全て僕の責任です

乃木希生

第1話

「あぁ、やる気でねー。何もかもが面倒くせー。」

俺は、PCを閉じるとベッドに倒れ込んだ。



いつからだろう。


こんな風に何に対してもやる気が起きず、怠惰な生活を送るようになってしまったのは。大学を卒業し、社会人として働き出した当時の俺は、もっと希望とやる気に満ち溢れていた。50歳頃にはセミリタイヤして悠々自適なセカンドライフを送るという野望も持ち合わせていた。その為に、起業して更なる成功を掴もうと粉骨砕身、努力に努力を重ねてきた。



しかし、世の中そう都合良くは出来ていなかった。もちろん、俺自身の甘さもあった。その結果が、倒産という事実だ。倒産により、失ったものは大きかった。お金に家、自信に生きがい、ありとあらゆるモノが一度に自分の中から、こぼれ落ちていった。


「34歳って良い歳なのに実家暮らしで生活費も入れずに、平日にこうやってただ何もせず、ベッドに寝転がって、ただただ生きているだけなんて、俺はもう終わってるなぁ。」



俺はそんな事を思いながら、浅い眠りに落ちていきそうになった時、一階から聞きなれない男の大きな声がした。


「何だ?」

俺は一階で母親がテレビを観ながら寝てしまい、リモコンを誤操作して音量を大きくしてしまったのではないかと思った。が、次に聞こえた声がテレビではなく、怒気のまじった声で緊迫したような雰囲気が流れているような感覚を感じた。


俺は物音を立てないように静かに一階に降りていった。すると、見知らぬ男の一人が母親を縛り上げ、もう一人が引き出しを開けたり、母親にお金のありかを聞いているようだった。


平日の昼間にまさか、成人男性が家にいるとは夢にも思わなかったんだろう。二人はドアを開けっ放しにしていたため、俺は部屋の様子を伺うことが出来た。すると、二人の手には銀色に光る刃物が握られているのが目に入った。


『まずは警察に通報だ。』

俺はまたゆっくりと階段を登り、自分の部屋に戻り、警察に通報した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る