第34話 縞々をさがせ!-終
「素敵だね」
僕が思わずそういうと、怜ときははにかみもせず、意外そうな顔をした。
「そう? 第五ポートで人目を引かないようにね。だけど……」
怜は鳴子(なるこ)さんたちを見ながら言った。
そうだ。開拓団風よりは目立たないだろうけど、そもそも鳴子さんたちが付いてくるんだからその努力は台無しだった。
怜は確認するように言った。
「ヒョウ柄が鳴子さんに、背の高いのが仁さん、つなぎが遥さんね。遥さんにはようやく会えたわ……」
仁さんは穏やかな細い目で僕と怜を愉快そうにちらっと僕を見た。
僕は仁さんを捕まえるとこう聞いた。
「なんで仁さんまで来てるんですか」
すると仁さんはニコニコして悪びれずにこう言った。
「いや、叔母さんがお前も来いっていうから……。それにほら、ジーナが二日も食べてないんじゃ、俺がいたほうが何かと安心だろ?」
それを聞いて、僕は鳴子さんが怜のことで何か言ったのだな、と直感した。
「それじゃあんたの家まで案内しとくれ」
鳴子さんの号令で僕たちは『かわます亭』を出た。
怜はなぜか鳴子さんと遥さんに挟まれ、僕と仁さんが先を歩くことになった。
僕と仁さんとは特に話すことはなく、長い沈黙に気まずくなって何か言おうと仁さんの方を向くと、仁さんの機嫌のいいニコニコ顔の前に言うべきことを忘れた。
仁さんは沈黙が特に気になる人ではないようだった。
僕と仁さんとは対照的に、後ろの三人は意外にも話がはずんでいるようだった。
「えー、それじゃ鳴子さんと遥さんは双子なんですか!」
怜のころころとした笑い声が聞こえてくると、遥さんがこういうのが聞こえた。
「あたしは機械いじりが好きでね、鳴子はからきしダメで。だけど占い師ってのは開拓団の大切な稼業だからね、そっちは鳴子が継いだのさ」
「遥さんはじゃあ子供のころからエンジニア。じゃあ、バイクも?」
遥さんと怜はえらく気があったようだった。
怜は愉しそうに笑っていた。
「まあそうだね、それしか能がないんだもの。それでお前さんはどこに住んでるんだい」
僕は、思わず怜が何と答えるかできる限り神経を耳に集中した。
「私? 私は辺境マージナルよ。第十五ポートと第二ポートのあいだぐらいね」
僕は怜をちらっと見た。
怜は目でにやりと笑った。
辺境マージナルとは、星間連絡船の発着する地域だ。
広い土地が必要なので、僕たちの住む地下都市からは離れている。
たとえもし、怜が『はじめの人たち』だったとしても、うそでも辺境マージナルに住んでいると言えば地上で出会ったのもそれほど不自然ではない。
連絡船で働く人々は、地上に出ることは珍しくないからだ。
最初の出会いから、僕は混乱しっぱなしだった。
いまでは、怜がほんとうは『はじめの人たち』なのか、『センター』なのかもよくわからなくなった。
でもそうだ、怜は最初に出会ったとき、宇宙線防護服を着ていなかったのだ。
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