森の賢者の優しい恋のお話

テディ

プロローグ

  太古よりナラタナ王国の王宮は空に浮かんでいる。

 巨大な魔石で作った土台の上に、森にかこまれた城がある。

 ドームのような結界がキラキラ反射し、

 細やかな輝きを太陽の光とともに地上に届けているのだ。


「そうよね、結界がなかったら狙われてしまうものね」

 今日も美しい光を浴びながら、アリシアは王宮を見上げた。


 王族以外は地上で暮らしている。

 様々な色のレンガで作った家に住み、

 森にかこまれて遠い昔から日々を営んできたのだ。

 王族を守るもの王宮で仕事をするものは、交代制になっている。

 魔石を利用した透明なエレベーターで、地上から王宮に通うのだ。


 アリシアは、そのエレベータがお気に入りだった。

 そこから見る地上の森も格別に美しい。

 濃い緑、薄い緑、黄色や青みがかった緑、色々な緑がある。

 豊かな色に心が暖かくなる自分にワクワクするからだ。


「今度はいつ見られるかしら?」

 大きな伸びをして庭の散歩を終えようとフッと息を吐いた。

 そして、今日こそ願いを叶えようと我が家を振り返る。


 少し離れたところからメイドがアリシアに声をかけた。

「アリシア様、そろそろ旦那様がお戻りになりますよ」

「そうね マリー。今日はお父様は早く帰るっておっしゃっていたもの。

 ゆっくり話す時間があって嬉しいわ」

「…… アリシア様 …… やっぱり諦めていらっしゃらなかったのですね?」



 マリーはアリシアが小さな頃から、そばに居てくれた。

 アリシアは陽気で快活な彼女が、とても好きなのだ。

 長く見てくれていることもありマリーのツッコミは剣のように鋭くなっていた。


「そうよ、私 絶対に諦めない !!」

 意気込むアリシアの姿を見て、マリーは盛大な ため息をつくのだった。


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