TrickStar

@roi-ghost

 一つの銃声が鳴った。

 銃声。と言っても映画やドラマでよくあるような火薬が破裂したような音ではない。銃の先端にはサイレンサーが取り付けられており、ボスっと言う鈍い音がした程度だった。


 非日常的な光景を間近で見て、混乱している最中であっても、頭の片隅には妙に冷静な自分がいて、「サイレンサーが付いていても、結構音がするんだな」などと場違いな考えが頭を過ぎる。


 次いで、右隣に立つ紫門さいもんさんの方に視線を動かす。彼の脇腹からは鮮血が溢れ出し、パリッと仕立てられたベストを赤く染めている。彼は左手で傷口を触った後、真っ赤に染め上がった掌を見て唖然とした表情を浮かべ、ガクッと膝から崩れ落ちた。


 目の前に視線を戻すと銃を持った大柄な男が立っており、その奥では小柄ながら筋骨隆々の男が、逃げ出した所沢を羽交い締めにして拘束していた。

 

 突然の出来事で脳の処理が追いついていなかった。条件反射的に両腕を上げ、掌を男の方へと向ける。


 一体なんで、こんなことになったんだ——!? 僕は今までの出来事を振り返る。


 どこからが始まりなのかは定かでは無かったが、明確な変化が起きた日のことはハッキリと覚えてる。


 あれは、四日前の出来事だった——。

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