第35話 一緒に歌いましょう!!
私、火花晴は今、メタバース内にある小さな控室内に他のメンバー達と一緒にいた。
今夜は私達スピアーズライブである”SPフェス”が開催される日であった。
このライブには、先日釣り対決のコラボ生配信をした草プロのシズクがゲスト出演する為、私達はこれから始まるライブへの期待感と同時に、少し緊張もあった。
「いよいよ始まるね……」
「そうね。今夜のライブは絶対に成功させましょうね!!」
私の問いに、先日正式に草プロ行きを断ったソラが答えてくれた。
「そう言うソラこそ、今晩はミスなんてするなよ」
「ミッ、ミスなんて、草プロにもスカウトされたこの私がライブ中にミスなんてするわけないじゃない!!」
その後、ウミがソラに対してライブ中にミスをするなと言うと、それを聞いたソラは恥かしそうに反論をした。
「まぁ、それもそうだね…… それはそうとして、ソラが草プロに行かずにスピアーズを選んでくれた事は内心嬉しいと思っているし、何よりもこれからもずっとソラと一緒にスピアーズとして活動が出来る事が凄く嬉しいと私は思っているよ」
「ウッ、ウミ……」
「だからさ、今日のライブは絶対に成功させるよ!!」
「そのつもりよ!!」
その後、ソラがスピアーズに残る道を選んでくれた事に対してウミが照れくさそうに本音の気持ちを伝えると、ソラは凄く嬉しそうな表情を見せた後、ウミとソラは2人でお互いの拳をぶつけ合うフィスト・バンプを行った。
「やっぱり、スピアーズにはあの2人は必須の存在だね」
「だね。ウミとソラと言えば、昔からお互いがライバルの様に競いつつ、お互いを信頼し合っている名コンビだからね」
そんなウミとソラの2人の関係はユキの言う通り、スピアーズには欠かせない存在であるのと同時に、私やユキには持っていない凄さも持っている。
そんな感じで私達が話をやっていると、そろそろSPフェスが始まる時間がやって来たのか、マネージャーの菫さんが控室に入って来て、私達に呼びかけた。
「そろそろライブが始まるけど、みんな準備はバッチリかしら?」
「勿論、バッチリだよ!!」
菫さんの呼びかけに答えた後、私はスピアーズの他のメンバー達と一緒に円陣を組んだ。
「それじゃあ、いっくよ……」
「スピアーズ、ファイッ!!」
私達4人で円陣を組んだ後、私の掛け声に続き、皆で気合の掛け声を言った。
「じゃあ、ライブに行きますか」
「そうね。多くのファン達を待たせるわけには行かないからね」
「今日のライブ、一体どれだけの人が来てくれているかな?」
「きっと凄くたくさんの人が来ているよ」
そして、円陣を終えた後、私に続き、ソラとユキとウミの4人は小さな控室から多くのファン達が待っているライブステージへと移動をしたのであった。
私、森崎由亜は今、AIのリーフィと一緒に火花さん達スピアーズ達とシズクが出演する、メタバース内で開催されるSPレディオ主催のSPフェスを見に来ていた。
今回は早川さんのおかげもあり、私達はスピアーズやシズクの活躍を特等席から観る事が出来た。
そんな特等席には、AIのリーフィだけでなく、私の学校の友達も特別に招待をする事が出来た為、私は親しい友達の何人かをライブに招待をした。
私はリーフィと一緒に友達と軽く話をしながらライブが始まるのを待っていた後、そろそろスピアーズのメンバー達がライブステージに出て来るというアナウンスが流れた為、私達はスピアーズの皆が出て来るのを待つ事にした。
「ユア、いよいよ始まりますね」
「そうね。どんなライブを見せてくれるのか楽しみね」
そして、しばらく待っていると周囲が一瞬暗くなった直後、ステージ上が光り出し、明るくなったステージの上には火花さん達スピアーズの4人の姿があった。
「みんなぁ!! 今日は私達のライブを観に来てくれて、あっりがと~うっ!!」
”キャアァッ ハルちゃ~んっ!!”
スピアーズのリーダーである火花さんがステージの上からライブを観に来てくれた観客達に向かって元気よく挨拶を行うと、周囲からは黄色い歓声が飛び交った。
ステージ上に立つ火花さん達スピアーズのライブ衣装は、メンバー達のイメージカラーに合わせた夏にピッタリな浴衣風のアイドル衣装であった。そんな中でも、リーダーである火花さんはピンクのベレー帽を被り、また虹川さんの衣装はスカートの前がオープン状態の前貼りが丸見えの特殊な形状の衣装という、同じ様な衣装でも1人1人の特色の違いがあった。
その後、夏に相応しい賑やかな曲が流れ出し、スピアーズの歌が始まった。
「みなさ~んっ、がんばってくださ~いっ!!」
スピアーズの元気が湧いて来る様な勢いの良い歌が始まると、再び会場内からは黄色い歓声が飛び交った。それと同時に、私の隣にいたリーフィが両手で握っていたペンライトを他の観客達の様に強く上下に振っていた。
今日の昼間、リーフィは何か忙しそうだったけど、ペンライトしか持っていない以上、このライブの為に応援グッズを作っていたとは考えられないし、ホント、一体何をしていたのかしら?
そんな隣でスピアーズの歌を聴きながら盛り上がっているリーフィの様子を観ながら、私はふと思った。
そんな事を思いながらリーフィの様子を観ていた時、リーフィは私の方を振り向き、握っていたペンライトの片方を私に向けて指し伸ばした。
「どうしたの? リーフィ」
「ほらっ、ユアも一緒に盛り上がりましょ!! ちょうど2本持っていますから1本貸してあげます」
「あっ、ありがとう、リーフィ」
「だから、ユアも皆さんと一緒に夏の最後の思い出となるライブを思いっきり楽しみましょ!!」
「そうね、リーフィ。せっかくのライブ、思いっきり楽しまないとね」
そして、リーフィからペンライトを受け取った後、私はリーフィや他の観客達と同様にステージ上で歌って踊っているスピアーズ達にも分かるくらいに強くペンライトを振った。
この夏の間、スピアーズのメンバー達と過ごした日々を思い返しながら、私は普通のファン以上の特別な関係となったスピアーズのメンバー達に大きなエールを送りながら、リーフィや他の観客達同様に、スピアーズのライブを楽しんだ。
その後、4曲目のスピアーズの歌が歌い終わった後、ステージ上が暗くなり、スピアーズの歌は終了した。
そして、再びステージ上が明るくなった時、そこにはスピアーズのメンバー達と入れ替わる様にして、シズクが立っていた。
「さぁ、ここからは、この私がみんなを盛り上げちゃうよ!! ライブはまだまだ始まったばかりなんだからね」
”シッ、シズクちゃんだぁっ!!”
”キャアッ、シズクちゃ~ん!! こっち向いてぇ!!”
シズクの登場に、周囲の観客達は再び大きな歓声を上げた。
「ユア、シズクが出てきましたよ!!」
「シズクさん、頑張ってくださ~い!!」
シズクの登場に喜ぶリーフィと同様に、私も先日の一件の事を思い返し、シズクの登場を盛大に喜びながらステー上にいるシズクに向かって居場所をアピールする様に、私は思いっきりペンライトを振った。
そんなシズクの衣装は、黒いペレ―帽を被りビキニの様なオシャレな黒いウェアを装着しゴシックなミニスカートに黒いニーソといった、お腹が露出した全体的に漆黒のゴシックな衣装であった。
そんなシズクが歌う歌は、先程のスピアーズとは異なる大人の雰囲気が漂う夏をテーマにした歌であった。
そんな感じで、私達はスピアーズの次に登場をしたシズクの歌を聴きながらSPフェスを楽しんだのであった。
そして、3曲目のシズクの歌が終わり、ステージの明かりも消え周囲が暗くなった為、そろそろSPフェスが終わる頃だと私は思った。
「これでライブも終わりね。リーフィ」
「いいえ、ライブはまだまだ終わらないです」
「えっ!? そうなの?」
「そうです。ユア、ステージへ行きますよ」
「えっ!? えぇぇっ!!」
ライブが終わったと思い、リーフィに話しかけた直後、リーフィがペンライトを握っていない方の私の手を掴み、リーフィは羽を使って観客席から飛び立った。
「ステージって!? リーフィ、どういう事なの!?」
「ユア、一緒に歌いますよ。早川さんには事前に許可を取っていますから大丈夫です」
「歌って、私、歌なんて歌えないよ」
「大丈夫です。私と一緒になれば、歌を知らないユアも歌を歌う事が出来ます」
「一緒になるって!?」
「そのまんまの意味です」
私の手を掴んだ状態で観客席から飛び上がったリーフィは、暗くなったライブ会場内の中、多くの観客達の頭上を飛びステージ上を目指して飛んでいた。
そして、ステージの上の方まで来た時、突然リーフィの身体が光った。
その後、一瞬の眩しさが消えると、ライブ会場の周辺は再び明るくなっていたが、私の目線にはリーフィの姿はなく、代わりにSPフェスに来ていた多くの観客達の姿が私の目線に飛び込んで来た為、明らかに目線が先程とは異なっている事に気がついた。
それと同時に、ステー上に突然現れた謎のキャラクターの姿を見た観客達はざわつき始めていた。
「ちょっとリーフィ、これどういう事?」
「ステージ上で一緒に歌を歌う為に、私とユアはひとつになりました。分かりやすく言うと、私達は合体をしたのですよ」
「えっ、合体!?」
そう言った後、リーフィが私にも合体後のアバター姿が分かる様に、そのアバターのモデルを私にだけ見える様に表示をしてくれた。
その姿は、少しだけ大人びたリーフィの外見に髪はおさげからロングヘア―に変わっただけでなく、背中に装着している妖精の羽も天使の羽に変わっていた。また、普段リーフィが身に着けている葉っぱの髪飾りは、ピンクの可愛らしい花の髪飾りに変わっていた。
そんなアバターの服装は、胸元や腹部は水色でスカートの部分はロングの白で、その衣装はまるでファンタジー作品に出て来る女神が身に着けている様なドレスであり、突如出現したこのアバターは、ライブを観に来ていた観客達にとってはまるで天使が突然降臨した様に見えていたと思う。
そんな多くの観客達の前に姿を見せた私とリーフィの合体した姿のアバターの名前は、私が見ているモデルに表示されている名前に”YURIA”と書かれていた事から、合体後のアバターの名前はユリアだという事が分かった。
「どうして合体なんて!?」
「それは、ユアがこの町を去る前に、最後の思い出として一緒に歌を歌いたかったからです」
「リーフィ、もしかして忙しそうにしていたのは、これの為だったの?」
「はいっ、そうです!! ユアと一緒になる為のアバターと、ユアと一緒に歌う為の歌を作っていたのです。だからユア、夏の最後の思い出として一緒に歌いましょ」
「そうね、最高の思い出を作りましょ!!」
ここ数日、リーフィが忙しそうにしていたのは、私と一緒にステージ上で歌う為のアバターと歌を作っていた為だという事が分かり、そんなリーフィの気持ちを全力で受け止める為、私はリーフィと一緒に歌う事にした。
そして、ステー上に降り立った後、私とリーフィが合体した姿であるユリアは多くの観客達に今回のSPフェスのサプライズゲストである事を伝え簡単な自己紹介を行った後、私達にスポットライトが当たり曲が流れ歌い始めた。
そんな私とリーフィの異色のデュエットは夏の終わりを告げる様な盛大なバラードの歌であり、先程までざわついていた観客達も歌に合わせてペンライトをゆっくりと左右に動かし、会場内は一瞬にして一体化した。
私はリーフィが作った歌を初めて聴く為に直接歌う事は出来ないものの、リーフィが私の声も出せる様に設定をしているおかげで、本当に私とリーフィが2人で一緒に歌っている様な感じであった。
私の目の前からは観客達が動かす無数のペンライトの光しか見えないが、きっと火花さん達スピアーズのメンバー達や早川さんや菫さん、そして私の友達やシズクもきっと今、この歌を聞いているはず。
初めて訪れる場所から見る景色、今までに経験した事のない日々を過ごしたこの夏を振り返りながら、この夏の締め括りとなるSPフェスのステージ上という多くの人達の目の前で、私はリーフィと心を1つにして一緒に歌を歌った。
そんな感じで、私とリーフィの合体した姿のユリアというアバターがサプライズゲストで登場をしたのと同時にSPフェスの大トリを飾った後、この夏の締め括りとなるSPフェスは終わったのであった。
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