第38話 蠢く人影

 ダンジョンに寄生して秘密裏に勢力を拡大するアーマーアントの存在。

 しかもそれは第二世代であり、悪知恵をつけたアーマーアントの集団が既に各地に根付いている可能性が高い。


 そんな報告を受けたギルドは、当然のように大騒ぎになった。

 いますぐ第一世代の巣穴を見つけ出し、知恵をつけたアリの拡散を止めなくてはならないと。


 だが幸いなことに、各地に第二世代をバラまいていると見られる大本の巣穴はそれからすぐに見つかった。


「不幸中の幸いだ。元々、モンスターの出現異常傾向の原因を突き止めるためにうちの主力冒険者たちが各地を回っていた。その結果、西の大森林からモンスターが流れてきていると判明し調査を続けていたのだが、そこに君たちからの報告があがってきたのだ」


 執務室の椅子に座ったゴードさんが、僕とアリシア、レイニーさんに疲弊しきった顔を向ける。


「西の大森林はアーマーアントの主な生息地。なにかあると思い現地の冒険者に指示を出してみれば……見つかったよ。広大な地下空間が、大森林内にある複数のダンジョンに隣接するかたちで出現していた。索敵に特化した〈ギフト〉持ちによって、巣穴から第二世代が這い出てくるのも確認済み。間違いなく大本の巣穴だ」


 加えて現地では、ダンジョンから希にモンスターが逃げ出していることも判明。

 どうやら昨今のモンスター出現傾向異常は、アーマーアントの捕食に耐えかねダンジョンから溢れたモンスターが原因だったらしい。

 モンスターの出現傾向異常は各地で報告されている。

 第二世代の繁殖は思った以上に進んでいる可能性が高かった。


「第二世代がこれ以上増えないよう、まずは一刻も早く大本の巣穴を潰す必要がある。今回は私も現場で指揮を執る。君たちもすぐ現地へ向かってほしい」


「はい、もちろんです」


 こんな状況、捨て置けるわけがない。

 そうして僕たちは二度めの巣穴攻略に挑むことになった。


 そこになにが待ち受けているのか、知る由もなく。

      

      *


 大森林の地下深く。

 ヒカリゴケの淡い光が照らす地下迷宮には、異形のアリたちが無数に蠢いていた。

 

 その中にひとつ、異質な存在が紛れ込んでいる。  

 一人の少女だ。

 アーマーアントに腰掛け、運ばれてくる肉塊を豪快に貪っている。

 その容姿はあり得ないほどに整っていた。体型も人間の男が好む肉付きだ。

 頭から生える触角や身体の各部を守る金属質の外殻がなければ、王侯貴族でさえ求婚を申し込むほどの外見である。


「……ほぉ。人間どもが妾の根城に気づいたか。思いのほか早かったな」


 肉を頬張りながら少女が呟く。


「だがいまの人間どもにトップクラスの聖騎士など用意できまい。どれ、モンスターの肉にも飽きてきたところだ。根城を移る前に少し遊んでやろう」


 本来ならばアーマーアント・クイーンが居座るはずの空間で、少女が人外の笑みを浮かべた。


      *


 大本の巣穴がある大森林への移動は、風魔術師たちによる飛行魔法が使われた。

 本来なら大金を積まなければ利用できないその移動方法も、今回は緊急事態ということでギルドが負担。

 地域一帯の冒険者400名近くが大森林まで一気に運ばれた。

 本当ならお金だけでなく、国が聖騎士も派遣してくれれば万全だったのだけど……


「まさかこのタイミングで隣国が攻めてくるなんて……」


 間の悪いことに、帝都はいまそれどころではないらしかった。

 隣国からの急襲に聖騎士たちは厳戒態勢。

 アーマーアントの駆除は現地の冒険者に任されることになったのだ。


 けれど国の判断はあながち間違ってもいない。

 なにせ集まった戦力は、巣穴攻略に十分すぎるものだったからだ。


「君が軍隊型撃退の功労者か。話は聞いてるよ。よろしく頼む」


 大森林内部。

 巣穴への突入準備が進むなか、わざわざ僕とアリシアのところへ挨拶に来てくれたのは、今作戦の現場リーダー。

 ゴードさんが街一番と評する冒険者パーティ《大空の向日葵》のメンバーだったのだ。

 女性だけのチームながら全員がレベル90前後。レイニーさんの古巣でもあり、アーマーアントの巣穴攻略経験もあるベテラン勢だ。


 今回の作戦は彼女たち以外にも実力者が多く参加しており、いくら広大な巣穴でもそうそう苦戦することはないだろうと思われた。


「そういえばレイニー、お前いつまで試験官やってるつもりだ。うちに戻る気はないのか」

「試験官は今年をもって寿退社するつもりなので、そろそろそちらに戻ってもいいですね」


 一体誰と寿するつもりなんだ……。

 レイニーさんと《大空の向日葵》が交わす気心知れた会話に若干戦慄する。

 と、《大空の向日葵》のリーダーであるミリアムさんが「まあ雑談はこのくらいにして」と纏う空気を変えた。

 巣穴を潰す大規模作戦の準備が整ったと、連絡用の水晶が知らせてきたのだ。


「事態は一刻を争う。君としては魔剣の能力をあまり人前で使いたくないかもしれないが……全力で頼む」

「はい!」


 ミリアムさんに言われ、僕は冒険者たちの手で掘り起こされた巣穴の前に立つ。

 男根探知。

 限りなく細く伸びた男根が巣穴の中へと侵入していく。

 前回攻略した巣穴より遙かに広大な巣穴の探知には時間がかかったが、


「見つけた……女王部屋への最短ルート確保です」


 マッピングが得意な〈シーフ〉の力も借りて速効で地図を作成。

 各班で情報を共有したのち、ミリアムさんが号令をかけた。


「それではいくぞ! 巣穴攻略作戦、開始!」


 

 今回の作戦は、約400名の冒険者が大きく2つの班に別れている。

 ひとつは巣穴全体を空から見張り、第二世代の飛蝗型が一斉に逃げ出すのを防ぐゴードさん指揮の外部班。

 そしてもう一つがミリアムさんの指揮する巣穴突入班だ。


 僕も当然、アリシアやレイニーさんとともに突入班に参加し、巣穴をガンガン進んでいく。


「「「キイイイイイイイイイイ!」」」


 強力なアリたちが大量に押し寄せてくるが関係ない。

 僕の男根剣、それから《大空の向日葵》の力が凄まじく、レベル90相当のアーマーアント・カノンやフォートレスが押し寄せてきても相手にならなかったのだ。


 ただ、そこは腐っても飛蝗型を輩出した大規模な巣穴。

 女王部屋の手前まで辿り着いた僕たちの前に、無数の影が立ちはだかる。


「なんだこのアーマーアント・ガーディアンの数は……!」


 ミリアムさんを筆頭に、冒険者たちが一様に目を剥く。

 けどそれも仕方ないだろう。

 その広大な広間で待ち構えていたのは、優に20体を超えるアーマーアント・ガーディアンだったのだ。

 レベル120相当のモンスターが徒党を組み、他にも無数のアリを従えて巣穴攻略班に襲いかかる。


「さすがにこれは……! 形質変化! 形状変化!」


 僕は「特殊な魔剣」ということになっている男根を一気に変形させた。

 伸縮自在のアダマンタイト剣がガーディアンを一刀両断する。

 けどさすがに20体すべてを瞬殺とはいかず、僕は冒険者たちを守りながら叫んだ。


「ミリアムさん! 先に女王をお願いします! 女王さえ倒せば、ガーディアンの連携も崩れてぐっと戦いやすくなりますから!」


「すまない、ここは頼んだ!」


 さすがの状況判断力。

 倒れたガーディアンの横を駆け抜け、《大空の向日葵》が女王部屋へと雪崩れ込む。

 よし。

 これでこの巣穴の女王は討伐され、アリたちの連携も崩れて一気に戦いやすくなる。


 そう思いつつ、さらに男根剣を振るってガーディアンの数を減らしていたときだった。


「な、なんだお前は……!? まさか……ぐあああああああああああああっ!?」


「えっ……!?」


 突如。

 女王部屋のほうからミリアムさんたちの絶叫が轟いた。

 そしてそれきり、女王部屋からはなにも聞こえなくなる。


「一体なにが……!? アリシア!」

「うん……!」


 猛烈に嫌な予感がする。

 僕は刈り残した2,3体のガーディアンを冒険者たちに任せ、回復スキルの使えるアリシアとともに女王部屋へ急ぐ。


「な……っ!?」


 次の瞬間、僕らの目に信じがたい光景が飛び込んできた。


 女王部屋に蠢く無数のアリ。


 手足が吹き飛び、全身を血で濡らす《大空の向日葵》のメンバー。


 そして、


「おやおや、これはまた元気で若い生き餌が飛び込んできたものだ」

 

 頭から触覚を生やし、アーマーアントの甲殻に似た鋼色の鎧を身体から直接生やしたような、絶世の美少女。 


「まさか……魔族……!?」


 特級のイレギュラーが、助けの届かない地下深くで僕たちを待ち受けていた。




 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル150

 所持スキル

 絶倫Lv10

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv10

 男根形質変化Lv10

 男根分離Lv6

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv4

 適正男根自動変化(Lvなし)


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