん、間違いないと思う」


 隣からステータスプレートを覗き込みながら言うアリシアに、僕は頷く。


 未発スキル。

 ほとんどあり得ないことだけど、僕みたいに急激にレベルが上がった際に低確率で起こる現象らしい。


 レベルに対して既存スキルの熟練度が低かったり、戦闘経験が浅かったりするとスキルが〈????〉で表示され、発現条件が満たされればある日突然使えるようになるのだそうだ。追い詰められた際の火事場の馬鹿力で覚醒することも多いらしい。


 これに関してはいつどんな風に目覚めるかわかんないし、そもそも名前だってわかんないんだから考えても仕方がなかった。


 問題は唯一名前の出ているスキルだ。


〈現地妻〉


 もう名前からしてヤバい匂いがプンプンする。

 いままでのスキルも名前の時点で終わってたけど、今回のスキルはまた別ベクトルで頭がおかしかった。現地妻って……。


 それに名前からスキルの内容が想像できないっていうのが痛い。

 これじゃあなにをどう念じればいいかわからないからスキルを発動させようがないし、効果の検証もできなかった。


「うーん、ちょっとお高くついちゃうけど、そろそろアレを入手するしかないかな」


「……アレ?」


「うん。〈商人〉のスキルが封じ込まれた魔具、鑑定水晶をね」


 言って、僕はアリシアとともに商業ギルドへと向かうのだった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――


 先日公開した第一部あらすじまとめですが、ご意見いただきまして登場人物まとめも追加しました。あらすじがあってもキャラがないとダメじゃん! ってことに言われて気づく体たらく 汗 

 ご意見ありがとうございました!



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