アドナと最終戦編

第85話 唯一王 再びクラリアへ

 俺たちは俺が活動していた街、クラリアへと帰ってきた。


 一旦カフェで食事と休憩をとってからギルドへと向かう。

 久しぶりのクラリアのギルド。みんな元気にしているといいな……。


 そしてギルドにたどり着く。いろいろな冒険者たちが話したりしていてにぎやかだ。

 そのまま受付へ。


「フライさん、お帰りなさい」


 そこにいたのはピンク色の、ぽわぽわとした髪質。ギルドの事務員の人。リルナさんだ。

 そして彼女の姿を見るなり話しかける。


「すいません、頼みたいことがあるのですが──」



 まず俺がここに来た理由。まずはレディナとレシアのギルド登録をフリジオ王国、ブラウナからここに移すことだ。今のままでも特に問題はないが、書類の手続き上同じパーティーになるなら一緒の街でのギルド登録をしたほうが何かと便利だからだ。


「では、手続きのほうをしてきます。数十分ほどで終わると思いますので、少々お待ちください!」


「わかりました」


 そしてリルナさんは書類手続きのため事務室へ。ちょっと時間があるみたいだし、遠征の準備のことでもみんなと話すか。


 そういってフリーゼたちのほうへ向かおうとした瞬間、入口のほうから俺の名を誰かが叫んできた。


「おう、フライ。いい度胸だな、のうのうとこの街に戻ってくるなど──」


「ア、 アドナ──、久しぶりってどうしたんだよ。その姿」


 そこにいるのはアドナだ。しかし俺が驚いたのはその姿だ。髪は手入れされておらずボサボサ。

 服装も依然と比べて服が安っぽくてボロボロ。どこかやつれている顔つきで俺をにらみつけている。


 そしてアドナは俺の姿を見るなりずかずかと迫ってきた。


「貴様が仕掛けた卑怯な罠で俺は冒険者としての地位をはく奪。ミュアとキルコはEランク冒険者まで格下げした挙句他の雑魚パーティーへの移籍を強制。お前の卑怯な罠のせいで全部めちゃくちゃ。どうしてくれるんだ。責任とれ、責任とれ!!」


 アドナは今までの冷静な性格が嘘だったかのように感情的になっている。


「お、落ち着けアドナ。お前らしくないぞ」


「お前なんかに何がわかる。これが落ち着いていられるか。俺は仕事を失った。冒険者として金を稼げなくなり、違約金を請求され、俺は一文無し。服も売って身づくろいをする金もない。全部、全部全部お前のせいだ。ボッコボコにして首を引きちぎってやる。俺の千倍の苦しみを味合わせてやる」


 そ、そんな──。逆恨みもいいところだ。全部自業自得じゃないか。俺が何をしたというんだ。


「今度こそ貴様との決着をつけてやる。勝負しろ」


「勝負って決闘でもするのかよ」


「それは、私が説明するわ──」


 背後から誰かの声。

 すると突然フリーゼが背筋をピクリとさせた。

 振り向いて後ろに早足で歩き始める。


「ヴィーザル。どうしてあなたがここにいるんですか?」


 にらみを利かせながら話しかけたのは悠々と腕を組んでいる大人の女性の人。

 ピンク色のロングヘアで、大人びた表情。


 そしてフフッと微笑を浮かべた後、余裕そうな表情で話し始めた。


「あらあらフリーゼ。私の正体を見破るなんてさすがじゃない」


「質問に答えてください。あなたはなぜいるのですか? ヴィーザル」


 俺は状況をつかむことができず、おろおろしてしまう。すると隣にいたレディナが耳打ちをして俺に話してきた。


「ヴィーザルっていうのは熾天使の一人よ」


「し、熾天使? じゃあやばいやつなんじゃ」


 その言葉に驚く。つまり俺たちの敵ってことだよな。


「ええ、と言っても熾天使の中でも身分は低いし戦いもそこまで強くはないわ。私で普通に勝てるくらいの強さよ。だから主に偵察や諜報活動なんかを担っているわね」


「わたしたちを殺しにきたのですか?」


 するとヴィーザルがゆっくりとこっちに向かってきた。


「フフフ、そのつもりだったらこんなところに来ませんよ。夜襲とか人質とかいくらでもやりようはあります。私が来たのはフライさん。あなたに勝負を申し込むためです」


「勝負?」   


「はい。ここから遠く人里離れた山の奥地にシャフルスク村という場所があります。秘境地帯と呼ばれ、独特の文化を築いている村です。そこには門外不出の秘密を持った力があるものがあります」


 ヴィーザルはその地方について話し始めた。そこには赤と青二つの色に光るドクロがあるのだと。

 それは大変神秘的な光を放っているらしく、独特な魔力を持っているらしい。



「そして水晶のように光るドクロ。これをどちらが多く集めてくるかの勝負です。ちなみに二対二の勝負です。ですのでそちらは誰と誰が行くのか選んでくださいね」


 ヴィーザルの説明が終わると今度はアドナが話し始める。


「俺は。こいつから力を買った。ドクロを取ったら返す前借りとしてな。

 このドクロを集めることができなければ金を返せない。もし俺が万が一、万が一負けるようなことがあれば、俺は奴隷の首輪をくくることになっている」


 その言葉に俺は言葉を失ってしまう。奴隷の首輪。そんなものをもらったら人生は終わったも同然だ。

 そんなこと、いくらアドナでもさせるなんてできない。


「待てよ。別にアドナが奴隷になったところで俺にメリットなんてない。こんな勝負、受ける理由がわからない」


「私が貸したのです。当分の軍資金と強力な魔力を与える代わりに、ドクロを持ってこれなかったら借金を背負ってもらうと。ドクロを三つ集めれば返せる金額です。アドナさんの実力ならできますよ」


 確かに、それなら勝敗に限らずアドナがドクロを持って帰れば借金を背負わずに済む。それでも、俺達に勝負を引き受ける理由が見当たらない。


 するとヴィーザルが衝撃的なことを口にした。


「もしこの勝負を引き受けないというのなら、このギルドが精霊たちを無許可で冒険者登録していることをばらします。世界ギルド統括協会に」


 その言葉を聞いた瞬間の背筋に電流が走った。

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