フリジオ王国編

第34話 唯一王 新たな精霊と出会う

「ここが、フリジオ王国か」


「──そうみたいですね」


 俺たちは準備を終え、馬車を手配。そして数日かけてフリジオ王国、王都クラムに到着した。

 馬主に金貨十枚の報酬を渡し、街を歩き始めた。


「おおっ、なんかおしゃれできれいな街だフィッシュ」


 その街並みを見てハリーセルが歓喜の声を上げる。

 街並み一つ一つがとてもきれいで、おしゃれな雰囲気だと俺も思う。


 確かこの街クラムは文化の中心といわれていたんだっけ。それだけあってとても華やかな街だと思う。



 そして街を歩き始めるとフリーゼが質問をしてくる。


「そういえば、街についてからどうすればいいのか聞いていません。どうすればいいのですか?」


「とりあえずギルドに行こう。精霊のことについてわかる人が出るまで聞き込み調査をしよう」


 この街に俺たちの知り合いなんていない。地味なやり方だけれど、それ以外にない。

 疲れるかもしれもしれないけれど、頑張ろう。


「そうですね。それしかないと思います。ではいきましょう」


 そして俺たちはギルドへ。

 歩いて三十分ほど。俺たちがいた街のギルドより一回り大きく、ちょっとファンシーな、そんな小ぎれいでいい雰囲気のギルドにたどり着く。



 すぐに扉を開けると、いろいろな冒険者がいる。

 掲示板の前でクエストを探していたり、受付の人と話していたり。机で話し合っていたり。



「とりあえず、聞いてみようか」


 俺たちは机で談笑している冒険者に精霊について聞いてみる。すると──。


「ああ、確か聞いた事があるよ」


「なんか、今は一人で行動しているみたいよ」


 あっさり情報を聞き出せた。これは予想できなかった。何か罠なんじゃないかと疑うほどだ。


「すいません。この街では精霊ってそれほど有名なのですか?」


 フリーゼも疑問に思ったのか問いかける。

 斧を持った中年の冒険者が、何の迷いもなく答えた。


「まあね。噂にはなっているよ。会いたいのかい。確か──」


「街の図書館によく現れるって聞くよ」


 隣にいるお姉さんが言葉を遮るように答えた。


「分かりました。ありがとうございます」


 他に当てがあるわけでもないし。とりあえず図書館に行ってみよう。そこで聞き込みをすれば、何かわかるかもしれないし。


「フライさん。図書館に行くということですね」


「ああ、行ってみよう」


 それから俺たちは会話をした冒険者に図書館の位置を教えてもらった後、ギルドを出た。

 なんかあっさりわかっちゃったな。後で変などんでん返しがないといいが──。



 ギルドを出た俺たち。にぎやかな商店が連なるエリアや、偉い人が集まる官庁街を抜けると、その場所にたどり着いた。



「ここ、みたいだね」


 古風なつくりだが、街の中でも巨大で権威がありそうな建物。

 高さも五階くらいまではありそう。


「とりあえず、入ってみましょう」


「そうだね」


 そして俺たちは中へと入っていく。

 おしゃれな雰囲気の図書館。


 精霊が誰だかわかるのはフリーゼとハリーセルだけのため、二人の後追いで図書館の中を探る。

 まず一階。いろいろな昔の本が置いてあるエリア。身分が高そうな人をちらほら見かけるが──。


「いません。上の階に行ってみましょう」


「そうフィッシュね」


 俺たちは階段を上がり二階へ。

 まずは化学に関する本が保管されているエリアを探索するが、それらしき人はいない。


 それから二階のテラス席。ガラス窓から外を一望できるカウンター席、その人物はいた。

 一人の赤髪の女の子をフリーゼが指をさす。


 肩までかかったセミロングで、少々ふんわりとカールがかかった印象だ。

「おそらくはあの人物よ。彼女が精霊の一人よ」


 あの人か。背中しか見えないからどんな人物かわからない。

 変な人じゃなければいいな──。


 俺たちはその人物に近づく。フリーゼがその人物の肩をツンツンと叩くと、その人物はこっちを向いた。


「何よ──、ってあんたフリーゼ。なんでここにいるのよ!」


「レディナ。あなただったのね」



 少々釣り目で、淡い赤色の瞳をしている女の子。

 ふんわりとしたカールの髪と相まって、どこか大人びた少女という印象だ。



 レディナっていうのか。

 フリーゼとハリーセルを不思議そうな表情で見つめながら言葉を返し始める。


「あなたたち、どうやって遺跡から脱出したのよ。この男の人?」


「はい。あなたこそ。どうして一人でいるのですか?」


 その言葉にレディナは警戒した素振りで左右をきょろきょろし始める。そして俺たちにぐっと近づき、ひそひそ声で──。


「悪いけど、こんな人が多い場所で話せることじゃないわ。屋上に人がいないところがあるからそこで話しましょう」


「分かりました」


 確かに正論だ。この中に精霊の情報を悪用しようとしているやつらがいる可能性だってある。


 そして俺たちは階段を登っていく。

 五階の上、階段の先のドアを開ける。


 キィィィィィィ──。


 その先は、ところどころにベンチのある屋上となっていた。

 柵からは街を一望でき、眺めはいい。


「ここならだれもいないから、思う存分本音を話せるわ」


 確かにほとんど人気はなく、盗み聞きをされる心配はない。

 人がいない場所のベンチに腰掛け、話が始まる。


「とりあえず自己紹介をするわ。私はレディナ。精霊の一人よ。よろしくね」

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