第3話 時間逆行《リメイク》!

「やつら、動いたみたいだよ。朱美兄さん」

 

「朱美」と呼ばれたピジョンブラッドのザンナイトは獲物にしている巨大鉄球付きのフレイルを担ぎ上げて声高く叫んだ。


「上等じゃねえか! 生き残るのは俺たちかお前らか、ここで決着つけようぜ、イファさんよぉ!」

 

ブラックオパールのザンナイトはやれやれといった様子で見物を決め込んでいた。しかし、その理由はその直後に分かった。


「オラオラオラオラーッ! 雑魚は引っ込んでやがれぇーッ!」

 

朱美は両肩に装備された拡散型のビームキャノンを乱射し、鉄球付きフレイルを豪快に振り回しながら混戦している戦場へと自ら突っ込んでいった。

敵味方の位置を無視したような暴力的で破壊的な、戦いそのものを楽しんでいるような攻撃である。


「たぁーっ!」

 

朱美にアリルが攻撃を仕掛ける。

装着された二本の半月状のカッターブーメランを両手に持ち、投擲する。


「調子に乗るなよ!」

 

朱美は難なくブーメランを弾き飛ばすが、ブーメランは勢いを殺されることなくアリルの元へ戻る。


「そこだっ!」

 

朱美が狙いを定めると一直線に突撃した。


「なっ!?」

 

クリスタルが砕け散るような音と共に、朱美の鉄球がザンナイトの胴体を貫いた。

レッドベリルのザンナイトは自分に何が起こったのか理解できなかった。

気がついた時、すでに胴体を打ち貫かれ、宙にぶら下がっている状態であった。


「シエルッ!?」

 

アリルはレッドベリルのザンナイトを「シエル」と呼ぶと、同時に叫んでいた。


時間逆行リメイク!」

 

アリルの体に「南無妙法蓮華経」に似た文字が浮かび上がると、世界の色が反転したように景色が変わり、敵味方問わず動きが静止し、時間が停止した。

さらに意識を集中させると、それがまるでビデオテープを逆再生しているかのように巻き戻されていく。

 

次に世界の色が戻った時、朱美は今まさに自らの超能力を使おうとする場面であった。

アリルはドッと疲労感に襲われ、体中の力が抜けるのを感じた。


「そこだ!」

 

朱美がシエルへ猛スピードで突進する。


「シエル! 前方に全弾発射!」

 

アリルは残った力を振り絞り叫んだ。


「え?」


「殺されるわっ!」

 

「まだ」視界には何も見えなかったシエルだが、アリルの気迫に押されて体前方へ装備した武器全弾を発射した。


「な、なんだとぉーっ!?」

 

そこへ猛スピードで突撃してきた朱美がシエルの全火力をその体に受ける形となった。


「主砲、発射っ!」

 

レインが叫ぶ。アムルダートに装備された巨大な砲から圧縮高エネルギーキャノンが発射される。


「ぐがああああぁっ!」

 

敵クローンナイト部隊とともに、まともに動けなくなっていた朱美の体が光に飲み込まれた。朱美の鎧は粉々に砕け散り、そのままはるか下の地上へと落下していった。


「すまないアリル! ここは大丈夫だから、君は比呂弥の元へ行って!」


「でも、アムルダートを放っていくわけには」



「残りはザンナイト一人だけ、こっちにはまだ真理香たちもいる! だから早く!」


「ごめんなさい!」

 

アリルは輝く翼を広げるとスピードを上げ、戦場を離脱した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る