第15話
俺の動画が公開された翌日、不服申し立てを行なった空き巣犯の奥さんの代理人である弁護士から、マスコミ宛てに一通のFAXが届いた。
「マスコミ関係の皆さま、ネットで様々なご意見を投稿されている皆さまに対してお願いです。今回、不服申し立てが棄却されたことにより、青田さんは正式に無罪と法律によって認められました。私個人の意見を言えば、今でも『正当防衛』による不起訴はおかしいと思っています。
思っているというよりは思いたい。
夫はもう帰ってこない。
その事実となる行動を起こしたのは青田さんなのは間違いない。
だから、青田さんが夫を『殺した』という事実は変わらない。
だから、不起訴とは言え、青田さんには夫の命を奪ったことを一生、十字架として背負い、生活して欲しいと思っています。
しかし、日本は法治国家です。私刑は認められていません。国の法律機関が不起訴であると判断された以上、私はこの判断を受け入れます。
そもそも、発端は私の夫が空き巣に入ったことです。夫が空き巣という犯罪行為を起こさなければ、夫が亡くなることは無かったし、青田さんも人を殺してしまったという業を背負う事もなかった。
ただ、私が弱い人間だった為に、その事実から目を背けたくて、夫がいなくなった現実を受け止めきれなくて、どこにぶつけて良いのか分からない悲しみや混乱、怒りといった、あらゆる負の感情を被害者であった青田さんに全てぶつけてしまいました。
昨日、青田さんの動画を拝見し、青田さんの変わり果てた姿を目の当たりにし、この数ヶ月の地獄のような生活を送っていた事実を知りました。世間に公開されたくないような過去やプライバシー、嘘か誠か分からない様々な誹謗中傷にも耐え続けていた事も知りました。
また、青田さんは夫の命を奪った事実から目を背けずに生きていることを知りました。
だから私は、青田さんを
アナウンサーがFAXを読み終えると、最後に一言だけ意見を述べた。
「もうこの事件は法律上でも結果が出ました。当事者である人たちの意見も公開され、どちらも終わりにしたいと願っています。なので、私たちマスコミ始め、全ての人が当事者を責めたりすることは終わりにしましょう。
同じような事件が今後二度と起こらないように対策を考え、講じるのは専門家の方々がされていきます。
『罪を憎んで人を憎まず』
私たちはこの言葉の重要性や意味を今一度、理解して、行動していくことが求められているのではないでしょうか。」
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