第77話 唯一王 これからに備える
取りあえずよくわからないけど、この世界に絶望していることは理解できた。
そしてこの文章から出て来た言葉、大天使と
だからフリーゼに聞いてみた。
フリーゼの肩をツンツンと叩いて質問する。
「フリーゼ、この言葉の意味わかるか? 何か物騒なことが書いてあるみたいだけれど──」
フリーゼは、文字を解読したときから唖然としている。やはりただものではないのだろうか。
そしてしばらくたつと、フリーゼはそっと口を開く。
どこか暗い表情で。
「大天使とは、私達を束ねる存在誰からも尊敬される存在。私達の教祖様のようなものです。この世界を包み込む優しさと、強き魔力。そしてどんな敵対する人物でも包み込んでしまう優しさを持っています」
「そんな人物がいたんだ……」
「ちなみに一人の人間が永遠に勤めるのではなく、天使様にも家系というものがあり、代替わりしているんです。最近になって新しい天使が大天使に即位しました」
そう考えるとこの世界の王家とそこまで変わらないな。寿命とかを抜きにすれば。
説明しているフリーゼの表情が、どこか険しい。何か嫌な思い出もあるのだろうか。
「天界とは、私達が住んでいた場所。大天使とは、私達精霊を束ねる存在です そして、この石板を書いたのが大天使を信仰する集団の一つ。熾天使。そして、彼女たちは、大天使を信仰するものの中でも少々厄介な存在なのです」
するとフリーゼの表情が若干暗くなる。
「私達精霊は全員が大天使様を絶対的な存在として信仰をしております。ですが別の神様を信仰するものに無理して強制したり、弾圧をしたりしません。あくまで共存し平和に過ごすことを第一に考えています」
確かにそうだ。フリーゼたちが他人に信仰を押し付けたなんて話、見たことも聞いた事もない。
「しかし熾天使たちは違います。別の神様や女神を信奉するものを異教徒と認定して弾圧をしたり、改宗を強制し、従わなかったものに拷問を与えたり、殺害にまで至ってしまうこともしばしばありました」
なるほどね、だからフリーゼは嫌な表情をしているのか。
確かに、どこの世界にも一定数いる。自分の信じるつまりモノ以外を一方的に敵視し、弾圧を加えたりしているやつが。過激派というやつだ。
しかもこいつらは利益や金目的ではなく正義感で暴力をふるう。だからどれだけ厳しい取り締まりをしたり罰を与えても弾圧をやめない。
おまけにそいつらがこの世界を標的にしている。
ちょっと考えればどんな行動に出れば想像がつく。
そしてフリーゼは真剣な表情になり、俺の方を向く。
「
そうだな、自分の信仰以外認めない。この世界に解き放たれたのだ。そしてこの世界に干渉をしようとしている。これは一大事になりそうだ。
どんな理由があれ、止めさせないと。
「わかった。実際になれるかどうかはわからないけれど、やれるだけのことはやってみるよ」
「ありがとうございます。私達も、精一杯力になります。頑張りましょう」
フリーゼの言葉に他の三人も首を縦に振ってくれた。
とりあえず文字の解読はこんなところだ。それから、遺跡の中をもう少し探索。
所々に金銀の食器や飾り物が見つかる。これは高く売れそうだ。資金の足しにはなりそうだ。
そして少しの時間が過ぎる。散策はあらかた終わったし、あまり遅いと日が暮れちゃう。そろそろ引き際だな。
「これで遺跡は調べつくしたわね。そろそろ帰ろうかしら」
「はい、レディナさんの言う通りですね──。そろそろ日も暮れてきそうですし──」
「そうフィッシュね」
確かに、夜の山道は遭難とかの危険があるし、そろそろ帰らないと。
そして俺たちは描かれた内容を記録した後、出発の準備をする。
「じゃあ行きましょう。やり残したことはないわね」
「大丈夫だレディナ」
そして俺たちは、遺跡を去っていく。
暗い洞窟を抜け、日が沈んできている道を引き返していく。
「フライさん、どうかしましたか?」
「いいや、考え事をしていただけだよ」
フリーゼ達と一緒に道を歩きながら、俺は考える。
しかし大変な事になっちゃったな……。
世界を滅ぼそうとする勢力がこの世界に来ているとは。
恐らくだけど、強さだって今まで戦ってきたやつよりずっと強いはず。
それに数日後にはノダルとの決戦も控えている。負けてしまったらレディナがひどい目にあってしまうという条件付きだ。
どちらも絶対に負けるわけにはいかない。勝たなきゃいけない。
だから、もっと強くならなきゃ──。それも一人で強くなるのではなく、みんなで、チームとして強く。
幸い金になりそうなものを手に入れたのでしばらくの生活資金は手に入った。
明日からチームの強さを強くするためにいろいろ特訓しよう。
各々の実力を上げたり、連携を高めたり。
大変だろうけれど、これからも頑張っていこう。
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