ブラウナ編
第64話 唯一王 新たな土地へ
俺達はあれからしばらくして遠征のための資金集めや準備などを行う。
新たな精霊と出会うために。
すでにレディナから新たな精霊の話は聞いている。
「新たな精霊はノダルのところにすでにいる。それは分かっているわ」
「それで、その精霊について、他にわかっていることは?」
レディナは困った表情になり言葉を返す。
「それ以外はわからないわ。これだって、彼の知り合いから聞いただけだもの」
今その人がどんな状況になっているかはわからない。だからやるべきことは一つ。行ってみるしかない。
「──ですね。フライさん」
「そうフィッシュ。フリーゼの言う通りフィッシュ」
他の二人も賛成してくれた。それから、新しい精霊を見つけるための活動がスタートした。
まずはクエストをこなして資金集め。
二週間ほどで遠征のための資金は確保できた。フリーゼたちがいたおかげで、強敵に遭遇しても倒すことができた。
そして俺たちは冒険へ。
馬車を使い、移動すること一週間ほど。
俺達は目的の地、ブラウナへとたどり着く。
今まで見てきた街より派手さはなく、落ち着いた印象だがかなり大きな街だ。
いろいろな人がいて、賑わっているのがわかる。
そしてロータリーのある中心部で降ろしてもらう。
「たどり着いたよ、兄ちゃんたち」
「ありがとうございます、案内人さん」
俺は運賃として金貨を十五枚渡す。運転手は金貨を数えると手を振ってこの場を去っていった。
「じゃあな。元気にするんだよ。兄ちゃんたち」
「とりあえず、ブラウナについたわね。それで、これからどうするの?」
レディナの言葉に真っ先に反応したのはハリーセルだ。お腹を押さえながらぴょこぴょこと飛び跳ねる。
「私、お腹空いたフィッシュ。どこかで食事をしたいフィッシュ」
「待て、気持ちはわかるけどまずは宿を探そう。食事はその後ゆっくり取ればいい」
俺だってしばらく食事をとっていなくてお腹が空いている。しかしまず泊まる宿の確保が先だ
そうしないと最悪野宿をすることになりかねないからだ。早い者勝ちな以上早めに宿は確保していきたい。
食事は泊まる場所が決まったらゆっくりと取ろう。
そして俺たちは街を歩き宿を探す。運が良かったようで歩いて五分ほどのところに値段が手ごろなホテルを発見。
フリーゼが受付の人に質問する。
「四人です、大部屋でもいいので部屋は空いていますでしょうか?」
「大丈夫ですよ。すぐに手続きをしますね」
そして俺たちはこの街のギルドについて場所などを聞いた後、部屋へ。
それからは、食事をとる。
おいしそうなパスタを食べながら話す。
「んで、この後はどうするのフライ」
レディナの質問にパスタを飲み込んだ後、少し考えてから言葉を返す。
「とりあえずギルドへ行こう。そこで冒険者たちにいろいろ聞いてみよう」
「そうね、レシアのこと、すこしは分かるかもしれないし」
レシアとは新しい精霊のことだ。彼やノダルの情報、わかるといいな──。
そんな淡い期待を抱きながら食事をとる。ここの食堂、料理がとてもおいしい。食事をとるときは、ここでとった方がいいな。
そして食事後、俺達はギルドへ。
いろいろな商人たちが出店を開いている商店街を抜けると、その場所にたどり着く。
「ずいぶんと大きいギルドね」
レディナの言う通り、ここのギルドも俺たちがいた王都のギルドに負けないくらい大きい。それに人も多くにぎやかな場所だ。
俺達はすぐにギルドの中に入る。
「すいません──」
そう挨拶をして中に視線を向ける。
剣や斧を持った冒険者たちがにぎやかに話していたり、掲示板を眺めていたりする。
そんな光景を眺めていると、フリーゼがトントンと俺の肩をたたいてきた。
「どうしたの、フリーゼ」
「あのパーティー、キルコさんとミュアさんじゃありませんか?」
フリーゼが指さした方に視線を向ける。確かにそうだ。
キルコとミュア。他に剣や斧を持った冒険者が数人。
異国の地で出会った元仲間。とりあえず話しかけてみるか。
「キルコ、ミュア。久しぶりだな」
俺の叫び声に二人はすぐに視線をこっちに向ける。
「フライ。ここに来ていたんだ」
ミュアが安心したようなはっとしたような表情で言葉を返す。
そして俺たちはミュアたちの元へ。男の剣を持った冒険者が話に入ってくる。
「どうしたの。この人知り合い?」
「うん。前のパーティーで仲間だったフライっていう人」
「そうなのか。じゃあ彼らも元Sランクってこと?」
「違うわ。私達はフライが独立してから仲間に入ったの。元Sランクはフライだけよ」
「レディナの言う通りフィッシュ」
するとキルコがこっちに向かってきた。腰に手を当て俺の顔を見ながら話しかけてくる。
「久しぶりねフライ。そっちはうまくやっているの?」
「まあね。そっちも新しいパーティーで活動し始めたんだ」
すると、ミュアがこれまでのことを話し始める。
「あの後私とキルコは相談したの。これからどうしようかって」
そう言えば、以前のクエストでウェルキを失ってから彼女たちは活動休止状態になったと聞いた。
「それでね、私たちパーティーは実質解散。だから別のパーティーで拾ってくれる人がいないか探していたのよ」
「キルコの言う通り、私達を受け入れてくれる人たちを探していたら、丁度この『アドス』ってパーティーで後衛を二人募集していて、一緒に組むことにしたの。新しくもう一度やり直すことにしたの」
「ああ、俺達は新参者でね。メンバーが足りなかったんだ。主に後方で戦える奴が」
剣を持っているリーダー格の冒険者が話に入る、そ、そうなのか──。すると斧を持っている筋肉質な男の冒険者が自慢げに話す。
「おおっ、この姉ちゃんの元仲間かい。この二人、元Sランクだけあって術式の威力も高いし技も正確。あっという間にDランクへと昇格になったよ。世話になってるよ」
そうなのか。二人が活躍できているなら何よりだ。他のメンバーたちも、いい人そうで悪いやつといった印象ではない。
それならば、特にかける言葉はない。
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